IRIDeS NEWs | 東北大学 災害科学国際研究所 IRIDeS

2016.7.19

IRIDeSが防災専門家と市民の対話フォーラムを共催(vol.29)

対話フォーラム7月17日、対話フォーラム「心豊かに生きたい~災害とあなたの残したい未来社会」が、東北大学萩ホールで開催されました。これは、JST科学コミュニケーションセンター主催、IRIDeSほかが共催した、「学都」仙台・宮城サイエンス・デイ2016特別企画です。

 

東日本大震災から5年が経過し、当時の思いが変化し、薄れつつあるのではないかという問題意識のもと、もう一度、当時の思いを共有し、未来へつなげようという目的で行われました。

 

まず、震災以降、防災に深くかかわってきた3名の専門家・実践家が登壇し、それぞれの取り組みを発表しました。

 

奥村誠・IRIDeS副所長は、IRIDeSが東日本大震災を契機として設立され、低頻度巨大災害の理解のために災害を幅広い時空間に位置づけていること、人間の備え如何で被害と復興の程度が変わってくるため、文理連携・多分野で取り組んでいることを述べました。

 

 

金田 諦應・曹洞宗通大寺住職は、東日本大震災の後、被災地で傾聴移動喫茶カフェ・デ・モンクを運営しつつ、被災者の心に寄り添ってきた経験を語りました。がれきの中に、安心して泣ける場を作ったところ、最初は凍り付いていた被災者の方々の時間が、次第に、未来へ向かって動き出すようになった様子を話しました。

 

石田 秀輝・東北大学名誉教授は沖永良部島で実践を重ねてきた経験をまじえ、日本で物質的欲求が減退し、多くの人が将来に不安を抱いている現状を指摘しつつ、利便性を追求し商品に依存する生活から、多少の不自由を受け入れ、自らの力で工夫して生きるライフスタイルへの転換を薦めました。

 

続いて、多賀城高校災害科学科の高校生6名が加わり、震災当時の経験から、人を助ける仕事につきたいと思ったことなど、自らの思いを一人ずつ発表しました。

 

エフエム仙台 防災・減災プロデューサーの板橋 恵子氏がコーディネーターとなり、前述の専門家・実践家、多賀城高校生、会場の参加者が意見交換を行いました。

 

会場の参加者に尋ねたところ、東日本大震災の際に抱いた思いが、5年後の今も持続している方は減少していました。

 

それに対し、石田名誉教授は、災害後、行動は比較的すぐに元に戻るが、心については、今、ようやく変化しはじめているのではと述べました。奥村副所長は、これまでの科学が、自然の中から簡単にわかる範囲だけを切り取って考えてきたことの限界を指摘し、今後はより総合的な視野で考えていく必要性を述べました。高校生は、防潮堤の是非についても各自、意見を述べましたが、金田住職は、その議論を受け、日本社会にもともとある自己再生能力、自然と会話する力の重要性について言及しました。

 

締めくくりに、多賀城高校生が、今日のフォーラムを受け、防災を生活の中に取り込みたい、災害を経験した立場だからこそ後世に伝えたいと意気込みを語り、それに呼応して、奥村副所長が、災害は人を育てるというプラスの側面もあることを指摘し、高校生を励ましました。金田住職は、生徒に、大きなスケールで物事を捉え、多くの経験を生かして、東北の外へも自信をもって発信するよう激励し、石田名誉教授は、自然との関係を捉えなおし、東北の地域に根差して自立型ライフスタイルを目指すよう、エールを送りました。

 

その後、震災後数多くのチャリティーコンサートを行ってきた仙台フィルのメンバーによるミニコンサートが行われました。

 

東日本大震災は日本社会を大きく揺るがしましたが、専門家・科学者のあり方についても問い直すこととなりました。

 

IRIDeSは今年度より、科学を市民の対話を通じて再構築し、研究を社会によりよく還元するための新たな方法を考えるプロジェクトに参加します。今回の対話フォーラムはそのキックオフイベントで、子どもから大人まで約150名の出席がありました。

 

プロジェクトの進捗状況については、IRIDeS NEWsで随時お知らせします。

 

 

対話フォーラムの映像はこちら(YouTube 8分45秒)

 

 

 


 

【お問い合わせ】IRIDeS広報室 電話 022-752-2049、Eメール koho-office*irides.tohoku.ac.jp (*を@で置き換えてください)

 

 

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