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2017.7.14

仙台平野で新たに活断層を確認

 

活断層とは

 

岡田真介助教

活断層とは、過去に何度もずれ動き、将来もまた動くと考えられている断層のことで、内陸型地震の原因として知られています。活断層を動かす根本の力は地球のプレート運動です。日本列島付近では、陸側のプレートに海側のプレートが沈み込んでいますが、この沈み込みとともにプレート内にはひずみがたまっていきます。ひずみを解消するため、時折、プレートは、内部で割れたり、ずれたりします。プレート内が割れて形成されるのが活断層です。

 

現在、日本全国には約2000の活断層が存在することがわかっています。活断層は、一般的は千年~数万年に一度動き、地震を発生させます。1つ1つの活断層は滅多に動かないと言えますが、2000もの活断層の動きを平均すると、日本のどこかで5~10年に1回は活動し、内陸型地震を起こす計算になります。距離の長い活断層は断層面積も大きく、ため込まれるエネルギーもそれだけ大きくなるため、大きな地震につながりやすくなります。日本では、特に110ほどの活断層が、大地震を起こす可能性があり要注意とされています。日本各地で活断層の調査が進み、その様相はかなり明らかになってきました。

 

 

仙台平野の活断層

 

仙台平野にも複数の活断層があります。それらはすべて、仙台平野が乗っている陸側の「ユーラシアプレート」の下へ、海側の「太平洋プレート」が沈み込む際にひずみが溜まり、そのひずみを解消するため、ユーラシアプレートが内部で割れて形成された活断層と考えられています。

 

活断層には、過去に何度も大きくずれ動いた結果、「成長して」崖となり、明瞭にわかるものもあります。一方で、毎回の動きがわずかで、ずれ動いた後に侵食作用で削られるなどして、地表の痕跡が少なく、専門家でもすぐに判断がつかないものもあります。仙台平野の平野部と丘陵部の境目に、「長町―利府線断層」と呼ばれる、日本有数の明瞭な活断層があります。伊達政宗の居城・仙台城が建てられ、今日IRIDeS棟含む東北大青葉山キャンパスが作られている青葉山は、この長町―利府線断層などの運動によって作られたものです。青葉山は、20万年以上の歳月をかけ、活断層が海抜百数十~200mの高さまで地表を「かまぼこ状」に押し上げられる形でできました。

 

長町―利府線断層の最新活動は、1万6千年前より後にあったと考えられていますが、データに乏しく、また歴史資料にも長町―利府断層と関連づけられる大地震の記録は見つかっていません。「もししばらく活動していないなら、そろそろ動いてもおかしくない」ことになりますが、長町―利府線断層が動けばM7.0~7.5の地震を起こす可能性があること、この断層が仙台市の人口密集地の真下にあり、大きな地震被害が予想されることから、注意が呼びかけられています。

 

仙台平野には、この長町―利府線断層のような明瞭なものだけでなく、地中に潜ってわかりにくい活断層(伏在活断層)もあります。長町―利府線断層の南東側にある沖積平野に8 km以上にわたって伏在する「苦竹断層」はその一つですが、このたびIRIDeSの岡田真介助教(災害理学)ら研究チームは、さらに、これまで知られていなかった別の伏在活断層の解明に新たに取り組みました。

 

 

IRIDeSの岡田助教ら、仙台平野南部で新たに活断層を確認

 

仙台平野南部の名取市愛島(めでしま)には2.5 kmほどの崖をともなう丘陵地帯があります。以前より、「これは活断層の一部が崖として露出しているのではないか」という推測はありましたが、その科学的証拠はありませんでした。本物の活断層であれば、全長わずか2.5 kmのみということはまずなく、残りは地下に隠されていることになります。

 

岡田助教らは、「これは本当に活断層なのか?もしそうなら、この活断層の残りは、どのように続いているのか?」という命題に取り組みました。地表に表れた痕跡だけでは判別がつかない場合、研究者はさまざまな方法を用いて地下の様子を探ります。

 

岡田助教らは、まず「ジオフォン」という小型センサーを設置し、調査各点で音波を地下に送り、それがどう跳ね返ってくるかをみながら、地下の地質構造を調査しました(これは、エコーによる人の体内検査と同じ原理で、「反射法地震探査」と呼ばれます)。仙台平野を東西にスライスする方向で少しずつ移動しながら、根気よく地下の状況を探っていったところ、愛島の2.5 kmの崖だけでなく、かなり南下したところまで、地下の地質が活断層によって変形を受けていることがわかりました。最初は水平であった地層を上に押し上げる動きが何度も過去に繰り返し起こっていた、つまりここに活断層があると考えられます。

 

ダブルチェックするため、地球の内部構造による重力の微妙な差を利用して地下の密度構造を探る「重力探査」という別の方法でも地下の様子を確かめたところ、2種類の調査結果はそれぞれ矛盾せず、この地域にやはり活断層があるとの結論が出ました。さらには、この活断層が、北は愛島丘陵北東部付近で消失していることも判明しました。岡田助教らは、これらの結果を学会・論文で発表しました(日本活断層学会2014年度秋季学術大会、「地震 第2輯 70」2017)。(【図1】、【図2】)

 

今回の研究は、仙台平野の地下に存在する活断層を確認し、その位置や様相を明らかにすることが目的であり、この活断層が最後に活動した時期を調べるものではありません。この新たに確認された活断層と今後の地震の関係が気になるところですが、「この活断層付近の地質構造をみると、地層のずれは大きくありません。また、地上に明瞭な地形として表れていないことからも、この活断層の活動度は低く、危険度もそれほど大きくないと考えられます」と岡田助教。もし、この活断層が北部の苦竹断層などとつながっているような事実があれば、より大きな地震を引き起こす可能性があり、それだけ注意が必要になりますが、この断層が北に向かう途中で切れており、苦竹断層とは別物とみられることが判明したのも、今回の調査の収穫でした。

 

岡田助教らの今回の一連の研究で、仙台平野の活断層の様相がまたひとつ明らかになりました。今回、この活断層の北端については突き止めましたが、南にどこまで伸びているかについては未確認で、これは岡田助教の今後の課題です。各地の活断層のさらなる解明に向けて、研究者は努力を続けています。

 

【図1】今回の調査(反射法地震探査および重力探査)により判明した地下構造断面図。F1の線が活断層。線より左側(西側)の地層が大きく傾き、活断層によって変形を受けている。(岡田ほか2017, 地震第2輯, 70, 109-124)
【図2】今回新たに確認された活断層(愛島丘陵より南の赤色点線部分)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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