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2020.3.6

広報室コラム:「頑張れ」ということ

広報室長 伊藤 潔

副研究所長・災害医学研究部門 教授

 2020年、愈々、オリンピックイヤーの年となりました。昨年の感動のラグビーワールドカップに続き、この夏には、日本中そこかしこで「がんばれ~!」の大声援が巻き起こることと思います。
 
 私はこの「がんばれ」という言葉が嫌いです。昔、大学受験で浪人していた頃、大学にいち早く入学した元同級生達から「がんばれよ~~勉強しろよ~~」と言われるたびに、(自分達は大学で青春を謳歌して遊び歩いているくせに、よくいうよ!)と、妬み半分、羨み半分に、すごく嫌な気持ちになったものです。その気持ちを数十年たった今も、いまだに引きずっているのか、なかなかこの言葉、自分では口にできません。そういえば、現在進行中の働き方改革、安易に職員に「がんばれよ」と声をかけるのはパワハラの恐れありとして禁忌になりつつあるようで、ほんと、世の中、変わりつつあるようです。
 
 こう考えると、相手を思いやる、あるいは励ます言葉というのは、本当に難しいと感じます。昨年も台風19号をはじめ、災害の多い年でしたが、被災された地域に向けて、レポーターの「お体に気を付けて頑張ってください」というようなコメントが、所々で聞かれた気がします。何か違和感を覚えつつ、かといってどういう言葉がいいのか思い浮かびません。そんなことを当て所もなく考えていて、昔、東日本大震災の時に、ある一人の有名な演歌歌手の方が、被災地の方々に向けてテレビで語られていた言葉が思い浮かびました。「もう、頑張らなくていいです。十分にやってこられたと思います。これからは、私たちが頑張りますから・・」。とても感動した気がします。
 
 広報室では、正確な情報と知見、教訓を、わかりやすく伝えていくことを業務としていますが、単なる無機質な言葉の羅列では、誰も読んでくれません。かといって感情や思いをどこまで挿入するかは、受け手、我々の立ち位置、そして相互の関係性にもよるところで、難しい部分があります。災害に特化した研究所から、災害に関わる広報を、今後どのようなスタイルで発信していくか、これからも皆様と共に考えていきたいと思います。頑張ります。

(寄稿)

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