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2019.12.6

災害時の補助犬に関する啓発活動に協力

 「補助犬」とは、特別の訓練を受け、視聴覚や身体が不自由な人の社会参加を助ける、盲導犬・聴導犬・介助犬の総称です。災害発生時、補助犬のユーザー(使用者)が避難する時は、ユーザーを助けるため犬も一緒に避難します。
 
 IRIDeSの三木康宏講師は、災害医学の基礎研究を専門としますが、獣医師でもあることから、災害時の補助犬をめぐる課題にも注目してきました。1995年阪神・淡路大震災発生時は、指定避難所において補助犬受け入れは認められていませんでしたが、2002年に成立した身体障害者補助犬法により、指定避難所において補助犬の「同伴避難」受け入れ義務ができました。以降、補助犬は避難所でもユーザーを助け、離れず過ごすのが原則となりました。
 
 「しかし、この法律がまだ十分に周知されていないのが課題です」と三木講師。災害時のみならず平時でも、公共性の高い場所では補助犬の受け入れ義務がありますが、レストランや病院等で、補助犬が拒否された事例が報告されています。もし災害時に補助犬受け入れが拒否された場合、ユーザーの命にかかわる可能性もあります。普段からの連携と啓発が重要と考えた三木講師は、「特別非営利活動法人 日本補助犬情報センター」と意見交換を重ねて現状と課題を共有し、IRIDeSの他分野の研究者に向けて、災害時の補助犬の扱い等に関してまとめ、発表するなどの活動を行ってきました。「避難所運営マニュアルに、補助犬受け入れ義務に関する記載がない自治体も多いようです。例えばそれらにも盛り込んでいけば、補助犬への理解がもっと進むのではないでしょうか。」
 
 補助犬は全国で約1,000頭しかいないため、問題の発生件数自体は少ない状況です。しかし、補助犬より頭数がはるかに多いペットについては、災害発生時の問題として、社会の注目が集まるようになってきました。「東日本大震災の際、ペットをめぐる多くの問題が発生したことを受け、環境省がガイドラインを整備しました。現在では、ペットは避難所へ同行するのが原則です。ペットが自宅に残されれば、かえって大きな問題が生じるためです。ただし、一部を除き、避難所では人の居住エリアとペットエリアを分離するのが原則です」。避難所の過密な環境で人とペットが同居すれば、アレルギーや感染症等の問題も懸念されます。避難所における同伴が法律で義務付けられている補助犬とは扱いが異なり、注意が必要です。
 
 災害時の補助犬やペットの扱いは、法律やガイドラインの面では年々整備が進んできました。しかし社会認知は未だ不十分で、2019年台風19号発生時も、避難におけるペットの扱いに関し誤解や混乱が見られました。三木講師は、全体としては、災害時も人と動物が工夫して共生する方向へ進みつつあると捉えていますが、今後も状況把握につとめ、啓発に協力していく考えです。

10_3_三木先生

災害医学研究部門
三木 康宏 講師

10_3_補助犬トリオ(室内)

左から盲導犬、聴導犬、介助犬
(写真提供:日本補助犬情報センター)

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【お問い合わせ】IRIDeS広報室 電話 022-752-2049、Eメール koho-office*irides.tohoku.ac.jp (*を@で置き換えてください)

 

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