研究・実践

平成29年度 共同研究助成 採択課題

平成29年度 共同研究助成として採択された課題を掲載いたします。

災害アーカイブ学

1 防災対策における地域の相互扶助の機能に関する提案~日本と東南アジアとの保健学的な地域間比較研究~(新規)

研究代表者

松田 正巳(東京家政学院大学 現代生活学部健康栄養学科)

所内共同研究者

柴山 明寛(情報管理・社会連携部門 災害アーカイブ研究分野)

研究の概要

日本と東南アジアにおける地域・公衆衛生看護活動の地域間比較研究を通じ、日本では失われつつある地域相互扶助の機能を再考し、災害時のみならず平時においても適用可能な、地域住民による自助努力型健康維持・増進・管理の手法を提案する。

2 熊本地震の震災アーカイブ構築に関する研究(継続)

研究代表者

山尾 敏孝(熊本大学大学院 先端科学研究部)

所内共同研究者

柴山 明寛(情報管理・社会連携部門 災害アーカイブ研究分野)

研究の概要

本研究では、構築した震災アーカイブシステムに熊本地震に関する映像や写真および書類等の多くのデータを収集し入力する。そして、今後の防災・減災教育や活動に資するための震災記録の利活用および災害研のみならず国内外の研究機関との連携を目指し、広く利活用する方法について、昨年に引き続いて研究を行う。

3 水損被害を受けた紙媒体資料の歴史情報復旧に向けた検討(継続)

研究代表者

松下 正和(神戸大学 地域連携推進室)

所内共同研究者

佐藤 大介(人間・社会対応研究部門 歴史資料保存研究分野)

研究の概要

地震による家屋倒壊後の雨漏りや暴風雨により、生物被害を受け固着した大量の水損古文書について、真空凍結乾燥法等の様々な保存修復技術を適用することで想定される古文書の物性変化を抑制し、歴史情報として維持すべき情報の抽出と、古文書としての形態を保全するための方法論を検討し、簡易的な災害対策技術を検討する。

4 東日本大震災および熊本地震における仙台市の災害対応に関するエスノグラフィー・アーカイブスの構築(継続)

研究代表者

田中 聡(常葉大学 大学院環境防災研究科)

所内共同研究者

佐藤 翔輔(情報管理・社会連携部門 災害アーカイブ研究分野)

研究の概要

本研究では、昨年度のデジタル方式とアナログ方式を連携したアーカイブス構築法を応用し、東日本大震災ならびに熊本地震における仙台市の災害対応についてエスノグラフィー・アーカイブスを作成する。さらに熊本地震での職員応援の事例を分析し、教訓の伝達のために有効な災害アーカイブスのあり方について提案をおこなう。

5 津波ディジタルライブラリィ管理運用拡張のためのクラウドソーシング技術の応用(新規)

研究代表者

有次 正義(熊本大学大学院 先端科学研究部)

所内共同研究者

柴山 明寛(情報管理・社会連携部門 災害アーカイブ研究分野)

研究の概要

津波ディジタルライブラリィ(TDL)のコンテンツ作成・管理のコストを軽減するだけでなく、コンテンツの質を高めるためのクラウドソーシング技術の応用を試みる。また、TDLを国際的価値のあるアーカイブとする方策について検討する。

6 岩手県沿岸部における災害資料の整理・アーカイブと災害研究(継続)

研究代表者

奥村 弘(神戸大学大学院 人文学研究科)

所内共同研究者

蝦名 裕一(人間・社会対応研究部門 災害文化研究分野)

研究の概要

本研究は、岩手県大船渡市や釜石市唐丹地区の歴史資料を対象として、東日本大震災による被災史料の保存修復作業や、近年新たに確認された史料群の整理・目録化作業を進めるとともに、作業を通じて得られた歴史情報から、同地域で発生した歴史災害やその後の災害復興・地域開発について研究・分析を展開するものである。

津波減災学

1 津波統合モデル解析の高度化(継続)

研究代表者

高橋 智幸(関西大学 社会安全学部)

所内共同研究者

山下 啓(地震津波リスク評価(東京海上日動)寄附研究部門)

研究の目的

本研究は、複合的で複雑な津波挙動・被害に対する津波減災手法を確立するために、津波統合モデル解析の更なる高度化を目指すものである。そのためにまず、現状モデルの課題整理を行ない。機能拡張と精度向上を図る。そして、津波複合現象のリスク評価に基づき、津波複合被害の軽減策や事後の対応計画を検討する。

2 津波レジリエントな地域防災に向けた地域カスタマイズ型津波解析プラットフォームの検討(新規)

研究代表者

古村 孝志(東京大学 地震研究所)

所内共同研究者

今村 文彦(災害リスク研究部門 津波工学研究分野)

研究の目的

今後の適切かつ現実的な津波防災対策、そして津波レジリエントな地域社会の実現に向け、リアルタイム観測情報に加えて、人工知能やスパコン等の最新ICTを駆使した高度な解析・予測技術により、都市域・臨海工業地域を含む川崎市をターゲットに地域カスタマイズ型の津波減災を産官学協働により世界に先駆けて実現する。

3 高詳細な地震・避難解析に基づくオンライン体験シミュレーションのソフト防災への利活用(継続)

研究代表者

浅井 光輝(九州大学大学院 工学研究院)

所内共同研究者

寺田 賢二郎(地域・都市再生研究部門 地域安全工学研究分野)

研究の目的

スパコンを使用した甲詳細な地震・津波・避難解析結果を災害科学国際研究所が有する多次元可視化システムIMIDeSにて高解像度かつ広範囲に描画することで、避難行動パターンの解析を行う。また同時に大人数が確認できる大画面の利点を生かして、防災計画策案時の合意形成ツールへとの応答を図る。

災害医学・医療

1 放射線災害発生時における放射線被ばくストレス定量法の確立(新規)

研究代表者

盛武 敬(産業医科大学 産業生態科学研究所 放射線健康医学研究室)

所内共同研究者

千田 浩一(災害医学研究部門 災害放射線医学分野

研究の目的

放射線事故/災害発生時には、バイオドシメトリにより被ばく線量を推計し、治療優先順位を決める(トリアージする)必要がある。申請者らは放射線被ばく1〜数日後に血中抗酸化能が線量依的に低下することを見出しており、本研究では、血中抗酸化能を指標とした大規模事故/災害発生時に利用できるバイオドシメトリ手法を開発する。

2 東日本大震災の教訓を活かした熊本地震後の精神保健支援活動体制の検討(新規)

研究代表者

山口 喜久雄(熊本県精神保健福祉センター)

所内共同研究者

富田 博秋(災害医学研究部門 災害精神医学分野)

研究の目的

熊本地震被災者のメンタルヘルスケアニーズが高まる中、限られた社会資源で如何に多様な要因を包含する被災コミュニティの精神保健活動の充実を図るかという課題にエビデンスを伴う指針を見出すことを目的に、災害科学国際研究所が集積している情報や手技を活用して、熊本の状況に即した解析、検討を行う。

3 副都心新宿の指定避難所近隣町会・学校・行政等との連携で進める災害対策: 被災時の医療・保健・福祉体制支援システムの検討(継続)

研究代表者

坪内 暁子(順天堂大学大学院 医学研究科 研究基盤センター)

所内共同研究者

佐藤 健(情報管理・社会連携部門 災害復興実践学分野)

研究の目的

先行研究結果の分析・考察を行い研究を発展させ、日本経済や社会機能の麻痺を引き起こす首都圏直下型地震に備える。少子高齢化、多様化、グローバル化、IT化が目立つ副都心新宿の、成城学校避難所運営管理協議会との連繋で、二次被害や関連死の低減に向け、医療者OB等による医療・保健・福祉支援システムの検討を進める。

防災人材育成学

1 災害を生きる力因子を特徴づけるパーソナリティ特性の解明(新規)

研究代表者

本多 明生(山梨英和大学 人間文化学部)

所内共同研究者

杉浦 元亮(人間・社会対応研究部門 災害情報認知研究分野)

研究の目的

研究代表者たちは、東日本大震災被災者を対象にした調査から、「リーダーシップ」「問題解決」「愛他性」「頑固さ」「エチケット」「感情制御」「自己超越」「能動的健康」からなる災害を生きる力因子を見出している(Sugiura et al., 2015)。本研究では、災害を生きる力因子を特徴づけるパーソナリティ(性格)特性の解明に取り組む。

2 ケースマネジメント支援システムを活用した伴走型生活再建支援員の標準的研修プログラムの開発と実践(新規)

研究代表者

立木 茂雄(同志社大学 社会学部)

所内共同研究者

佐藤 翔輔(情報管理・社会連携部門 災害アーカイブ研究分野)

研究の目的

被災者生活再建支援システムを活用し、生活再建に困難を抱える被災者に対する伴走型支援を進めるための標準的な研修プログラムを開発するとともに、「3.11からの学び」及び「震災教訓文献」データベースや、本システムに蓄積された対応事例データベースが、別の事例のケースマネジメント過程で検索・参照できるような防災人材育成に寄与する仕組みを構築する。

3 熊本地震被災地の企業の事業継続計画(BCP)の推進人災の育成(継続)

研究代表者

藤見 俊夫(熊本大学大学院 先端科学研究部)

所内共同研究者

丸谷 浩明(人間・社会対応研究部門 防災社会システム研究分野)

研究の概要

災害科学国際研究所の防災社会システム研究部門に蓄積されている企業の事業継続計画(BCP)及び事業継続マネジメント(BCM)の調査研究資産を活用して、熊本地震被災地の復興計画にも明示されている企業のBCPの策定推進に資する人材育成の方法を研究し、育成講座を熊本県内で試行して、その成果を踏まえ方法の検証と改善を行う。

4 学校・地域・行政の協働による地域防災力向上のための防災人材育成モデルの開発〜宮城県石巻市における「石巻モデル」構築に向けて〜(新規)

研究代表者

村山 良之(山形大学大学院 教育実践研究科)

所内共同研究者

佐藤 健(情報管理・社会連携部門 災害復興実践学分野)

研究の目的

東日本大震災の最大の被災地の一つである石巻市において、東日本大震災の教訓を踏まえて、学校防災、地域防災の融合を通じ、学校・地域・行政の連携による「地域に根ざした」地域防災力向上を目指した防災人材育成モデル、「石巻モデル」の開発を目指す。

5 東日本大震災発生後の教育行政の取組による日本の被災地及び被災懸念地域への防災教育・防災管理の改善と課題(継続)

研究代表者

藤岡 達也(滋賀大学 教育学部)

所内共同研究者

佐藤 健(情報管理・社会連携部門 災害復興実践学分野)

研究の目的

本研究では各地域の防災教育・防災管理に大きな影響を与えた東日本大震災前後の教育行政の取組とその意義を実施された教員研修や作成された副読本等を中心に探り、今後の防災教育の改善内容・方法を明確にする。さらに被災地域での教訓を活かした防災教育に関する研修プログラム等を開発・実践し、被災懸念地域で検証する。

6 地域再創生学に資する多次元総合可視化システムを用いた教育用コンテンツの開発(継続)

研究代表者

目黒 公郎(東京大学 地震研究所 生産技術研究所)

所内共同研究者

村尾 修(地域・都市再生研究部門 国際防災戦略研究分野)

研究の目的

本研究では、平成28年度共同研究成果を踏まえ、災害科学国際研究所「多次元統合可視化システム」に適した以下の二種類の防災教育用コンテンツを制作する。 (1)都市防災および復興に携わる研究者達が蓄積してきた空間情報を視覚化したコンテンツ (2)多目的ホールでの被災を対象とした体験型コンテンツ

災害科学の発展に寄与するその他の研究

1 海溝型巨大地震発生予測に資する海底地殻変動場把握のための観測点施設の共同利用およびデータの共用化(新規)

研究代表者

田所 敬一(名古屋大学・環境科学研究科)

所内共同研究者

木戸 元之(災害理学研究部門 海底地殻変動研究分野)

研究の目的

東北大学が保有する海底地殻変動機動観測システムを用いて複数の研究機関で海底地殻変動観測を実施し、観測・解析方法による精度の違いを検討するとともに共通データフォーマットを策定する。最終的にデータおよび解析方法を統合することで、従来よりも効率的かつ高精度に海底地殻変動場を把握できるようにする。

2 東北地方主要活断層帯の断層変位地形のアーカイブ化(新規)

研究代表者

石村 大輔(首都大学東京 都市環境学部)

所内共同研究者

遠田 晋次(災害理学研究部門 国際巨大災害分野)

研究の目的

断層変位地形(以後、断層地形)は、内陸大地震における重要な事前ハザード情報であり、活断層が動いた際には地震後と比較することで変位量・様式を知ることができる。しかし、現地計測によるデータの整備は進んでいない。本研究では、東北地方の主要活断層帯を対象に活断層地形のデジタルアーカイブ化を行い、同時に種々の調査を実施する。

3 地震災害後の診療継続に向けた連携構築に関する研究~熊本地震並びに東日本大震災を経験した医療施設への質問紙調査から~(継続)

研究代表者

前田 ひとみ(熊本大学大学院 生命科学研究部)

所内共同研究者

児玉 栄一(災害医学研究部門 災害感染症学分野)

研究の目的

平成28年度、熊本県内と宮城県内の医療施設を対象に震災による診療継続や支援体制への影響について面接調査を行った。今年度、この調査をさらに発展させ、震災後の診療継続に向けた医療者の連携体制について震災当時の現状とその後の体制づくりを調査し、災害時においても利用しうるBCP作成に資する要素を明らかとする。

4 携帯電話位置情報を用いた、人の移動行動の災害ダメージとその回復過程の研究(新規)

研究代表者

山口 裕通(金沢大学 自然科学研究科)

所内共同研究者

奥村 誠(人間・社会対応研究部門 被災地支援研究分野)

研究の目的

本研究では、東北大学災害科学国際研究所被災地支援研究室がライセンスを保有する、携帯電話位置情報集計データに含まれる行動の時刻暦を活用して、人の自宅・勤務先での滞在時間および、広域的な移動行動の変化を抽出し、災害による社会的影響とその回復過程の定量化の方法を研究する。

研究・実践