特任教授(客員)
博士(医学)
福本 学
FUKUMOTO Manabu
ふくもと まなぶ
低線量被ばくの生物・人体への悪影響が懸念されていますが、解析することは極めて困難です。2011年、東日本大震災に伴って起こった福島第一原子力発電所事故では大量の放射性物質が環境中へ飛散しました。福島原発周囲の環境、とくに動物への影響を解析することによって、長期にわたる持続的な放射性物質の生物・人体影響を科学的に明らかにするとともに、地球環境の保全に役立ちたいと考えています。
日本人の二人に一人ががんに罹患し、三人に一人が亡くなっています。以前は外科的に摘除できるか否かが予後を決定しました。しかし今日、内科的な抗がん剤、分子標的薬、免疫を介した治療法とともに、放射線療法は飛躍的に発展し、がん治療の大きな柱のひとつになっており、治療耐性がんが予後の決定に大きく関わっています。就中、放射線療法は他の治療法に比べて全身への負荷が経度で、機能温存に優れています。そのため放射線治療に貢献することを目的に、私たちは放射線耐性がん細胞株を樹立・解析しています。
第二次世界大戦中に傷痍軍人に使用された血管造影剤トロトラストはα線を放射する二酸化トリウムのコロイド溶液です。静脈内に投与されたトロトラストは肝臓に蓄積し、数十年して肝臓に悪性腫瘍を発症しました。犠牲者の解剖試・資料は、トリウムの臓器沈着量と詳細な臨床経過と病理組織ブロックからなっており、ヒト放射線内部被ばく発がん機構を明らかにする上で極めて貴重です。アーカイブを構築し発がんの分子機構を解析するとともに、アーカイブを長崎大学原爆後障害医療研究所へ寄託しました。