IRIDeS Newsletter | 東北大学 災害科学国際研究所 IRIDeS

2017.1.6

2017年 新年ご挨拶(今村文彦 所長)

  明けましておめでとうございます。   IRIDeSは今年、設立5年目の大きな節目を迎えます。2012年4月の発足以来、IRIDeSは国内外の関係機関と連携しつつ、被災地を支援する学際的研究や実践を行ってまいりました。気仙沼にはサテライトオフィスを設置し、すでに16回にわたる防災文化講演会を地元で継続的に実施するなど、復興支援や防災に強いまちづくりを支援してきました。   IRIDeSはまた、ローカルとグローバルをつなぐ活動にも力を入れてきました。2015年3月の第3回国連防災世界会議においては、「仙台防災枠組」の策定に全面的に協力し、学の立場から提案を行うことができました。本年11月には、国内外から産・官・学・民の防災関係者が集まり、仙台防災枠組を基盤として世界の防災を考える「第一回 世界防災フォーラム/防災ダボス会議@仙台」(仮称)を開催予定であり、IRIDeSは実行委員会の一翼を担いつつ、東北・仙台を世界の防災の先進地にすることを目指しています。   この5年、IRIDeSの教職員は、災害時の緊急対応や、平時の防災啓発・人材...

2016.12.28

福島県沖における地震・津波の1か月後報告会開催

  11月22日に福島県沖を震源とする地震・津波が発生して以来、IRIDeSの研究者は調査・解析を続け、1か月後の12月22日、これまでの成果を発表する報告会を開催しました。     ■今村文彦所長は、この津波の発生と伝播の特徴をまとめ、特に仙台湾で津波が増幅したメカニズムを、津波数値解析(シミュレーション)結果に基づき説明しました。断層の向きを示す走向を90度や180度に変えてシミュレーションを行うと今回の波高分布を再現することは難しいこと、また今回は局所的に津波が高くなった地域があり、解析の空間格子を500mメッシュよりもさらに詳細にすべきではないかと提言しました。     ■サッパシー・アナワット准教授らは、潮位観測記録がない地域で現地における津波調査・被害調査を行った結果、大浜海水浴場(宮城県東松島市)では津波は推定潮位(T.P.+0.3m)から4.0mに達していたことなどを報告しました。過去の津波外力と被害の関係に、今回の津波被害はおおむね一致していましたが、今後は、更なる被害予測の向上が課題であると述べまし...

2016.12.27

防災進捗状況をはかる「指標」について説明(第3回 仙台防災枠組講座を開催)

12月10日、IRIDeSと仙台市は「ともに考える防災の未来―私たちの仙台防災枠組講座シリーズ」第3回をIRIDeS棟にて開催し、IRIDeSの小野裕一教授が、仙台防災枠組をめぐる最新の国際状況を、参加した市民の方々に向けて説明しました。   2015年3月、仙台市にて第3回国連防災世界会議が開催され、成果として今後15年間の世界の防災指針となる「仙台防災枠組」が策定されました。この枠組には、「2030年までに、災害による死者数・損害額を大幅に削減することを目指す」など、7つの重要な目標が設定されています。しかし、これらの目標が各国でどれだけ達成されたかを、どうモニターし、測定していくかに関する具体的な「指標」については、交渉が時間切れとなったため、国連防災世界会議の期間内に決められず、仙台防災枠組の「宿題」として残されていました。   その「宿題」の決着をつけるため、その後各国は政府間会合を重ね、東北大学も日本政府代表団の一員として参加しましたが、先11月18日、ついに交渉が終結し、仙台防災枠組の実施進捗状況をモニターするための指標と関連する用語がまと...

2016.12.20

学術・メディアが防災連携について議論

「災害記憶の継承」「災害時、自らの判断で行動できる市民の育成」など、防災に関する課題について、学術とメディアの連携を探る討論会が、10月20日、気仙沼市の「海の市」で開かれました。この討論会は、「みやぎ防災・減災円卓会議」の学術―メディア連携分科会が企画した「気仙沼合宿」の一環として行われたもので、IRIDeS研究者、気仙沼分室職員や全国の地方新聞と放送局の記者ら計30名が集まりました。   席上、河北新報の武田真一防災・教育室長は「平時からの防災への備えが、災害時に生きる。メディアも学術も防災情報は豊富に提供しているが、市民と一緒に考えていく必要がある」と述べました。IRIDeSの小野裕一教授は、「防災を文化として浸透させるために、学術とメディアが連携する意義がある」とコメントしました。川島秀一教授は、「災害時に生きるのは身体的記憶である」と指摘し、集団的・身体的記憶を形成する地域の祭事が、災害記憶の継承の役割を果たしている事例を紹介しました。また、安倍祥助手は、住民が平時に抱く災害のイメージを、学術とメディアの連携で広げられるのではと話しました。久利美和講師は、普遍的...

2016.12.9

地域住民と共に取り組む津波避難計画(杉安和也助教)

社会工学(都市計画)を専門とする杉安助教は、福島県いわき市などで、地域住民の方々や他のIRIDeS研究者・防災関係者と協働し、特に津波避難の観点から地域防災計画づくりに取り組んでいます。避難訓練を実施する際に、津波ハザードマップを用い、電気自動車や避難者の時間ごとの動きを科学的データとして記録できる「GPSロガー」などの最新技術を取り入れながら、実際に住民の方々と計画の有効性を検証し、避難所や避難経路の設定、誘導の仕組みなどについて改善策を提言しています。   東日本大震災発災前は、津波からの車による避難は公的に認められていませんでした。しかし震災を経て、自治体の中には「原則は徒歩避難であるが、車による避難も検討」とのスタンスへ方向転換したところもあります。避難場所の再検討も行われるようになりました。杉安助教らは、これらの変化も地域防災計画に取り入れています。   津波ハザードマップは、都市計画の手法を用い、避難計画・避難所・浸水範囲等の情報を結集して「見える化」したものと言えます。東日本大震災を契機に、それまで全国で整備が立ち遅れていた津波ハザードマッ...

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