2012年秋から防災教育に関わっていた北海道厚真町が、2018年胆振東部地震で甚大な被害を受けてしまいました。発災直後から役場、社会福祉協議会、支援団体等が直面する課題に共に向き合い、研究者としてできることを模索しながら支援を行ってきました。被災者の生活の場が避難所から仮設住宅、災害公営住宅や自宅等へと移行していく中、生活再建やコミュニティの再編、町の復興に際して、継続する課題や新たに取り組むべき課題が生じています。それらについて、実践的研究として被災地の課題に共に向き合い、事態の改善のための取り組みに加わっています。
阪神・淡路大震災、そして東日本大震災を経て全国各地で様々な防災教育が展開されるようになっています。それらの教育活動の中には一過性のものではなく、地域社会に根付いた「文化」になりつつあるものもあります。次項の「災害文化」と関連し、被災地/未災地で継続した防災教育を行っていくための実践的研究に取り組んでいます。その一環として、東日本大震災時に福島県郡山市で3000人が生活した大規模避難所の事例が原点となっている「さすけなぶる」という避難所運営の研修教材の開発・改善と実践、ファシリテーターの育成にも関わっています。また、防災教育と心のケアの一体的な取り組みにも携わっています。
国内外には様々な災害の「被災地」があります。その被災地では、個人や家庭・世帯、組織、地域社会に、経験に基づく「災害文化」が様々な形で形成されます。北海道奥尻島と三陸地方では、同じ津波災害でも「災害文化」の伝わり方が異なるように、災害の性質、頻度、地域の背景により、性質や継承・変質過程が多様な災害文化がみられています。資料調査とフィールドワークを中心に、様々な地域の「災害文化」から、特に継承と変質のメカニズムを探っています。