IRIDeS NEWs | 東北大学 災害科学国際研究所 IRIDeS

2017.5.8

ラジオパーソナリティ・板橋恵子さんと研究者との意見交換

 

メディアから見た研究者: 東日本大震災の前と後

 

板橋:震災を契機に、研究者は大きく変わったと思います。震災前は、研究成果の中でも、一般の人にわかりやすい部分を選んで発信する傾向があったように思います。

 

しかし、震災後は、「自分たちの研究は、本当に人々の役に立っていたのか?」という大いなる反省から、かなり実践的なものが加わってきたと思っています。まさに、「実践的防災学」ですね。研究者の皆さんが、内向きではなく、「人々にわかりやすく、確実に伝える」姿勢に変わってきたと感じています。

 

 

 

メディアについてここが疑問:研究者からの率直な声

 

 

森口周二准教授

森口:私は土砂災害の専門ですが、いつも土砂災害が起きた後に、メディアから大至急で取材依頼をいただきます。そして土砂災害のシーズンが終わると、取材依頼はパタッと来なくなります。そしてまた災害が起きると、同じことが起きる。その繰り返しです。

 

また、すでにメディアに話したことのある同じ内容を、取材のたびに何度も話さねばなりません。正直、メディアにとって、研究者の肩書きと名前だけが必要なのでは、と疑問に思うこともあります。

 

佐藤:言ったことがまだ社会に浸透していないから、同じことを何度も聞かれ、何度も言うのは仕方ないと割り切らざるを得ないのかもしれません。

 

 

災害記憶の風化が問題

 

 

佐藤大介准教授

板橋:今の大きな問題は、災害記憶の風化です。防災に一生懸命取り組んだところも、担当者が変わるとそこまで、ということがあります。

 

子供たちの非常食作りに熱心に取り組んでいたある中学校も、主導していた校長先生が退任された後は、全く行われなくなりました。それまで積み上げてきたものが引き継がれないのです。こうしたことが、災害の記憶の風化につながるのだと思います。

 

佐藤:記憶の風化は歴史的にもよくあることです。天明年間、1780年代の東北地方では大きな飢饉がありましたが、その経験を忘れて十分に備えをせず、1833年の天保飢饉でまた大きな犠牲を出してしまいました。飢饉の記録自体は残っているので、「完全に忘れる」というのではないのですが。

 

森口:土砂災害についても同じです。土地の所有者が変わると、災害情報が引き継がれないことがよくあります。

 

 

防災研究者とメディアのよりよい関係に向けて

 

板橋:普段から、研究所とメディア間の連携がとれていて信頼関係があれば、研究者の側から「こんなことを発信したい」と提案していただき、報道することも可能です。いざ、災害が起こったときも、適任の研究者にすぐにご連絡をとり、ご出演いただいて、迅速な発信ができると思います。

 

たとえば森口先生には、土砂災害のシーズンとなる梅雨入り前の時期に番組にご出演いただいて土砂災害の啓発をしていただく、佐藤先生には、歴史的な観点から、コミュニティづくりについて発信していただくなどはどうでしょうか。

 

 

<懇話会を終えて>

 

防災に関する理解が得られない中、長年、地道な取り組みを続けてこられた板橋さんに、ただ頭が下がる思いでした。ラジオ番組で、硬い防災のイメージをやわらかくして、音楽とともに気軽に聴いていただく工夫は、広報室としても大いに参考になりました。普段からのメディアと研究者の信頼関係が災害発生時に役立つこと、また、研究所側からの主体的な発信が可能だとわかったことも収穫でした。

 

災害記憶の継承は、まだ誰も解決していない大問題です。学術とメディアで協力して取り組んでいきたいと思います。

 

(IRIDeS広報室 中鉢奈津子)

 

 

(懇話会実施:2015年12月24日)

 

 


 

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