2022.2.4
IRIDeSの産学連携 その1
丸谷浩明 教授・副所長
防災社会推進分野
近年の東北大学の重要キーワードである「産学連携」。産学連携は、東北大学の「教育」、「研究」に次ぐ第3の使命である「社会貢献」の中核に位置づけられ、各部局でも取り組みが進んでいます。
では、IRIDeSにおいて、どのような産学連携活動が実施されてきたのでしょうか。このたび、所内の産学連携窓口教員であり、自身でも複数の企業と連携プロジェクトを実施してきた、丸谷浩明教授・IRIDeS副所長に聞きました。
▷産学連携の形はさまざま
皆さんが、産学連携と聞いてよく思い浮かべるイメージは、大学の研究者が企業からの資金提供を受けて何かの技術や機器を共同で開発したり、特許を取ったりするようなものかもしれません。しかし、企業との協働の形はそれだけでなく、とても多様です。
IRIDeSには産学連携の部門として、「地震津波リスク評価(東京海上日動)寄附研究部門」、「都市直下地震災害(応用地質)寄附研究部門」「イオン防災環境都市創生共同研究部門」が設置されており、2022年4月からもう一つ「日本工営レジリエントシティ技術実装共同研究部門」も発足します(その3参照 )。部門設置には至らずとも、共同研究契約を交わして一緒に研究を進めるタイプもあり、IRIDeSの多くの教員が、日常的に企業と一緒に研究を進めています。
私は防災実践推進部門に所属し、災害時の事業継続計画(BCP)や企業・組織の防災を専門としています。そのため企業との協働は、本来の専門に最初から組み込まれているともいえます。また、所内のイオン防災環境都市創生共同研究部門にも兼務で所属し、東北大学雨宮キャンパス跡地に建設が計画されているイオンモールにおける防災・減災対応の検討を支援しています。
そのほかにも、学術指導契約を結んだうえで企業の委員会等に出席し、助言を提供していますが、これも産学連携活動の一つです。また、企業や行政関係者と意見交換を行う産学官勉強会を2014年から継続して毎月開催しており、今までIRIDeSの複数の研究者が発表・参加してきました。このような、異なる立ち場の関係者が防災に関する共通土台を持つための場を作ることも、私の考える産学連携活動に含まれます。さらには、企業との学術指導契約に基づき、企業の防災研修のテキスト作りや、企業のBCP構築を支援した経験もあります。
▷企業の人材育成に協力し、防災戦略をともに考える
防災や事業継続に関する共同研究の一環として、企業の若手社員を民間企業等共同研究員としてIRIDeSに受け入れ、その方々の防災人材としての育成をお手伝いし、当該企業の防災戦略構築にもつなげる活動も行ってきました。その共同研究員の方々は、IRIDeSに常駐または毎週通う形です。私が教えている東北大学公共政策大学院で防災関連の授業にも同席してもらい、防災の取り組みの経験を学生に話していただく一方、幅広い知見を身につける機会にしていただいています。また、企業のリアルな防災の問題について私や学生と一緒に議論し、協働で解決策を模索し、気づきを会社に持ち帰っていただいています。
共同研究員の方々は、社会にまだ出ていない学生と違い、会社という組織をすでに知っています。この方々が直面している課題はまさに企業現場の生の防災の課題であり、それを学術的視点と過去の対応事例などの知見を踏まえて一緒に検討しますので、導き出された対応方法は、おそらく、現実的でクリエイティブなものになっていくと思います。