IRIDeS NEWs | 東北大学 災害科学国際研究所 IRIDeS

2016.8.18

IRIDeS研究者、河北新報社を訪問 -「新聞ができるまで」を見学― (その4)

 

7.河北新報と防災、東日本大震災

 

河北写真10 免震層にて河北新報印刷センターは2003年に竣工しましたが、あらかじめ免震装置を備えて建設されました。東日本大震災の際も、「机から紙切れ一つ落ちなかった」とのことです。

 

免震装置設置にはコストの問題も当然あり、社内でも議論があったとのことですが、周期的に発生する宮城県沖地震に備え、「とにかく新聞は何が何でも発行する」との決意のもと、導入を決めました。日本で最初に免震装置を導入した静岡新聞に続き、2番目の導入でした。

 

若生常務によると、東日本大震災でその効果が実証され、特に震災後、ほかの新聞社から多くの見学者が訪れるようになったということです。

 

 

 

 

 

河北写真11 免震層にて東日本大震災の際、泉区の印刷センターは無傷でしたが、本社ではコンピューターシステムが大きなダメージを受け、河北新報社は大ピンチとなりました。

 

いざという時助け合う協定を結んでいた東北の他の地方紙も全滅でしたが、新潟日報の支援を受けることができました。

 

あらかじめ訓練をし、体制もできていたことから、新潟日報まで車で移動して紙面を組み、午前0時すぎに紙面を完成。衛星回線でデータを印刷センターに送り、無事印刷することができたそうです。津波被害で新聞用紙が供給できなくなった分は、九州など遠方から都合してもらいました。

 

社員の努力、各所の協力で、被災地の真ん中で、一日も欠かさず新聞を発行することができたということです。

 

 

それまで47万部であった発行部数は、震災により4万7千部も減りました。その後5年数か月かけて、失った分の約半分は取り戻せたが、なかなか全部は難しいとのことです。

 

ただし、河北新報入社志望者は、震災以降、一貫して増え続けており、「人に何か伝える仕事をしたい」「震災報道をしたい」という志望動機が多いそうです。

 

 

河北新報社では、毎年一回、有事の訓練を続けており、いざというときは、本社から印刷センターに駆けつけ、センターで紙面製作できるような体制を整えているそうです。

 

 

8.おわりに:見学を終えて

 

河北新報本社編集会議、印刷センターと、2か所をじっくりと見学し、詳しい解説をいただきました。

 

研究所広報担当として、スピード感と、読者(情報の受け手)との距離の近さの2点が、研究者と違う特徴として、特に印象に残りました。

 

 

前述のとおり、論文は時には出版まで何年もかかる上、学会発表や論文に一般の方が接することは、まずありません。論文は公のもので、図書館で読めますし、昨今、インターネットで無料公開されるものも多いのですが、読みやすいものではなく、一般の方々とはやはり距離があるようです。

 

 

見学会の質疑応答では、研究者側から、「東北大は、取材側からどう見えるか」という質問がされました。

 

それに対し、新聞社側から、「昔は敷居が高いイメージで、情報も少なく、アプローチしにくかったが、今はHPで研究活動についての情報が簡単に入手できるようになりました。以前は、東北大が地元の報道機関と連携しよう、地域のためになどという動きは希薄でしたが、だんだん変わってきて、特に東日本大震災を経て大きく変わったと思います」とのことでした。

 

 

研究者サイドより、「学者は、相手がわからないと相手のせいにできてしまう。従来、わかりやすく話す必要があるという教育もされなかったし、難しく話すのが高尚であるような雰囲気もあった」との反省もありました。

 

震災を機に、特に災害・防災分野では、研究成果の社会発信を強化しようという機運が生まれました。あれから5年。社会発信に対する考えは、研究者の間でも個人差はありますが、メディアを理解し、よりよい社会発信を行っていこうという問題意識が、今回の新聞社見学会につながりました。

 

 

今回、見学会に参加した研究者からは、「非常に勉強になった」「新聞の読み方が変わった」「印刷の機械化に驚きを禁じえなかった」などの感想が寄せられました。

 

筆者も、新聞の成り立ちを理解することができ、読者を中心に据え、限界まで良い紙面を作ろうとする新聞社の方々への敬意を持つようになりました。

 

 

研究者としては、今後も時間をかけて研究を行い、正確さを期して知の生産を行い、社会的信用を築いていかねばなりません。

 

しかしもし今度、広報室に「本日○時までに○○についての見解を」、と至急の依頼があった時は、「きっと締め切りに向け、ギリギリの攻防を続けておられるのだろう」と、想像をめぐらせることはできそうです。(了)

 

 

(その1) (その2) (その3) へ戻る

 


 

【お問い合わせ】IRIDeS広報室 電話 022-752-2049、Eメール koho-office*irides.tohoku.ac.jp (*を@で置き換えてください)