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2019.3.8

広報室コラム 広報室長より

広報室長 伊藤 潔 副研究所長・災害医学研究部門 教授

 2019 年、平成最後の時期が愈愈迫ってきました。

 


 ちょうど50 年前、1969 年は人類がアポロ計画で初めて月に到達した年です。あの頃は、科学万能主義で、50 年もたてば、人類が月で暮すのはもちろん、地震や災害の予知も、当たり前のように解決されるものと思われていました。結果は見てのとおりで、自然現象がいかに奥深く人知の及ばないものであるか、毎年のように我々は気付かされています。そして30 年前,1989 年は、平成の始まりであるとともに、株価が史上最高値をつけ、日本経済が最高潮に達した年です。バブルという言葉はあとで振り返って付けられたものです。あの頃、渦中の人間は、私自身も含め、皆、好景気が永遠に続くと信じ、浮かれていました。予知は、人の経済活動といった身近なものでも不可能なのでしょう。ベルリンの壁が崩壊したのもこの年で、誰も予想だにしない出来事でした。そういえば、20 年前の1999 年は、空前の世紀末予言ブーム「ノストラダムスの大予言」で、地球滅亡の年とされていましたが、当然のごとく、何も起こりはしませんでした。

 

 さて、1000 年に一度ともいわれた巨大災害である東日本大震災から8 年が経過しました。この災害で人々は、予知がいかに難しいものであるかを再認識するとともに、必ず起こりうる次の災害にいかに柔軟に対処し被害を減らすか、減災の観点からのアプローチを、国を上げて行ってきています。一方で、政府による復興創生期間10 年間の終了(2020 年度3 月末)までは、残り2 年となりました。ハード面での整備はほぼ終了しましたが、今後は、被災の記憶と教訓をいかに伝承していくか、ソフト面での成果が問われています。

 

 物理学・地震学の権威で随筆家としても知られた寺田寅彦氏は「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい」と述べています。正当にこわがるためには、正確な情報と知見、教訓を、わかりやすく伝えていくことが不可欠です。広報室では、このような視点を踏まえつつ、これからも、国内及び国外への発信をしていく所存です。「あなたが虚しく生きた今日は、昨日亡くなった人があれほど生きたいと願った明日」という格言があります。震災や災害でお亡くなりになった方々のご冥福を祈りつつ、生きている我々が、今後、災害への備えに対し、どのような働きが出来るのか、これからも皆様と共に考えていきたいと思います。

 

(文:広報室長 伊藤 潔)

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