世界中で頻発する水災害や持続可能な開発への社会的要請の高まりから、自然生態系を利用したサステナブルな防災・減災システムとして森林の存在に高い期待が寄せられています。森林の津波減衰効果を正確に評価するには、森林を構成する樹木が流れに及ぼす作用を理解する必要がありますが、十分明らかではありません。これまでに三次元数値流体解析に基づき海岸林の津波減災効果を評価する手法の開発などに取り組んでいます.
東日本大震災では、津波による土砂移動によって沿岸部の地形が大きく変化し、その後の復旧活動や生態系に影響を与えた事例が報告されています。土砂が混じった状態は、通常の水と異なる流動挙動を示すことから、リスク評価の観点からも津波シミュレーションの際にその性質を考慮することが望まれます。しかし、流体中の土砂運動を直接的に解析する計算コストは非常に高く、広範囲のシミュレーションでこれらを行うことは現実的ではありません。そこで、「粘性(粘り気)」が見かけ上増加する、という傾向によって土砂・流体混合系の流動を表現できないかと考え、有限被覆法や個別要素法を用いた解析によって、粘性評価に取り組みました。
野村怜佳,高瀬慎介,森口周二,寺田賢二郎,“固液混合流体の直接数値シミュレーションによる巨視的粘性評価”,日本計算工学会論文集 ,2018巻,2号,pp. 20182007, 2018.
R. NOMURA, K. TERADA, S. TAKASE, S. MORIGUCHI, "A Method of Numerical Viscosity Measurement for Solid-Liquid Mixture", Multiscale Modeling of Heterogeneous Structures, Lecture Notes in Applied and Computational Mechanics, Vol. 86, pp.347-364, 2018. DOI 10.1007/978-3-319-65463-8, Hardcover ISBN 978-3-319-65462-1
野村怜佳,高瀬慎介,寺田賢二郎,森口周二,“防潮林の減災特性評価を目的としたマルチスケール数値実験”,土木学会論文集 A2(応用力学), Vol. 71, No. 2 (応用力学論文集 Vol. 18), pp.193-201, 2015.