IRIDeS NEWs | 東北大学 災害科学国際研究所 IRIDeS

2019.1.25

ネットワークの力で 貴重な歴史資料を後世につなぐ

人間・社会対応研究部門 川内 淳史 准教授

 日本では、1995 年の阪神・淡路大震災を契機に、関西の歴史研究者・自治体等関係者・市民などで連携し、ネットワークの力により、被災した貴重な歴史資料を救い、後世につなげていこうという動きが現れました。その後、全国各地で「史料ネット」が立ち上がり、それぞれが地域の特色を生かしながら資料保存活動を続けてきました。2011 年の東日本大震災以降は、広域災害発生時に被災していない地域の史料ネットが、被災地の歴史資料レスキューを遠隔地から支援する活動も活発化しています。

 

 こうした中、2018 年度、「歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業」が本格的に活動を開始しました。この事業は、東北大・神戸大・人間文化研究機構の3 組織が協力し、特に日本各地の大学同士、さらには各地の史料ネットをつなぎながら、全国の歴史資料保存・歴史資料を扱う人材や技術の育成・資料を活用した研究などを進めていくものです。このネットワーク事業に関し、東北大で中心的役割を担うことになったのがIRIDeS です。2018 年度は、歴史の視点を重視した災害科学シンポジウムを文理連携で開催するなど、意欲的な活動を行いました。

 

 IRIDeS の本ネットワーク事業担当教員・川内淳史准教授は、このネットワーク事業が発足した背景として、「近年の広域災害多発に加え、多くの地方で高齢化・人口減少が進み、各地に残された歴史文化資料が失われつつある現状に対する危機感」を挙げます。日本各地に、特に江戸時代以降の膨大な歴史文化資料が残されていると推定されており、それらは当時の社会・経済状況や、災害発生時の対応の様子など、その地域のリアルな実態を示すものです。それら資料を失うことは、“ 我々はどこから来たのか” という根源的な問いに答えるための貴重な手がかりを失うことでもあります。「日本の大学、特に人文系は同じく厳しい状況に置かれています。しかしこの状況に対し、学術関係者こそ互いのリソースを生かして協力し、貴重な資料を将来へつないでいく主力となるべきだという志のもと、このネットワーク事業が立ち上がりました」と川内准教授。本ネットワーク事業は、将来的には、全国の資料をデジタル化し、誰でもアクセスできる環境を整えることも目指しています。

 

 災害によって多くの貴重な歴史資料が失われてきましたが、一方で災害は、歴史資料保全活動が発展する契機ともなってきました。今後も災いを転じて福となし、ネットワークの力で人と自然のあゆみに関する資料を後世につなぎ、生かしていくことが期待されます。

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【お問い合わせ】IRIDeS広報室 電話 022-752-2049、Eメール koho-office*irides.tohoku.ac.jp (*を@で置き換えてください)

 

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