IRIDeS NEWs | 東北大学 災害科学国際研究所 IRIDeS

2016.8.9

市民がIRIDeS研究者とともに「仙台防災枠組」を学ぶ講座がスタート (vol.32 その1)

DSC_0194 仙台防災枠組 交渉会場

2015年3月、仙台市で国連防災世界会議が開催されました。

 

本体会議には185か国が参加、国連事務総長や各国首脳を含む6500名以上が出席し、最終日には「仙台防災枠組」が採択され、大成功となりました。

 

東日本大震災の教訓を世界につなぐ重要会議の成果文書に、仙台の名が冠されて以降、“Sendai”は、防災を語るとき、なくてはならない言葉として、国際的な認知度も上昇しています。

 

 

「仙台防災枠組」は、今後15年間の各国の防災の指針となるものですが、その中で、「市民、地域の人々が協力して防災・減災に取り組むのが大事である」と指摘しています。

 

しかし、一般の方々にとっては、この枠組がいったい何なのか、誰が何を行おうとしているのか、十分理解されているとは言えないようです。

 

そのような状況を受けて、仙台市とIRIDeSは共催で、「ともに考える防災の未来―私たちの仙台防災枠組」講座シリーズをスタートさせることになりました。

 

8月7日(日)、IRIDeSの今村文彦所長、泉貴子特任准教授が講師となり、「市民のための仙台防災枠組を学ぶ」をテーマに、第1回講座が東西地下鉄・国際センター駅「青葉の風テラス」にて開催されました。

 

今回のIRIDeS NEWsは、IRIDeS広報担当が第一回講座に参加したレポートです。

 

 

 

今村文彦所長・泉貴子特任准教授による講義

 

今村所長 今村所長

仙台市防災環境都市推進室の菊田敦室長による挨拶の後、IRIDeSの今村所長が、これまでの国連による防災への取り組みをおさらいしました。

 

1994年の横浜会議では防災へ関心を高めることが奨励されましたが、2005年の神戸会議では防災・減災行動を実際に開始させることが定まりました。更に、2015年の仙台会議では、神戸会議の方針をさらに発展させ、具体的な目標を定めた上で防災に取り組むことになりました。

 

この20年あまりを振り返ると、国際社会における防災への意識、取り組みが、着実に進化してきたことがわかります。

 

さらに、今村所長は、「仙台防災枠組の最も重要な点の一つが、防災についての具体的な目標を定めたことです」と説明しました。

 

防災戦略を持った国・地域や国際協力を増やし、警報などの情報を入手しやすくすること、その一方で、人的・経済・インフラ被害などについては減少させることなどが、目標として決まったのです。

 

「ただ防災に向けて行動しましょう」ではなく、「具体的に目標を設定して活動を開始し、その達成状況もモニタリングしつつ、防災に向けて行動しましょう」、と定まったことで、防災が更に前進する土壌ができました。

 

今村所長は、「ただし、どうやってこの目標を達成するかは、山登り(登山計画)に似ています。どの山に、誰とどうやって、どのルートで登るかについては、各自で考えていかねばなりません」と述べました。

 

また、途中で、ちゃんと登っているか(=防災目標が着実に達成されているか)を、確認(モニタリング)されるのも、仙台防災枠組の特徴です。

 

 

 

泉先生 泉特任准教授

続いて泉特任准教授が、兵庫行動枠組・仙台防災枠組の違いを詳しく説明しました。

 

2005年に採択された兵庫行動枠組は高く評価されてきました。この枠組のおかげで、市民や関係機関の意識が高まり、防災への参加が促進され、実際に災害による死亡率が減少しました。

 

しかし世界には、貧困、不平等、気候変動、都市化など、災害を拡大させる、簡単に解決できない問題があり、女性・子どもや弱い立場にある人々は、未だに災害の影響をより多く被っています。

 

よって、2015年の仙台枠組では、兵庫枠組よりさらに目標を高く掲げ、災害が特に弱い立場の人々を直撃する問題に取り組むため、災害リスクを理解し、防災計画を策定し、防災へ事前投資して被害を減らすことなどを目標に定めました。

 

今回の枠組では、政府・自治体、学術・企業、コミュニティなど、あらゆる人々の参加が必須であるとされています。

 

泉特任准教授は、国連の場でそのように決めたということは、実際に、各国が、防災に真剣に取り組まねばならなくなったということです、と述べつつ、市民の方々に、一緒に連携して取り組んでいきましょうと呼びかけました。

 

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