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2016.8.18

IRIDeS研究者、河北新報社を訪問 -「新聞ができるまで」を見学― (その2)

 

3.購読地域に合わせて紙面を変えつつ、制限時間でギリギリの攻防

 

河北新報は、現在、朝刊は原則「13版」「16版」の2種類作っています。13版は、青森県や秋田県など東北地方の宮城県以外へ、16版は宮城県内へ配達されます。

 

河北写真 印刷センターへデータを 印刷センターへデータが送られる

午後10時半頃、県外用の紙面が締め切られ、印刷センターへデータが送られます。

 

午後11時半前には、県外に配達される新聞が完成し、印刷センターから各販売店へ向けて順次トラックが出発します。

 

しかし宮城県内用紙面については、その後も午前0時半まで編集作業が続き、印刷が終了するのは午前2時半頃です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

河北写真 トラックが出発 新聞を載せてトラック出発(写真は夕刊配達)

地域によって締め切り時間が違う理由は、「各地の読者に朝刊が遅くとも6時までに届く」ことをすべての起点としているためです。

 

そこから逆算し、午前4時に朝刊を各地域の販売店に到着させます。さらに運送時間、印刷時間を考慮して遡ると、宮城県内用紙面の締切は午前0時半、配達により時間のかかる遠方用紙面の締切は午後10時半、となるわけです。

 

大事件や、数字が刻々と変わる場合は、特別に3版目、4版目を作ることもあります。

 

重大事件の場合、別途、輪転機を回して号外を作り、仙台駅前等で配る「輪転号外」を発行することもあります。今野次長は、就寝時であっても電話で起こされ、輪転号外を出すかどうかの判断をすることがあるそうです。

 

 

 

複数の版を出すことで、もちろん、経費・労力が余計にかかります。新聞がインターネットに押されている昨今、コストについては、どの新聞社も直面する大きな問題であるとのことです。

 

 

4.「新聞は賞味期限が非常に短い缶詰。それを時間内に読者の手元に届けることが最大の使命」

 

 

河北写真 今野次長今野次長は、新聞製作を、「賞味期限が非常に短い缶詰作り」と形容します。

 

「連載小説等を除けば、1日たつと新聞の賞味期限は切れてしまう。その前に、確実に読者のもとへ届くことが新聞の最大の使命です」

 

「どんな立派な記事を書こうが、読者に届かなければ、ただの紙切れにもならない。」

 

読者には、時間内に必ず届けるという大原則がまずあり、その上で、時間ぎりぎりまで、新しいニュースをできるだけ盛り込んでいるわけです。

 

 

 

時差のある海外ニュースや、状況が刻々と変わる大事件が起きたときは、状況の変化と共に記事の内容も入れ替え、新しい写真を入れ、ぎりぎりまで更新作業を続けます。

 

 

締め切り午前0時半の直前、例えば0時20分に大きな地震が来たら大変です。「1面か第一社会面に4段くらいの記事を新たに急いで立てなければならない。それでほかの面にも影響が出れば、そこでもスペース調整を行います。」

 

 

スポーツなど、ぜひ試合結果を載せたいわけですが、粘って結果を待っていると読者への配達が遅れてしまうので、泣く泣くあきらめることもあるそうです。TVでは翌朝報道されるのに、新聞では間に合わない場合、記録だけでなく背景についての記事を入れるなどして工夫し、付加価値をつけます。

 

 

見学会の日は、イチローが大リーグ通算3000本安打を目前にしていました。「もし今夜中に3000本安打を達成したら、明日の朝のTVニュースで流れるので、新聞読者にも知らせないといけません。ただ、試合開始後、朝刊締め切り時間までの1時間でさすがに3打席はないとういうことで、明日の朝刊の記事にはしなくて大丈夫」、など、予想をつけながら、紙面製作を進めるそうです。

 

 

東北地方は冬、大雪となることがあります。道路事情が悪いので早く配達を、と要請する販売部と協議しながら、じゃあギリギリこの辺で、と落としどころを見つけ、全速力で製作し、普段より早く完成させることもあるとのことでした。

 

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