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2021.3.10

広報室コラム

 

広報室長 江川 新一
災害医学研究部門 教授

東日本大震災からのスタート

 

 東日本大震災から10年が経過しました。災害科学国際研究所では『東日本大震災からのスタートー災害を考える51のアプローチー』と題して広く一般の方に向けて本を出版しました。

 

 東日本大震災はわが国で記録された最大規模の地震によって引き起こされ、津波、原子力発電所事故が複合した災害として世界中に衝撃を与えました。10年経過してもなお余震が発生し、震災は現代社会にさまざまな課題を突き付け続けています。一方、東日本大震災があったからこそ分かったこと、改善されたこともたくさんあり、それは仙台防災枠組にも生かされました。仙台防災枠組は第3回国連防災世界会議で策定された、2015年から2030年まで個人、家庭、社会、国際社会のすべての地域・レベルで使われる指針です。

 

 私は膵臓を専門とする外科医として災害(disaster)と病気(disease)に共通点を強く感じています。どちらもdis- という否定を表す言葉がついており、語源をさかのぼると、災害は星(star)を見失うこと、病気は安楽(ease)(さらにさかのぼると「投げる(ye)」元気)を失うことのようです。英語では防災に相当する単語がなく、災害リスクを減らすこと(disaster risk reduction)と表現されます。このリスクも災害と病気で共通点があります。地震、津波、放射能、ウイルスなどはすべてハザードと呼ばれますが、ハザード=災害や病気ではありません。ハザードが地域社会や個人を襲ってはじめて災害や病気になります。どのようなハザードがどのような強さ(hazard & exposure)で襲うか、そして被害を受ける地域社会や個人の弱さ(vulnerability)や対応する能力(coping capacity)がどれくらいあるかで、被害の程度や重症度が変わります。

 防災は「災害を防ぐ」ことに加えて、災害が発生したときに、いかに「被害を少なくし、すみやかに対応し、快復させ、よりよく復興して次の災害に備える」かということになります。災害科学の研究者たちは、ハザード、弱さ、対応する能力をさまざまに解析し、この変動する地球上で人間が柔軟に安全・安心に暮らしていくこと(レジリエンス)を追求しているのです。IRIDeSの総力を結集した本をお読みいただければ幸いです。
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