災害公衆衛生学分野は,災害で「命を落とさない」,災害後に病気の増加という禍根を残さないよう,公的データの利活用やゲノム・オミックスデータを含む長期健康調査による実態の解明を行い,その結果に基づいた災害時の保健医療活動や先制医療との連携によって,地域の皆様の健康向上に貢献する分野です。
1.直接死を防ぐための実態把握と社会への介入:
・災害に対して脆弱性の高い配慮が必要な住民(例:障がい者手帳保有者)の災害による死亡の実態把握とその対策の検討
・「自主的な迅速な避難」「家具転倒防止」「耐震化」「耐震ブレーカー設置」などの防災に関する行動変容を公衆衛生的アプローチで促進させる
2.災害関連死を防ぐための実態把握とその対策:
・超急性期の保健医療活動の対象となる「人工透析患者」「在宅人工呼吸器使用者」の超過死亡の検討とその対策の検証
・急性期の感染症・肺炎,循環器疾患に加え,中長期での自殺による超過死亡の検討し,災害時保健医療活動を検証
3.被災後の心身の健康への影響の解明と社会への展開:
・東北メディカル・メガバンク計画の大規模コホート調査データを活用した検討
[これまでの成果(一部)]
- アトピー性皮膚炎等アレルギー疾患児とその保護者の受診判断を促すパンフレットの開発と有用性の研究
- 東日本大震災被災地の小児保健に関する(アレルギー疾患・神経発達 など)縦断的評価に関する調査研究
- 健康的な生活習慣と新型コロナワクチン接種の新型コロナウイルス感染への影響
4.被災後の保健活動に資するエビデンスを構築し,将来の災害に備える:
・東日本大震災後に開始した大規模コホート調査から,心理学的苦痛(K6)を用いた被災者の自殺死亡の予測能を検討