大きな震災の前後では、すぐに逃げない心理や発災直後の対策、さらには中長期的健康課題の実態解明とその対策が大きな課題です。集団全体に介入すること、津波にのみこまれても救命の可能性が高まる対策を立てること、中長期的にはメンタル面や身体面での多くの課題に対する対策を研究しています。さらに新興感染症などに費用対効果の考え方を取り入れた対策も重要な課題ととらえています。
津波対策としての「フロートパック」の実用性を目指し、津波水理実証実験などを検討しています。津波の死因としては溺死のみならず、外傷、凍死、汚泥などの誤飲があります。このうち溺死につきましては、意識がなくなっても上向きで浮いていられるようにライフジャケットを改良し、これをフロートパックとよんでいます。外傷に対してはプロテクト機能を持たせ、保温やマスク機能を持たせるなどの検討を行っています。
大規模災害が健康に与える中長期的影響について研究を行い、必要な支援を行っています。東日本大震災被災地の小児保健に関する調査研究では、被災の経験のある就学前の幼児で、肥満が増加していることを見出したため、その改善に取り組みました。また、大規模災害が中長期的健康に与える影響に関する大規模疫学調査(三世代コホート調査)によって、被災の大きい妊婦では低出生体重児の出現割合が大きいこと、低出生体重の子どもが成長して妊娠した場合、妊娠高血圧症候群になる割合が高いこと、および妊娠高血圧症候群の妊婦から産まれた子どもでは、2歳時に自閉傾向の高い子の割合が高くなることを見出し、情報発信と政策提言を行っています。
東日本大震災で被災された方々に今何が必要か。今後大規模災害に被災される可能性のある方々に今何が必要か。いずれも公衆衛生学が大きな貢献をすることができると考えています。東日本大震災で被災された方々には、中長期的に健康影響を把握し必要な支援を行います。今後被災される可能性のある方々には、リスク認識向上やフロートパック開発などを行います。