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2017.12.1

第1回「世界防災フォーラム」を開催しました

 

 

 

世界防災フォーラムロゴ。人々が集い、ともに考え想像する姿をイメージ。ロゴの4色は、産・官・学・民の4つを象徴。

 

世界防災フォーラムとは

 

2015年に仙台で開催された第3回国連防災世界会議で、「仙台防災枠組2015-2030」が策定されました。会議のホスト国・日本では、今後、国内の防災対策を進めていくだけでなく、国際社会との連携を深め、「仙台防災枠組」*1の実施を強⼒に牽引していくことが求められています。

 

その一環として、スイスの防災ダボス会議と協力して、「世界防災フォーラム/防災ダボス会議@仙台」を、2017年より隔年で開催していくことになりました。国内外から産・官・学・民の防災関係者が仙台に集い、地元市民の方々も参加します。多様な人々が世界最先端の防災知見を共有し、防災の具体的な解決策を創り出すとともに、東日本大震災に関する教訓を世界に発信していくことが目的です。

 

*1:「仙台防災枠組」…世界全体の将来の防災の方向性を示す取り決め。国連加盟国は今後2030年まで、この国際的防災指針に沿って防災を推進していくことに合意し、会議開催地・仙台を記念し「仙台」という名前が冠された。具体的な推進の方法については、各関係者にまかされており、各自が創出していく必要がある。

 

 

東北大学IRIDeSのかかわり

 

東北大学およびIRIDeSは、この世界防災フォーラム運営の一翼を担い、第一回フォーラムの開催を全面的に支援しました。今村文彦IRIDeS所長が世界防災フォーラム実行委員会*2委員長、里見進・東北大学総長が会長をつとめ、世界防災フォーラム事務局をIRIDeS内に設置し、仙台市はじめさまざまな関係機関と連携しながら、鋭意、準備を進めました。

 

*2:世界防災フォーラム実行委員会…東北大学、仙台市、宮城県、河北新報社、東北経済連合会、Global Risk Forum GRF Davos、仙台商工会議所で構成。

 

 

第1回世界防災フォーラム、成功裏に終了

 

 

 

2017年11月25日(土)~28日(火)、記念すべき第1回世界防災フォーラムが、仙台国際センターおよび東北大学川内萩ホールで開催されました。一般公開・無料市民イベントである前日祭を皮切りに、49のセッション、27のミニプレゼンテーションが行われ、93のポスター、12の展示ブースが出展されました。また、フォーラム期間中に、被災地へのスタディーツアー・エクスカーションも実施されました。

 

フォーラムへは、イラン・フィリピン・台湾・アメリカなど42の国・地域から、947名の会議登録者が参加しました。延べ参加者は、一般市民来場者や、同時開催イベント「ぼうさいこくたい」「防災産業展」の関係者等も含め1万人以上に達し、大盛況となりました。

 

 

第1回世界防災フォーラムの活動と成果

 

多様な人々が、理論ではなく防災実践を目指すのが、世界防災フォーラムの特徴です。

第1回フォーラムのさまざまな活動と成果をご紹介します。

 

 

<前日祭>

 

開幕イベント「前日祭・サイエンスアゴラ連携企画-災害に学び、未来へつなぐ―」には、約700名が参加しました。第1部では、被災した岩手県・宮城県・福島県の若い世代が、復興・防災に向けた真剣な取り組みを発表しました。南海トラフ巨大地震に向け先進的な防災に取り組む大西勝也・高知県黒潮町長も参加し、「うわべでは人の心は動かない。本質を追求する姿が一番共感を呼び、他者の賛同を得る」と若者にエールを送りました。

 

復興・防災における文化面を重視した第2部では、国内外から寄せられた支援への感謝を込めて、被災地・気仙沼の勇壮な伝統芸能「浪板虎舞」が披露されました。仙台フィルメンバーによるアンサンブル、NHK少年少女合唱隊によるコンサートでは、復興への思いを込めた「群青」「花は咲く」等を合唱し、感動を呼びました。

 

復興研究会の取り組みを発表した岩手県立大槌高校の皆さん
被災地の復興を力づけてきた虎舞

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<オープニング>

 

小此木八郎・内閣府特命担当大臣(防災)も出席した「ぼうさいこくたい」との合同オープニングに続き、世界防災フォーラム単独のオープニングが行われました。震災で家族を失った陸前高田出身の大学生が未来に向けた決意表明を行い、また、ロバート・グラッサー・国連事務総長特別代表(防災担当)ら世界の防災リーダーが一堂に会し、それぞれの組織における「仙台防災枠組」の進捗状況をまとめ、世界防災フォーラムへの期待を表明しました。

 

 

 

 

<セッション>

 

さまざまなセッションが開催されました。災害研究の傾向と課題を明らかにする「防災の学術動向」(主催:エルゼビア社)、途上国でどのように防災への事前投資を実現するかを議論する「持続可能な開発に向けた防災への事前投資」(主催:JICA)、東北大学の災害科学が世界トップレベル研究拠点として認められ、本学が指定国立大学に選ばれたことから開催されたキックオフシンポジウム(主催:東北大学)、災害統計グローバルセンターの国連持続可能な開発目標への貢献などについて論じる「富士通が目指すSDGsの社会課題解決とICT」(主催:富士通)など、最前線の防災トピックが活発に議論されました。

 

 

 

 

 

<世界防災サーベイ>

 

世界防災フォーラム参加者に、「世界防災サーベイ」と題し、仙台防災枠組に関連したアンケート調査を行いました。その結果、回答者のうち、第3回国連防災世界会議に出席したのは3割でしたが、仙台防災枠組について認識している人々は7割に達すること、自国で将来リスクが高いと考えられる災害として「地震」を挙げる人が最も多いなど、興味深い傾向が明らかになりました。この調査は、今後の世界の防災政策等に生かすことを目的に実施されましたが、おそらく、世界初の世界規模での防災意識調査となりました。

 

 

 

 

<閉会式でまとめを発表>

 

閉会式では、世界防災フォーラムのまとめ「実行委員長サマリー」を、今村文彦実行委員長が発表しました。「フォーラムの主要な論点は、『科学と技術』『政策と財政』『社会と文化』の3つに整理できます。うち『科学と技術』では、津波シミュレーション、ドローン、ビッグデータの活用、宇宙技術の応用など、防災に役立つ最先端の科学技術などがトピックとなりました。『政策と財政』では、発展途上国における持続可能な開発へ防災をどう組み込むか、東日本大震災からの復興という主に2つの状況を主題に、防災に不可欠な政策や財政面での支援の重要性が議論されました。そして『社会と文化』では、防災活動を行うさまざまな団体や個人の現状と課題や、災害弱者のニーズ、災害伝承などが議論されました。」

 

今村実行委員長は、この3本柱を同時に機能させることが防災に不可欠であると指摘した後、寺田寅彦の言とされる「災害は忘れた頃にやってくる」をもじり、「災害は忘れなければ対処できる」と述べて締めくくりました。

 

 

 

<次回「世界防災フォーラム」に向けて>

 

第1回世界防災フォーラムは、多様な参加者が、世界のさまざまな先進的防災技術・学術・知識を持ち寄り、「仙台防災枠組」の実施を推進する貴重な機会となっただけでなく、豊かな文化交流の場ともなったのが特長でした。世界防災フォーラムは、スイスの防災ダボス会議と連携しながら、今後も2年に1度、定期開催していく予定です。その都度、最先端の防災知見を共有しながら、東日本大震災の経験の風化を防ぎ、世界・次世代に息長く伝えていく場となることが期待されます。

 

「仙台防災枠組」により、SENDAIは世界に防災のキーワードとして知られるようになりました。今後も世界防災フォーラムでは、幅広い分野の専門家と市民が手を携え、SENDAIからBOSAIを世界に広げながら防災社会の構築を目指します。

 

 

 

 


 

【お問い合わせ】IRIDeS広報室 電話 022-752-2049、Eメール koho-office*irides.tohoku.ac.jp (*を@で置き換えてください)

 

 

 

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