IRIDeS NEWs | 東北大学 災害科学国際研究所 IRIDeS

2021.3.19

【報告】感染症に関するさまざまな研究・実践活動を開始

ひかり拓本により疫病碑を調査する(写真:災害文化研究分野提供)

 

 IRIDeS は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、東日本大震災10年の節目に予定していた複数の催事の中止・延期を余儀なくされました。また、研究者が現地に赴いて行う調査活動も大幅な制約を受けました。その一方で、IRIDeS では、執行部・災害医学の専門家が災害対策本部幹事会を所内で定期開催して研究・教育現場の感染症対策に真剣に取り組み、所内会議や研究活動、一般公開イベントのオンライン化も進めました。

 

 また、2020年にさまざまな分野の研究者が、感染症を災害と捉え、東日本大震災の教訓を活かしたポストコロナ社会の構築に向け、研究プロジェクトをスタートさせました。テーマは「感染症をめぐる社会文化の歴史的変遷(疫病退散プロジェクト)」「新型コロナウイルス感染症に対応する企業・組織の事業継続計画(BCP)改善」「感染症蔓延下における水害時のCOVID-19伝播リスクの可視化・低減策」「ポストコロナを生きる力」など、いずれもその学際性を特徴としています。

 疫病退散プロジェクト1)は、地域の各所に残される感染症関連石碑および疫病退散習俗について、仙台市歴史民俗資料館や一般市民と協力して調査・研究を行うものです。2020 年9月30日、同プロジェクト代表の蝦名裕一准教授は仙台市内にて記者会見を開催し、広く市民へ協力を呼びかけました。

 さらに、三木康宏講師らは2020年11月、COVID-19対策としての行動規制が研究者の研究に対するモチベーションの低下や将来への不安を引き起こしていることを明らかにする論文2)を出版し、坂本壮研究員らは同12月、パンデミック状況下で自然災害が発生した場合の避難について検討するためのレビュー論文3)を出版しました。

 

 産学連携の実践活動として、IRIDeSの今村文彦教授らは東京大学地震研究所、富士通株式会社、川崎市と連携し、新型コロナウイルス禍での自然災害を想定した避難所運営の実証実験を、川崎市川崎区にて2020年8月31日に実施しました。避難所の3 密による新型コロナウイルスへの感染リスクを低減し、より安全な避難に向けて、感染を考慮した人流シミュレーション技術とAI画像解析ソリューションを活用した実証実験となりました。

 

 設立以来、IRIDeSは、災いを転じて福となす(東日本大震災を転じて安全な社会を構築する)ことをミッションに、研究・実践活動を進めてきました。震災から10年を迎えた今、東日本大震災の教訓を生かし、コロナ禍を転じてよりよい社会を構築することが、IRIDeS の新たな目標に加わりました。

 


 1) 疫病退散プロジェクト ホームページ:https://www.saigaibunka.jp/index.html

 2) Miki Y, Chubachi N, Imamura F, Yaegashi N & Ito K.(2020) Impact of COVID-19 restrictions on the research environment and motivation of researchers in Japan. Progress in Disaster Science 8.

 3) Sakamoto M, Sasaki D, Ono Y, Makino Y. & Kodama E. (2020) Implementation of evacuation measures during natural disasters under conditions of the novel coronavirus(COVID-19) pandemic based on a review of previous responses to complex disasters in Japan. Progress in Disaster Science 8.

 

 
 

【お問い合わせ】IRIDeS広報室 電話 022-752-2049、Eメール @

 

 

TOPへ