2021年度 共同研究助成として採択された課題を掲載いたします。
石渡 幹夫(東京大学 新領域創成科学研究科)
佐々木 大輔(2030国際防災アジェンダ推進オフィス)
災害統計データを活用し、災害の規模・特徴等が防災投資に与えるインパクトを明らかにする。災害種は水害を想定しており、治水投資額・被害軽減効果の将来予測手法を開発するとともに、投資資金を確保するための施策について政策提言を行う。本研究は、防災投資の政策及び国際援助方針の策定に貢献する実践的な研究である。
田中 成行(岩手大学 教育学部)
蝦名 裕一(災害文化アーカイブ研究分野)
本研究では、大規模災害時における被災者救済や死者への対応といった生命をめぐって自治体や住民組織が実施した対応について、ヒヤリングやアンケートによって事例を収集する。また、こうした大規模災害の経験が地域の中でどのように教訓化されるのか、各地の伝承施設や学校現場での活動について研究・分析をおこなう。
中村 哲也(共栄大学 国際経営学部)
増田 聡(防災社会推進分野)
本研究では、東日本大震災から10年を迎える被災地で「農林水産業の復興計画が如何に策定・実施され、それに従う風評被害の克服策が如何なる成果をあげたのか」を検証するため、東日本を中心に聞き取り調査を実施したうえでWebアンケートを行う。そして調査会社の消費者パネルに対してアンケートを配信し、集計したデータをもとに統計的に分析し、風評被害構造と対応策のあり方の解明を試みる。
天野 真志(国立歴史民俗博物館 研究部)
川内 淳史(歴史文化遺産保全学分野)
本研究では、津波や水害などの影響で長期保存に向けて深刻なリスクを抱えた歴史資料を、本来の所在地で保存・継承するための方法論を提示する。カビや腐敗など、資料に加えて保存環境や人体にも影響がおよぶリスクを抑制し、地域社会を主体として恒常的に活用・継承することが可能な技術を検討し、その実践と普及をおこなう。
加藤 久美(和歌山大学 観光科学研究科)
ゲルスタ ユリア(災害文化アーカイブ研究分野)
「地域の光を観る」観光は、今日持続可能な地域づくりにおける役割が大きい。ここでは、共生知を復興の力=光とし、原子力災害被災地域(大熊町、南相馬、飯舘村)の「光」を、映像を含む多様な表現方法にて表現する。成果はみちのく震録伝に復興フェーズとして提供すると同時に、国内外の観光研究者による「復興+観光」国際フォーラムを通じてさらなる議論、発信を試みる。
田中 聡(常葉大学 大学院環境防災研究科)
佐藤 翔輔(防災社会推進分野)
本研究では、2019年から2020年度にかけて発生した災害について、自治体の対応の災害エスノグラフィー調査を実施し、そのアーカイブ化をすすめるとともに、COVID-19蔓延前後での災害対応事例の比較を通してその特徴を同定し、ポストコロナ時代における自治体の災害対応のあり方について検討する。
小野塚 航一(神戸大学 大学院人文学研究科)
蝦名 裕一(災害文化アーカイブ研究分野)
本研究は、神戸大学と東北大学を中心に培ってきた歴史資料保全の手法を基盤として、両者の連携による近年の地震・津波・豪雨災害で被災した歴史資料の新たな保存と活用手法の開発・普及をおこなう。また、これまで困難だった大判の絵図や拓本史料といった大型資料の保全・活用技術を開発・継承していく。
杉安 和也(岩手県立大学 総合政策学部)
村尾 修(国際防災戦略研究分野)
本研究では、東日本台風の東北3県被災自治体にて災害初動対応検証・復興計画策定・防災訓練支援等に参与した研究者らを中心に、東日本大震災からコロナ禍までの近年の災害知見に基づいて実施された避難訓練、避難所運営訓練等の各種防災訓練事例を他地域の防災関係実務者が参考としうるアーカイブの在り方を検討していく。
後藤 和久(東京大学 大学院理学研究科 地球惑星科学専攻)
菅原 大助(津波工学研究分野)
本研究では、災害研が所有する分析機器及び計算機を活用し、地質記録に基づく古津波の波源推定手法の高度化の検討を行う。申請者らによるこれまでの調査研究の成果を踏まえて計画したもので、学術面での顕著な進歩に加え、防災・減災への大きな貢献が見込まれる。
髙清水 康博(新潟大学 災害・復興科学研究所)
菅原 大助(津波工学研究分野)
本研究では、災害研が所有する計算機及び分析機器を活⽤することにより、堆積物粒子の性状解析を行うことによって津波堆積物同定の精度を上げる。その上で、沿岸低地の微地形による津波挙動・土砂移動への影響解明を⾏う。これは、申請者らのこれまでの実績の上に⽴脚したものであり⾼い研究成果と防災への貢献が⾒込まれる。
石橋 寛樹(日本大学 工学部)
越村 俊一(災害ジオインフォマティクス研究分野)
東北地方沿岸域の防災力向上を目指し、日本海溝沿いの地震による強震動と津波を対象に、橋梁および道路の損壊を考慮した道路ネットワークの接続信頼性評価手法を提示する。ハザード評価と、橋梁および道路の脆弱性評価を一貫して行い、地震後に使用可能な道路の選別や、道路交通の確保に向けた補強優先度の同定を試みる。
アドリアノ ブルーノ(理化学研究所 革新知能統合研究センター)
マス エリック(災害ジオインフォマティクス研究分野)
The goal is to make use of the 2011 Tohoku tsunami experience to estimate the damage in future tsunami events. Specifically, we aim to explore suitable AI algorithms for tsunami damage mapping based on the knowledge gained from the 2011 Tohoku tsunami’s remote sensed data in order to fill the gaps related to limitations on data quality and availability and difficulties in the transferability of damage estimation methods.
牧野嶋 文泰(富士通㈱ 人工知能研究所)
今村 文彦(津波工学研究分野)
人々のつながりを活用する新たな津波避難対策の立案に向けて、個人の行動が地域住民に連鎖し、津波避難の成否を大きく左右する現象のメカニズムを数理モデルによって解明する。率先避難等の効果が連鎖して多くの人の避難につながる条件を探り、避難を促進するコミュニティ形成や効果的な情報提供につながる知見を創出する。
有川 太郎(中央大学 理工学部)
門廻 充侍(津波工学研究分野)
本研究は、津波による漂流物挙動や土砂移動のような不確実性の高い現象に対して、(1)昨年度に構築した津波統合モデルを用いデータベースの構築、(2)構築したデータベースと機械学習を組み合わせた予測幅提示システムを検討し、迅速な救援活動や事前復興に貢献するものである。
三浦 富智(弘前大学 被ばく医療総合研究所)
鈴木 正敏(災害放射線医学分野)
原爆被爆者や高自然放射線地域住民における染色体転座法による被ばく線量評価では、』個人の外部被ばく線量と内部被ばく線量の詳細が不明である。本課題では、放射線慢性被ばく事故時にヒト線量評価に外挿可能なモデル構築を目的とし、ニホンザル慢性被ばくモデルを用いて転座発生頻度における被ばく形態の影響を研究する。
越智 小枝(東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座)
江川 新一(災害医療国際協力学分野)
大災害後の後には精神的ストレスや大幅な環境変化により多くの間接的健康被害が起こり得る。これらの被害は事前に評定法を定め、継時的評価を行うことで早期発見・早期介入が可能である。本研究は文献レビューと専門家レビューにより災害横断的な間接被害の評価指標を作成し、東日本大震災時の実データを用いて評価する。
田代 雅実(福島県立医科大学 新医療系学部設置準備室)
稲葉 洋平(災害放射線医学分野)
災害時の医療活動で作成される、経時活動記録をテキストマイニングによって分析を行い、経時活動記録の単語の使用頻度や傾向、相関関係などの特徴を取得する。様々な災害の経時活動記録を解析することによって、災害対応時にリアルタイムに需要を予見し対策を講じることを目標とする。
坪内 暁子(順天堂大学 大学院医学研究科 研究基盤センター)
佐藤 健(防災教育実践学分野)
基礎疾患患者・高齢者・妊婦等身体弱者にとっての避難生活は、健常者以上に不自由で、しかも重症化や死亡のリスクが高まる状況といえる。本課題恵は、新宿区の成城学校避難所地域住民や生徒の協力を得て、整形外科分野の問診時に用いられる痛み等の評価表形式で調査を行い、災害ベッドや災害製品の検討を進める。
盛武 敬(量子科学技術研究開発機構 量子医学・医療部門放射線医学研究所)
千田 浩一(災害放射線医学分野)
申請者らは、放射線被ばくによって、慢性的な血液抗酸化能低下状態が死亡するまで継続することを世界で初めて報告した。本研究では、放射線災害の復興段階で問題となる晩発障害と血液抗酸化能の関係を調べ、血液抗酸化能が晩発障害のバイオマーカーとなるか明らかにする。
喜多村 紘子(産業医科大学 産業医実務研修センター)
千田 浩一(災害放射線医学分野)
新型コロナウイルス感染症対策として、新型コロナウイルス感染症対策として、換気の重要性は認識されるようになった。本研究ではCO2濃度を指標として、仙台市内の新型コロナウイルス集団感染(クラスター)が起こった施設を対象として換気能力の調査を実施し、効果的な換気の改善策を提案する。
浅井 光輝(九州大学 工学研究院)
富田 博秋(災害精神医学分野)
複数の災害を仮想的に創造できる数値シミュレーションの利点を活かし、 VR・歩行コントローラを使った津波・豪雨氾濫の疑似体験を通し、未然に心拍・脳波・唾液等により心理学的侵襲性をモニタリングする。そして計測結果をトポロジカルデータ解析により分類・指標化することで、効率的な警報システム、防災教育方法を探求する。
大石 裕介(富士通㈱ 人工知能研究所)
今村 文彦(津波工学研究分野)
防災分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向け、AIやスパコンを活用した災害予測や避難誘導のデジタル技術を開発する。さらに、市民参加型の実証実験等を通して、デジタル技術によって避難者の避難行動を効果的に促進する災害避難支援システムの構築を行う。
髙橋 浩晃(北海道大学 大学院理学研究院)
定池 祐季(防災教育実践学分野)
地震調査研究推進本部は、千島海溝南部で超巨大地震発生が切迫していると評価した。南海トラフ地震想定被災地に比べて、北海道では事前復興計画の前例がない。本研究では、東北津波被災地を参考とし、積雪寒冷地等の地域特性を反映した北海道太平洋沿岸自治体での事前復興計画策定に向けたアクションリサーチを展開する。
小山 真紀(岐阜大学 流域圏科学研究センター)
柴山 明寛(災害文化アーカイブ研究分野)
防災に関わる多様なプログラムを整理し、体系化することで、その実施(対象・設えなど)と獲得できる能力、学校教育における教育体系及びカリキュラムとの関係の整理を行い、目的(獲得した能力やゴール)に応じた、適切なプログラム設計と実施を可能にする。合わせて、オンライン対応の防災ワークショップの開発も行う。
高原 耕平(ひょうご震災記念21世紀研究機構)
定池 祐季(防災教育実践学分野)
2020年現在も、被災地には流出した家屋の基礎部などが多く残存している。これらは永久保存されないけれども、他方で地域住民や外部者に出来事のさまざまな記憶を呼び起こす、いわば遺構と瓦礫の中間的な存在である。こうした残存構造物を記録する方法を、奥尻島と石巻市での住民参加型フィールドワークを通じて開発する。
田久 昌次郎(いわき短期大学 生涯教育研究所)
今村 文彦(津波工学研究分野)
昨年度共同研究により幼児向け減災絵本制作に取組んだ。制作主体は学生サークルで行い、就職園の子どもへの披露を目標に、出版に至ったことは成果である。本年度共同研究では、減災絵本の教育効果について、幼稚園等の園児を対象に観察調査を行うとともに、近赤外分光法装置を用いた脳科学的機能分析の基礎的研究を行う。
草刈 敏夫(釧路工業高等専門学校)
定池 祐季(防災教育実践学分野)
本研究では、地域住民による持続可能な地域の防災情報蓄積の教育プログラムを通じた防災教育の有効性を探るため、まち歩きや資料収集などによって得た情報のデジタルアーカイブ化と発信を行うという連続ワークショップ(WS)を実施し、ウエブサイトを通した発信に至る知識と技術を習得する過程が防災教育や人材育成に及ぼす効果を検証する。
桜井 愛子(東洋英和女学院大学 国際社会学部)
佐藤 健(防災教育実践学分野)
本研究では「学区の災害リスク理解のためのオンライン講座」を活用し、宮城、山形、岩手の三県対象地区において、学校教員、児童生徒、地域住民等がハザードマップの想定外を踏まえた地域の災害リスクを理解し、風水害に対する事前避難を可能とするための学校防災と地域防災の融合モデルを開発するための実践的研究を行う。
立木 茂雄(同志社大学 社会学部)
佐藤 翔輔(防災社会推進分野)
2014、2015、2016、2017、2020年度の名取市生活再建現況調査の分析結果から、被災者の生活再建の困難が、被災前の社会生活上の脆弱性と密接に関係することが明らかになった。この結果をもとに、平時に加えて災害時のケアプラン、被災後のケースマネジメントプラン作成が担える人材育成プログラムをエビデンスにもとづいて開発する。
林田 由那(宮城教育大学 防災教育研修機構)
佐藤 健(防災教育実践学分野)
本研究は、「避難訓練チェックリスト(本研究組織を中心に昨年度開発した学校の避難訓練の評価指標)」を用いた保護者・地域住民による避難訓練評価を実施し、学校・家庭・地域の連携・協働による学校防災を推進する実践としての「避難訓練チェックリスト」の有用性を明らかにするものである。
岡田 真介(岩手大学 理工学部)
岡田 知己(陸域地震学・火山学研究分野)
活断層は地下の地質構造に変位や変形を与える。これにより地表で観測できる重力は、わずかに変化している。複数の測線において精密に重力測定し、平野下に分布する活断層の連続性を追跡し、評価する。活断層の長さは、発生させる地震規模を特定する上で重要であり、防災・減災にも資する。
奥野 充(福岡大学 理学部)
遠田 晋次(陸域地震学・火山学研究分野)
地震動による斜面崩壊ハザードを評価するために、福島県白河市・二本松市と九州阿蘇カルデラで斜面を覆う火山性堆積物の物性変化を評価する。両地域とも実際に斜面災害が発生したが、気候や堆積環境は異なる。地震動で崩壊する可能性のある体積を見積もり、土砂到達範囲を推定する。これによってハザードマップの精緻化を目指す。