IRIDeS NEWs | 東北大学 災害科学国際研究所 IRIDeS

2016.8.18

IRIDeS研究者、河北新報社を訪問 -「新聞ができるまで」を見学― (その1)

 

河北写真1

 

 

 

 

 「新聞ができるまで」見学会 動画 (YouTube 2分5秒)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.はじめの問題意識:研究者とメディアの相互理解の必要性

 

IRIDeS広報室には、よく、新聞社やテレビ局から、「さきほど起こった災害の○○について大至急、解説をお願いしたい」「○○についての○○先生の見解を、今日の○時までにいただきたい」といったご依頼があります。

 

 

そのような時、広報室は、該当する研究者に急いで打診し、なるべく時間内につなぐようにしています。

 

今日、研究者の間では、取材に応じ、研究について広く社会発信することは義務であるとの考え方が一般的になってきています。特にIRIDeSは、災害・防災という社会に直結する問題を扱う研究所であり、取材依頼を受けた研究者は、研究や調査の合間を縫って極力対応しています。広報担当としても、IRIDeSの研究が世に知られるのはありがたいと思ってきました。

 

 

一方で、メディアからの依頼はなぜこうも急ぎが多いのか、不思議にも思ってきました。

 

じっくり慎重にデータを集め、正確さを期し、時には何年もかけて研究を行い、耐用年数の長い論文の出版を目指す研究者とは、時間感覚が相当異なるようなのです。また、取材を受けた研究者から、せっかく協力したのに結局報道されなかった、意図したことと違う内容で報道された、とも、しばしば聞いています。

 

 

広報窓口をつとめるうちに、「学術とメディアは、お互いの存在が必要であるが、すれ違いもあるようだ」、という現場実感を持つようになっていました。

 

その思いを、みやぎ防災・減災円卓会議のメンバーである、今野俊宏・河北新報社編集局次長に率直にぶつけてみたところ、「メディアにはメディアの事情があるのです。まずは研究者とジャーナリストが、お互いの仕事を知るところから始めませんか」と提案いただきました。今野次長は、その昔、大学担当記者として、東北大研究者を数多く取材し、大学に対する理解が深いジャーナリストでもあります。

 

 

こうしたわけで、7月27日、河北新報社見学会「新聞ができるまで」を特別開催していただくはこびとなりました。今野次長および若生伸一・河北新報印刷センター常務取締役をガイド役に、IRIDeSの教職員計13名が、朝刊編集会議(河北新報本社)、および新聞印刷センター(仙台市泉区)を見学しました。

 

この見学会は、みやぎ防災・減災円卓会議の学術―メディア連携分科会活動の一環として行われました。今回のIRIDeS NEWsはこの見学会のレポートをお届けします。

 

 

 

2.新聞はどのように組みあがるか

 

河北写真2 仙台中心地図河北新報は、「東北振興」「不羈独立」を社是とした、東北地方のブロック紙で、現在の発行部数は約45万部、来年1月に創刊120年を迎えます。

 

今回は、報道部デスクや整理部が紙面をレイアウトし、どのニュースを紙面に掲載するかを決定するという、「新聞社の心臓部」である編集局で、実際に翌日朝刊の編集作業を見学しました。

 

 

河北新報の記事は、自社の記者による独自取材に加え、共同通信などの配信会社や、友好紙である他地域のブロック紙などから送られるニュースを用いて作られます。

 

「ニュースは取捨選択されます。大雑把に言うと、一日に入ってくる情報のうち、実際に紙面に使用するのは3分の1くらい」と、今野次長は説明します。

 

1回の朝刊の文字量は、新書版1冊分程度、かつ写真は70~80枚使用されるとのことです。

 

 

河北新報社では、毎日午後4時に、報道部・整理部で、自前のニュース・他社から送られたニュースを整理し、翌日の朝刊の中身を割り振り、午後5時には、責任者が一同に会し、メニューが決まります。

 

しかし、夕方時点のメニューどおりに翌日の朝刊が発行されるケースは、あまりないとのことです。なぜなら、その後、大きなニュースが飛び込んできたり、考えていた話が予想外の結果になったりすることが、しばしば起こるからです。「新聞は予定調和で作るものではないので、それこそがニュースの醍醐味」と今野次長。夜8時くらいから、徐々に編集作業が忙しくなってくるそうです。

 

 

河北写真4 編集局見学編集局フロアでは、社員が忙しく朝刊の編集作業を行っていました。紙面を組み上げ、組み上がったものを戻して点検、を繰り返し、1つの記事に、最低7、8人はかかわることになる、とのことです。

 

 

新聞記事執筆の大原則は、わかりやすく書くこと、そして何より、「逆三角形」で書くことです。これは、大事な要素を最初に詰め込み、その後で細部・背景を記述するという、新聞独特の書き方です。

 

これは、大きなニュースが飛び込んできた場合、すでにある記事の後ろから削除してスペースを作るために必要なのだそうです。新たな記事を入れるため、すでにある記事を短くすることはままあり、「記事をいじめる」という業界用語があります。

 

 

 

次ページ(その2)に続く

 

 

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