防災教育実践(防災授業や防災訓練・避難訓練)の評価・効果検証は、その実践の有効性を示すだけでなく、そこでの課題を明らかにし、その後の実践の改善にも役立ちます。Ronald Fisher(1890 - 1962)が唱えた実験三原則(反復、無作為化、局所管理)に則った実験室実験の考えを重んじながらも、教育倫理的な配慮や生物学的妥当性の観点に基づいた実験デザインを計画し、実施します。このような実験デザインに基づいて得られるデータは、防災教育実践のエビデンスの一つにほかなりません。実験デザインを応用・駆使して、幼保・小・中・高校・大学で行われる防災教育実践の効果検証研究を行い、得られたデータを先生方と共有し、今後の実践の改善を行います。
東日本大震災以降、精神科医でも臨床心理士でもない、子どもに最も身近な存在である学校の先生方もこころのケアや心理的配慮を子どもたちに行ってきました。それらの事例収集と整理は、未来の支援の手がかり、教員養成・研修での参考資料として有益であるに違いありません(齋藤・保田・邑本, 発表予定, 教育心理学会第64回総会)。学校の先生方が行ってきた東日本大震災に関するこころのケアや心理的配慮の経験について明らかにするために、具体的な事例の収集と整理を行っております。
災害科学と教育認知科学(認知科学の下位領域)との越境に挑戦しています。災害科学では、「生きる力」研究が行われます。教育認知科学では、「学ぶ力」研究がなされます。生きる力と学ぶ力とは密接な関係にあると捉え、災害科学と教育認知科学とを越境し(境界科学を探究し)、得られる知見を社会実装することは、レジリエントな社会の実現につながると確信しています。これまでの学び方(e.g., 齋藤・邑本, 2018; 齋藤ほか, 2020)や学ぶ態度(e.g., 齋藤ほか, 2021; 齋藤・鈴木, 2022)に関する研究をベースとしながらも、学校の先生方、技術者の方、周辺領域の研究者の方々との協同のもとで、この境界科学をメインストリームにしていきます。
齋藤玲・小田隆史 (2021). 東日本大震災被災三県沿岸地域学校における震災学習の現状. 防災教育学会論文誌, 1, 123-142.
保田真理・齋藤玲・邑本俊亮 (2021). 小学生を対象とする防災教育の効果の持続性と家庭への波及:沿岸部と内陸部の比較. 自然災害学会論文誌. 40, 125-142.
齋藤玲・保田真理・邑本俊亮 (発表予定). 小学校教員による東日本大震災に関する子どもたちに対するこころのケアと心理的配慮に関する予察的調査:2011年度から2021年度にかけての事例の収集. 日本教育心理学会第64会総会.
齋藤玲・小田隆史 (2021). 学校防災に情報を活かす. 教師のための防災学習帳, 小田隆史 (編). pp.29-36.
齋藤玲・邑本俊亮 (2018). 学習リテラシーー学習方法としての想起練習に着目してー. 読書科学, 60, 199-214.