歴史資料保存研究分野

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准教授: 佐藤 大介 助教: 天野 真志    

日本の地域社会には、古文書、古美術品、かつての生活の道具など人々の過去の営みを伝える歴史資料が豊富に残されている。これらを災害から守り、社会の文化的資源として共有し、将来へ継承するための調査・保全技法や組織論、制度論について、地域での実践を通じて考察する。

各地の歴史資料は、人々が固有の環境の中で積み重ねてきた「ふるさとの歴史」の証である。また、16世紀から19世紀に作成された文書記録の量と多様な内容は、他の国や地域では類例を見ない。これらは日本で起きた過去の災害情報を提供する貴重な情報資源であり、さらには日本一国を超え同時代の人類の歩みを解明するための文化遺産である。

一方、これら歴史資料の多くは、現状では保存と継承の責任は個人の所蔵者や、所蔵者を支える共同体のつながりにゆだねられている。しかし、価値観の変化に伴う歴史資料への関心の低下や、共同体の衰退により、歴史資料の散逸が急速に進行している。そのことに拍車をかけるのが、地震や津波、風水害などの災害である。土蔵などの保管場所が被災すると、その片付けと同時に歴史資料が急速かつ大量に処分されるのである。「災害列島」日本においては、歴史資料の持つ固有の価値を認識した上で、それらを災害から守るためのしくみを絶えず研究し、社会に還元していくことが不可欠である。

本分野の研究活動は、2003年7月に発生した宮城県北部での連続直下型地震に際して実施した被災地での歴史資料保全活動にその原点がある。多くの歴史資料を救済する一方、救済が間に合わずに消滅したものも多かった。歴史資料の所在を災害が起こる「前」に把握し記録化すること、それを行政や市民との連携で進めることを基本に据え、2004年以降継続して活動してきたのである。2008年の岩手・宮城内陸地震被災地での活動も含め、これまでの活動から歴史資料の保全と記録方法の体系化を進めてきた。

2011年3月11日の東日本大震災では、被災地の無数の歴史資料が被災し、津波で多くの歴史資料が一瞬で失われた。その悲しみの一方、歴史資料の記録化や災害「前」につちかってきた地域社会との関係など、これまでの活動の「成果」も確認された。さらに震災後は保存修復学、保存修復科学、建築学、情報学などの隣接諸分野、市民ボランティアとの連携など、実践を通じて今後の歴史資料防災に資する経験を積み重ねている。被災地の大学として、これらの体系化と理論化を行い、国内外への発信し、具体的な社会制度作りに関わることで、人類の記憶と記録の保存と継承に貢献する。