2019年度 共同研究助成として採択された課題を掲載いたします。
天野 真志(国立歴史民俗博物館 研究部)
佐藤 大介(人間・社会対応研究部門 歴史資料保存研究分野)
災害から歴史資料を救済するために用いられてきた諸技術について、被害種類や規模に応じた技術選択を可能にするため、乾燥・保管方法の技術検証をおこなう。特に、真空凍結乾燥法に代表される大規模設備の応用的利用法を検討し、被災地の状況に即応した技術活用のあり方について検討する。
小山 真紀(岐阜大学 流域圏科学研究センター)
柴山 明寛(情報管理・社会連携部門 災害アーカイブ研究分野)
本研究は、地区防災計画などの策定に利用できる災害アーカイブのプラットフォーム構築を目的とする。東北と岐阜県におけるモデル地域を対象として、過去の災害に関する資料を住民が主体となって収集し、災害アーカイブシステムを構築・格納する。開発したシステムを活用して防災ワークショップを開催し、効果を検証する。
田中 聡(常葉大学 大学院環境防災研究科)
佐藤 翔輔(情報管理・社会連携部門 災害アーカイブ研究分野)
本研究では、仙台市と共同で職員の災害対応のアーカイブのデータ収集・構築を継続するとともに、これまで蓄積されてきた災害アーカイブスを活用し、仙台市の職員研修を事例に、研修内容、研修方法、研修教材を検討し、プロトタイプを作成する。このプロトタイプを仙台市職員研修やセミナーで試行し、その効果を検証する。
奥村 弘(神戸大学 大学院人文学研究科)
川内 淳史(人間・社会対応研究部門 歴史資料保存研究分野)
本研究は、阪神淡路大震災と東日本大震災のふたつの大規模災害において、神戸大学・東北大学をはじめとした様々な研究機関で蓄積された被災資料レスキューの手法、破損・汚損した史料の処置や下張り文書の保全技術、史資料の記録撮影の手法などについて比較検討し、これらの技術を深化させるとともに、現在展開している東日本大震災の被災資料に対する保全およびこれらを活用した災害研究の促進をはかる。
廣内 大助(信州大学 学術研究院教育学系)
柴山 明寛(情報管理・社会連携部門 災害アーカイブ研究分野)
本研究では、東日本大震災で構築された震災アーカイブや防災教育の知見を活用し、2014年神城断層地震、2016年熊本地震の被災自治体において震災アーカイブを構築(一部運用開始)し、この自立的運用を目指した利活用方法を防災教育と生涯学習の側面から検討し、そのプログラムを試行的に実践することを目的とする。
上椙 英之(国文学研究資料館 古典籍共同研究事業センター)
蝦名 裕一(人間・社会対応研究部門 災害文化研究分野)
本研究では、現在津波碑を対象として構築中の東北大学災害科学国際研究所の「ひかり拓本データベース」のデータの対象を、津波碑以外の水害碑や飢饉碑といった自然災害伝承碑全般に拡大し、北海道から東北地方にかけての総合的な自然災害伝承碑のデータベースとして拡充することを目的とする。
松田 正己(東京家政学院大学 人間栄養学科)
柴山 明寛(情報管理・社会連携部門 災害アーカイブ研究分野)
東日本大震災で効果を発揮したとされる東北地方の保健師の防災ガイドラインの特徴を、「震災時における運用の『実態』」と「平常時の保健活動の『あり方』」の両面から明らかにする。『実体』については「みちのく震録伝」と現地調査から再構築を試みる。『あり方』については地域保健活動が活発なタイとの比較を試みる。
有川 太郎(中央大学 理工学部)
門廻 充侍(災害リスク研究部門 津波工学研究分野)
津波統合モデルが開発されたことにより、津波による複合的で複雑な津波挙動・被害を再現することが可能となった。本研究では、開発した津波統合モデルを活用し、津波による漂砂現象のバラツキを評価し、地形変化を確率的に評価する手法を検討する。そして、南海トラフ巨大地震津波を対象に、提案手法の検証を行う。
菅原 大助(ふじのくに地球環境史ミュージアム 学芸課)
サッパシー アナワット(災害リスク研究部門 津波工学研究分野)
本研究では、災害研が所有する計算機及び分析機器を活用することにより、千島海溝から日本海溝にかけての古津波履歴と規模を高精度かつ迅速に推定する手法の検討を行う。これは、申請者らのこれまでの実績の上に立脚したものであり高い研究成果と防災への貢献が見込める。
山﨑 達也(新潟大学)
佐藤 翔輔(情報管理・社会連携部門 災害アーカイブ研究分野)
津波発生時に迅速な避難を促すために、公共交通機関と無人航空機を組み合わせた局所的な避難情報の伝達手段を検討する。マルチエージェントシミュレーションを用いて、提案手法の有効性を統計的に検証した後、新潟市を対象とした避難誘導計画の策定を行う。
高橋 智幸(関西大学 社会安全学部)
門廻 充侍(災害リスク研究部門 津波工学研究分野)
津波統合モデルが開発されたことにより、津波による複合的で複雑な津波挙動・被害を再現することが可能となった。本研究では、開発した津波統合モデルの利活用と展開(既存技術の高度化、機能拡張)および既存技術の改善に焦点を当て、巨大地震津波を対象に津波複合被害を検討する。
高瀬 慎介(八戸工業大学 工学部 土木建築工学科)
寺田 賢二郎(地域・都市再生研究部門 計算安全工学研究分野)
三陸沖北部地震を想定した八戸市における津波遡上解析は自治体を中心に検討が行われている。本研究では災害シミュレーションのプラットフォームであるX-GISを用いて、構造物を考慮した津波遡上解析を行い、八戸市における津波遡上被害の検討を行う。また、八戸市における都市のレジリエンスデザインについても検討を試みる。
大石 裕介(富士通研究所 人工知能研究所)
今村 文彦(災害リスク研究部門 津波工学研究分野)
迅速かつ安全な津波対策の実現に向けて、人工知能とシミュレーションのモデル化による災害の状況をリアルタイムに写像し、近未来の災害状況を可視化する災害デジタルツインを川崎市臨海部において構築し、災害時の適切な避難誘導を含む対策を可能にする次世代防災システムの検討を産学官共創により進める。
坪内 暁子(順天堂大学 大学院医学研究科 研究基盤センター)
佐藤 健(情報管理・社会連携部門 災害復興実践学分野)
本研究では、大川小の教訓等を受け、「防災ミニマム・エッセンシャルズ研修」の確立を目指し、1)災害発生直後の避難誘導・避難所受入れ、2)避難所生活、での関連死・重症化等、特に身体的弱者等の被害低減に向けて、深刻な被害が予測される国際都市「東京・台北の私立校教職員」への感染症等の知識に関する調査を実施する。
野崎 裕之(大東文化大学 スポーツ・健康科学部 看護学科)
児玉 栄一(災害医学研究部門 災害感染症学分野)
東日本大震災地域(宮城・福島県)と熊本地震地域(熊本県)にて、精神病棟を有する総合病院および精神科単科病院を対象に、災害時発生した感染症の問題点と講じた対策の実態を面談調査し、課題を明らかにする。それを踏まえて精神科病棟における感染症対策マニュアルの構築・整備を目指す。
盛武 敬(産業医科大学 産業生体科学研究所)
千田 浩一(災害医学研究部門 災害放射線医学分野)
申請者らはこれまでに、i-STrap法を用いた血中抗酸化能の測定により、急性放射線被ばくの線量を事後に推定することに成功し、それをトリアージ指標として利用できることを明らかにした。本研究では、福島原発事故で問題となっているような慢性的な放射線被ばくにおいても、i-STrapによる被ばく線量の推定が可能かを明らかにする。
浅井 光輝(九州大学)
富田 博秋(災害医学研究部門 災害精神医学分野)
3D津波遡上解析の結果をベースとしたVR津波体験装置を用いた仮想的な被災体験を通して、災害規模と侵襲性の感度(ストレスの感じやすさ)をモニタリングする。また、心理ストレスのモニタリング結果を、過去の被災経験、年齢層、地域性ごとに整理・分析することで、各個人に適した合理的な避難訓練を模索し、逃げ遅れゼロの実現を目指す。
杉浦 広幸(福島学院大学 短期大学部 保育学科)
千田 浩一(災害医学研究部門 災害放射線医学分野)
福島県北部を中心に、庭木表面に付着している放射性セシウムを含む不溶性汚染粒子(セシウムボール)について、イメージングプレート法とSEMを用いて調査する。それらの汚染粒子が、どの地域に、樹木のどの部位・樹種にどのくらい不着しているかを調査する。得られた調査結果から、汚染粒子の吸引等による取り込みによる被ばくリスクを予想する。
田久 昌次郎(いわき短期大学 生涯教育研究所)
今村 文彦(災害リスク研究部門 津波工学研究分野)
幼児教育科学生の防災意識を育むには「正統的周辺参加論」を基調とした地域住民との連携ならびにコミュニケーションツールとしてのWeb-GISが不可欠と考え、防災教育を実施している。本研究では、「多次元統合可視化システム」による防災教育用コンテンツを作製し、防災意識の変容を中心に防災教育効果の検証を行う。
林田 由那(早稲田大学)
佐藤 健(情報管理・社会連携部門 災害復興実践学分野)
本研究は、宮城県の公立学校において実施されている避難訓練について、学校・行政・研究者の協働により共通の評価の指標を開発し、当該指標に基づき県内全校・園の避難訓練を評価し、更にそれを三者が平素から協働し持続可能な形で改善していくことで、学校を拠点に地域の防災人材の育成に寄与することを目指すものである。
桜井 愛子(東洋英和女学院大学 国際社会学部)
佐藤 健(情報管理・社会連携部門 災害復興実践学分野)
本研究では、地形図、ハザードマップ、災害記録アーカイブ等を活用した学校区の災害リスク理解のための教員研修/評価モデルを開発する。教員が学校区の災害リスクを理解することは、地域に根差した学校防災の必須要件である。研修経験を学校防災の改善に活用することにより、実践的学校防災の推進に寄与することを目指す。
本多 明生(静岡理工科大学 情報学部 情報デザイン学科)
杉浦 元亮(人間・社会対応研究部門 災害認知科学研究分野)
大規模災害では、復興事業の長期化に伴い、被災者間で生活再建のスピードに差が生じる傾向がある。本研究は、東日本大震災被災者の住宅再建に寄与した災害に生きる力因子(Sugiura et al., 2015)を検討し、 その災害を生きる力因子が住宅再建になぜ寄与するのかという原理の説明をパーソナリティ心理学の見地から行う。
立木 茂雄(同志社大学 社会学部)
佐藤 翔輔(情報管理・社会連携部門 災害アーカイブ研究分野)
被災者向けに開発した現行の生活再建支援システムを、被災前の高齢者や障がい者などの要配慮者の災害時ケアプランづくりにも活用できるデータベースにアップグレードし、「3.11からの学び」や「震災教訓文献」、今後蓄積されていく対応事例などからのエビデンスに基づいた福祉防災人材育成研修プログラムを開発する。
冨永 良喜(兵庫県立大学 大学院 減災復興政策研究科)
定池 祐季(情報管理・社会連携部門 災害復興実践学分野)
本研究では、東日本大震災と胆振東部地震の被災地における心のケアと防災教育を融合した授業実践の有効性と課題を明らかにする。申請者らは東日本大震災以降当該プログラムの開発と実践に携わっており、アンケート調査と面接調査から個々の評価と被災地間の比較を行い、より汎用的なプログラムへと発展させることを目指す。
森 太郎(北海道大学 大学院工学研究科)
定池 祐季(情報管理・社会連携部門 災害復興実践学分野)
本研究では、地域に内在化する災害に関する生活知を共有し伝承する仕掛けとして、地域住民が参加し資料調査とまちあるき、マッピングとlocalwikiの更新をセットとした「災害Wikipediaタウン」というワークショップの手法を開発し、その有効性を明らかにする。
大葉 隆(公立大学法人福島県立医科大学 医学部 放射線健康管理学講座)
千田 浩一(災害医学研究部門 災害放射線医学分野)
原子力災害において、放射線防護に関する防災教育という観点が重要となる。本研究は現在の高校生の放射線被ばくにおける健康影響への認識と福島の復興への意識を調査することを目的とする。ここから、次世代のための原子力災害の放射線に関する教育(放射線防護に関する防災教育)のヒントをひも解きたいと考える。
西山 昭仁(東京大学地震研究所 地震予知研究センター)
蝦名 裕一(人間・社会対応研究部門 災害文化研究分野)
本研究では、地域の歴史災害を取り扱った郷土資料や、教育現場における防災教育で用いられる教科書・副読本などにある災害関連情報を収集・分析する。また、学校教育や地域の防災セミナーなどでのそれらの活用事例について、関係者からヒヤリングなどを実施し、地域における災害の記憶・教訓と今日の地域の防災力との関連性を検討する。
奥野 充(福岡大学 理学部)
遠田 晋次(災害理学研究部門 活断層研究分野)
地震動による斜面崩壊ハザードを評価するために、北海道厚真町と九州阿蘇カルデラで斜面を覆う火山性堆積物の物性変化を評価する。両地域とも実際に斜面災害が発生したが、気候や堆積環境は異なる。地震動で崩壊する可能性のある体積を見積もり、土砂到達範囲を推定する。これによってハザードマップの精緻化を目指す。
小田 隆史(宮城教育大学)
佐藤 翔輔(情報管理・社会連携部門 災害アーカイブ研究分野)
本研究は、発災直後に現地に往訪し被災者から取材やフィールド調査を行う報道関係者や大学研究者が、被災者の人権や心情にどのような配慮をしながらかかわるべきかについて考察する。共同研究者が運営主体となっている「みやぎ「災害とメディア」研究会」でのこれまでの討議を整理し、フォローアップ調査を通じて実証する。
知北 和久(北海道大学 北極域研究センター)
三浦 哲(災害理学研究部門 火山ハザード研究分野)
2013年以来活動度の高い状態が続いている蔵王山で、現在は活動がないとされる火口湖「御釜」の水・熱・化学物質収支を定量的に求め、地下水系の動的状態を探る。これにより、現在および今後の蔵王火山の活動度評価に資するとともに、物理観測で得られた地下構造との対比や、発生が懸念される火山泥流の検討に有用な情報を得る。
寅屋敷 哲也(ひょうご震災記念21世紀研究機構 人と防災未来センター)
丸谷 浩明(人間・社会対応研究部門 防災社会システム研究分野)
東日本大震災の後、沿岸部の一部地域に建築制限が実施され、かつ土地のかさ上げ事業が行われた宮城県の北部沿岸市町を対象として、同制度・事業の考え方や実態を把握し、これら区域に所在していた被災企業への現地での復旧・復興への支障を明らかにし、将来の津波被災地の行政が産業の復旧・復興に対して配慮すべき点等を分析する。
市野 美夏(情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 人文オープンデータ共同利用センター)
佐藤 大介(人間・社会対応研究部門 歴史資料保存研究分野)
東日本太平洋側では、「やませ」などの北東流の影響による冷夏が凶作などの被害をもたらすことがある。東北太平洋側の歴史資料に記録された天気情報と気象災害を利用し、天気情報を気象数値予報モデルでデータ同化し、水戸で低温傾向がみられた1857年および1858年夏季の気候場復元を目指す。