IRIDeS NEWs | 東北大学 災害科学国際研究所 IRIDeS

2020.8.27

【研究紹介】堆積物のきめ細やかな分析により、過去に北海道東部へ襲来した津波の年代をより正確に測定する

  災害理学研究部門 活断層研究分野 石澤 尭史 助教 ▷はじめに  日本列島は、海溝型地震とその地震が引き起こす津波に、過去に何度も襲われてきました。それらの自然災害には、ある程度の周期性があったことが明らかになっています。実際の海溝型地震発生のメカニズムは複雑で、地震・津波の発生間隔は、あくまで目安として算出されるものですが、「自然災害は繰り返し発生する」という大前提のもと、現在の地震・津波リスクを知り、将来に備えるには、まず過去から学ぶことが極めて重要です。  IRIDeSの石澤尭史助教は、特に地層に着目し、地質学・年代学の手法を用い、過去の津波の襲来年代をなるべく正確に測定する研究に取り組んできました。研究対象の一つは、千島海溝沿いで発生した津波の痕跡です。  過去に千島海溝沿いで発生した地震・津波の実態は、それら災害に関する記述を含む古文書が見つかっておらず、長らく謎につつまれてきました。しかし、21世紀に入ってから多くの地質調査が行われ、千島海溝沿いで過去に何度も津波が発生していたことが証明されました。また、北...

2020.5.28

【研究紹介】世界各国は、防災をどう捉えているか?-2018年アジア防災閣僚級会議における声明からの分析-

  情報管理・社会連携部門 社会連携オフィス 佐々木 大輔 助教 ▷はじめに  世界の平和と協力を目指し、国際連合(国連)が誕生して75年。国連は、毎年本部のあるニューヨークで総会を開催するほか、必要に応じて別途、具体的な地球規模課題の解決に向けて会議を開いてきました。会議の場で各国の利害を調整し、出席した全加盟国が賛成すれば決議文(成果文書)が採択されます。その後、その決議文は各国が足並みを揃えて将来へ向かうための国際的指針となります。例えば世界の開発・発展に関する「持続可能な開発目標(SDGs)」、温室効果ガス削減と気候変動への適応に関する「パリ協定」、そして災害リスクを減らすための「仙台防災枠組2015-2030」は、そのような国連会議の場で採択されてきた決議文です。上記の3つはいずれも防災に深くかかわることから、専門家が「3大防災グローバルアジェンダ」と呼び、3つを緊密に連関させて進めていくべきであると論じることもあります。  仙台防災枠組は、2015年に仙台で開催された第3回国連防災世界会議における成果文書で、その特色として、防...

2020.3.6

広報室コラム:「頑張れ」ということ

 2020年、愈々、オリンピックイヤーの年となりました。昨年の感動のラグビーワールドカップに続き、この夏には、日本中そこかしこで「がんばれ~!」の大声援が巻き起こることと思います。    私はこの「がんばれ」という言葉が嫌いです。昔、大学受験で浪人していた頃、大学にいち早く入学した元同級生達から「がんばれよ~~勉強しろよ~~」と言われるたびに、(自分達は大学で青春を謳歌して遊び歩いているくせに、よくいうよ!)と、妬み半分、羨み半分に、すごく嫌な気持ちになったものです。その気持ちを数十年たった今も、いまだに引きずっているのか、なかなかこの言葉、自分では口にできません。そういえば、現在進行中の働き方改革、安易に職員に「がんばれよ」と声をかけるのはパワハラの恐れありとして禁忌になりつつあるようで、ほんと、世の中、変わりつつあるようです。    こう考えると、相手を思いやる、あるいは励ます言葉というのは、本当に難しいと感じます。昨年も台風19号をはじめ、災害の多い年でしたが、被災された地域に向けて、レポーターの「お体に気を付けて頑張ってください」というようなコメ...

2020.2.21

「南海トラフ地震臨時情報」を社会の防災に生かす学際プロジェクト始動
-IRIDeSの実践的防災学の確立を目指して-

はじめに  2019年1月、IRIDeSにおいて「南海トラフ地震の事前情報発表時における組織の対応計画作成支援パッケージの開発」と題するプロジェクト(以下「南海トラフ地震臨時情報プロジェクト」)がスタートしました。このプロジェクトは、「南海トラフ地震臨時情報」が発出された時、自治体や企業等、社会の鍵となる組織(以下「キー組織」)の対応を支援し、災害軽減につなげることを目的としています。セコム科学技術振興財団の助成を受け、理学・工学・社会科学・医学等を専門とするIRIDeS専任・兼任研究者ら13名が中心となって協働で進めています。 「南海トラフ地震臨時情報」とは1)  南海トラフ地震は、駿河湾から日向灘沖にかけてのプレート境界を震源域とするM8クラス以上の地震の総称です。過去には、約100年~150年間隔で繰り返し発生してきました。次の南海トラフ地震の30年以内の発生確率は70%~80%と評価されており、もし発生すれば広範囲に甚大な地震・津波被害をもたらしかねず、「国難」とも形容されています。  現在の科学では、確度の高い地震予測はできません。しかし過去の南海トラフ地震では、例え...

2020.1.10

災害統計グローバルセンター:
仙台防災枠組のグローバルターゲットを達成する「強力なエンジン」

パイロット国・UNDP・富士通等企業関係者と災害統計について会合(2019年11月、IRIDeS棟にて)はじめに  2015年3月、仙台にて第3回国連防災世界会議が開催され、世界の防災指針「仙台防災枠組2015-2030」が採択されました。この仙台防災枠組には、中心的な目標として「2030年までに、世界の災害死者数を大幅に減少する」「災害による直接的経済損失を減少する」等、7つの「グローバルターゲット」が設定されました。  この国連会議を受け、2015年4月、IRIDeS内に「災害統計グローバルセンター」が設立されました。このセンターは、東北大学・国連開発計画(UNDP)・富士通株式会社(富士通)の3者が牽引するもので、上記の仙台防災枠組の中心目標を達成するために必要不可欠となる存在です。災害統計グローバルセンターは具体的に何を目指し、どのような特徴を持ち、設置以来どのような活動を行ってきたのでしょうか。 目指すもの  このセンターは、「各国政府から災害統計を収集・保存し、連携機関とも共同して分析を加え、その結果を各国政府に還元し、各国の防災政策立案に役立てるこ...

TOPへ