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2021.2.4

【活動紹介】「山元町震災遺構中浜小学校」のデザインディレクションを担当

 

情報管理・社会連携部門
本江 正茂 准教授

 2020年9月、震災遺構として、宮城県山元町立中浜小学校の校舎の一般公開が開始されました。ここは2011年3月11日、大津波が迫る中、児童・教職員・保護者ら90人が屋上に逃れ、屋根裏倉庫で一夜を過ごした後、救助された場所です。小学校としては閉校となりましたが、2014年、同町はこの被災した校舎を震災遺構として保存する検討を開始し、IRIDeS の兼任教員・本江正茂准教授(東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻、一般社団法人SSD)が、そのデザインディレクションを担当することになりました。本江准教授は、編集者、グラフィックデザイナー、映像作家、建築家らに協力を要請してチームを作り、関係者への聞き取り、調整・合意形成も行いながら、プロジェクトを進めていきました。

 

 震災遺構をデザインするにあたり留意したのは、単純に津波の「脅威」を思い知らせたり、すでに定まったものとして「教訓」を教えたりする場所にはしない、ということです。「当時の校長をはじめ経験者は、津波があと1m高ければ駄目だった、屋上への避難の判断は本当に正しかったのかと、繰り返し自問されています。正しい判断をして逃げて助かったという英雄譚では全くなかったと。ですから震災遺構にも、災害時にはそれぞれの場所で自分で答えを探すしかない、というメッセージを込めました」と本江准教授。震災遺構は、来訪者にさまざまな問いを投げかけ、その後も考え続けさせる場所になりました。「デザインの上で苦心したのはバランスです。複雑な話を複雑なまま表現するわけですが、難しくなりすぎてもいけません。また、公開する以上、安全性の確保は当然ですが、壊れた状態をどこまでそのままに見せられるか」。町や地域の方々との調整を繰り返し、震災遺構中浜小学校はついに完成・公開の運びとなりました。その取り組みは2020年度グッドデザイン賞を受賞、ベスト100に選出され、さらに防災・復興デザインについての特別賞も受賞することになりました。

 

 実際にこの震災遺構の中を歩くと、旧校舎の中にはがれきが残り、壊れたままの窓から海風が吹き抜けていきます。「被災した状態をそのまま見てもらうため、一部を除いてさび止めなどで無理やり時間を止めるようなことはしていません。朽ちていくこともそのままです。しかし、これは常に安全に注意を払い、適切に管理し続けていくことが求められるという裏返しの意味を含みます。長い時間を超えてきたメモリアルのモニュメントはどれも、世代を超えて誰かが世話をし続けることではじめて存続できたのですから」。震災遺構中浜小学校には、意欲的な語り部も常駐し、表示板には英語も表記されています。「国内外からぜひ足を運んでいただき、体感してほしい」と、本江准教授は話しています。

 

山元町震災遺構中浜小学校(2021年1月撮影)
 

山元町震災遺構 中浜小学校

住所:〒989-2111 宮城県亘理郡山元町坂元字久根22-2

アクセス:常磐自動車道 山元南スマートIC から車で約10 分/JR 常磐線坂元駅から徒歩約25分(駅隣接のやまもと夢いちごの郷にレンタサイクル有り)

開館時間・入館料等についての詳細:www.town.yamamoto.miyagi.jp/soshiki/20/8051.html

 
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【お問い合わせ】
 IRIDeS広報室 電話 022-752-2049、Eメール @
 

 

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