東日本大震災の教訓を踏まえ,災害という脅威を防ぎ止める(防災)だけでなく,人間・社会が賢く備えて対応する,さらに災害による被害や社会の不安定から素早く回復していくための社会技術の確立が必要である.
社会の災害に対するレジリエンシー(しなやかさ)向上を目標に,G空間情報を基盤として,最新の測位・観測技術によるモニタリングと迅速かつ具体的な避難情報発信,被害の全容を迅速に予測・把握するためのシミュレーション・リモートセンシング技術,被害の全容から必要な支援の質と量を推計し,被災者の生活回復度や被災地社会の安定度を計測するソーシャルセンシング技術を高度に融合し,センシング情報を利活用するためのビッグデータプラットフォームを構築して,新しい被災地支援策の技術的な枠組みを確立するとともに,それを社会に実装するための,産・学・官の新たな体制を実現する研究会を発足する.
東日本大震災以上の激甚な被害が予想される国難災害(南海トラフの巨大地震・津波)を目前にし,数十万人を超えると予想される被災者が,早期に生活の安定を取り戻すための新しい社会技術(=被災地支援技術)の実証と実装に取り組む点が本研究会の特色である.被災者・被災地の支援活動は極めて実践的かつ重要な課題で,要素研究を融合した全く新しい取り組み(社会実証)が必要であり,東北大学・災害科学国際研究所は「被災地支援研究分野」という新しい研究分野を創設し,この問題に取り組んでいる.この度,本研究会を設立することで,国の施策に沿って,国と連携の下で産・学・官の強力な連携体制を構築し,研究成果の社会実証と技術の実装・標準化に向けての飛躍を図る.
本研究会は,その目的と趣旨に賛同する研究者,民間事業者,自治体等で構成し,広く参加を募る.設立時点では,大学から東北大学,東京大学,東京工業大学,千葉大学,高知高専,関西大学等の研究者,民間事業者から約18社が参加する.
以下のテーマを具体的な項目として研究活動および社会実証活動にむけた検討を行う.なお,並行して,東日本大震災の調査研究を通じて新たな研究シーズや研究ニーズが得られた場合には,随時テーマを追加する.
2013年10月~2018年6月の5年間を当面の活動期間とし,東日本大震災の被災地および被害実態・教訓をベースとした各研究テーマの遂行,来る国難災害における目的達成に向けての社会実証研究の実施を行う.得られた研究成果は研究会全体で共有し,社会実証研究を経てすぐにでも社会に実装することを前提とした活動を行う.
定期研究会の開催,学会等における技術展示,ウェブページによる広報を通じて,研究成果を広く社会に発信する.