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2017.6.16

津波と藻場被害の関係を科学的に明らかに

山下助教・アナワット准教授

「藻場」(もば)とは、浅い海域で海草・海藻が生息する場所のことです。たとえば海草のアマモは水を浄化し、稚魚の成育を助けます。ワカメやコンブなどの海藻は日本の食生活に欠かせず、アワビやウニの餌になるものもあります。さまざまな海の生物を育む藻場は、海面下にあるため日常生活で目にすることはありませんが、生態系・水産業・経済などの点で、人間にとって極めて重要な存在です。

 

東日本大震災の津波により、東北沿岸部の藻場は打撃を受け、例えば宮城県南三陸町志津川湾のアマモはほとんどが失われてしまいました。しかし、津波が藻場に被害を与える「科学的メカニズム」については、これまでほとんど解明が進んでいませんでした。

 

 

そこでIRIDeSの山下啓助教(津波工学)らは、津波と藻場被害の関係を明らかにする研究に着手しました。以前から津波土砂移動に関する研究に取り組んでいた経験を生かし、まず、津波による土砂移動や流速と藻場の被害にはおそらく関係があるだろうと推論し、「津波により土砂地盤が削られ、砂場が巻き上げられることで、アマモが根こそぎ失われる」、「強い流れによりワカメが岩場から引きちぎられる」、「流れた土砂が岩場に降り積もってワカメに被害を与える」などの具体的な状況をそれぞれ想定しました。さらに、志津川湾を対象に、藻場の被害実態と、津波土砂移動シミュレーションで推測できる被害状況が一致するかどうか調べたところ、例えば砂場が侵食された場所はアマモの被害場所と重なるなど、津波の土砂移動・流速と藻場被害に関係性があることを確認できました。

 

その後、山下助教はIRIDeSのサッパシー・アナワット准教授(津波工学)らと協力してテーマをさらに深め、「津波がどのくらい藻場を侵食したら、どのくらいの藻場被害を出すか」という、津波の力と藻場の被害程度の関係を量的に解明する研究に取り組むことにしました。今度は石巻市万石浦を対象に、まずは津波の流速と藻場被害の関連性を調べ、成果を論文として発表したところです(土木学会論文集B2, 73-2, 2017)。例えば、津波流速が秒速1mの場合、アマモの約半分が被害を受けること、秒速3mまで流速が上がると、アマモの9割が失われることがわかりました。今後さらに、土砂移動も加味した研究に発展させていく予定です。

 

これまで、藻場を生態学の分野で研究したり、台風が藻場にダメージを与えるメカニズムを明らかにするものはありましたが、津波と藻場被害の関係性を解明しようという研究はありませんでした。「津波が藻場を破壊する科学的メカニズムが詳細に解明できれば、津波によって被害を受けにくい藻場がどこかも、わかるようになると期待されます。今後の藻場被害を防ぐための知見を提供し、沿岸地域の生業を守りたいと願っています。」ゆくゆくは、南海トラフ地震津波被害想定域まで研究対象を広げたいと、山下助教は話します。

 

 

アマモ

ワカメ

上の写真2枚 出典:宮城県公式WEBサイト 水産技術総合センター

 

 

 

 

山下助教が取り組んでいた津波土砂移動シミュレーション研究

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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