研究・実践

東北大学災害科学国際研究所 特定プロジェクト研究【共同研究】:採択課題

東北大学災害科学国際研究所の使命は、東日本大震災における調査研究、復興事業への取り組みから得られる知見や、世界をフィールドとした自然災害科学研究の成果を社会に組み込み、複雑化する災害サイクルに対して人間・社会が賢く対応し、苦難を乗り越え、教訓を活かしていく社会システムを構築するための「実践的防災学」の体系化とその学術的価値の創成である。

そこで、東北大学の英知を結集して被災地の復興・再生に貢献するとともに、国内外の大学・研究機関と協力しながら、自然災害科学に関する世界最先端の研究を推進するために、特定プロジェクト研究の募集を行った。

特定プロジェクト研究は、東北大学災害科国際研究所内で推進する【拠点研究】と、所外の者等で推進する【共同研究】がある。ここでは、平成24年度特定研究プロジェクト【共同研究】として採択された研究課題を掲載する。

平成24年度の【共同研究】は、研究種目Aが申請34件のうち19件が採択され、研究種目Bが申請47件のうち39件が採択された。

共同研究 研究種目A

A-1年稿による巨大地震と津波の周期性の解明

研究代表者

安田 喜憲(東北大学大学院環境科学研究科)

所内共同研究者

平川 新

所外共同研究者

土屋 範芳(東北大学)、須藤 考一(東北大学)、渡辺 隆広(東北大学)、吉田 明弘(東北大学)、山田 和芳(早稲田大学)、斉藤 めぐみ(国立科学博物館)、瀬戸 浩二(島根大学)、原口 強(大阪大学)

研究の概要

年縞は日本の湖底にきわめて連続的に堆積し、環境史を年単位で高精度に記録している堆積物である。年縞は年輪と同じく正確な時間軸を提供し、しかも巨大地震はタービダイト層として、津波は津波堆積物として年縞の中にパックされていることが明らかとなった。この年縞堆積物を東北地方の湖底から採取し、タービダイト層と津波堆積物の間に挟まれる年縞堆積物の枚数を正確に数えることによって、巨大地震と津波の周期性を解明し、近未来の巨大地震と津波襲来の予測をする。さらに年縞堆積物からは季節性が解明できる。巨大地震や津波がいつの季節に、いかなる気候の時代に引き起こされ、いかなる環境変化をもたらしたかも年縞堆積物の中に含まれる微化石や地球化学的分析結果から解明できる。この年縞堆積物に記録された地震や津波さらに洪水が、歴史記録に残っているかどうかの対応関係を解明し、近未来の防災対策に役立てる。

A-2小型水中ロボットによる会津地域の湖底の放射能汚染調査

研究代表者

高橋 隆行(福島大学理工学群共生システム理工学類)

所内共同研究者

越村 俊一

所外共同研究者

難波 謙二、後藤 和久(千葉工業大学)、原口 強(大阪市立大学)、佐々木 幹夫(八戸工業大学)

研究の概要

線量計ならびに湖の底質の採取機能を有する小型水中ロボットを用いて、福島県会津地域にある4湖(猪苗代湖・檜原湖・秋元湖・小野川湖)の湖底に沈着している放射能濃度の面的マップ作成調査を行う。これら4湖で産する淡水魚のいくつかは2012年4月より出荷が停止されている。これは山林からの放射性物質が、雪解け水などの影響によりこれらの湖に集まってきていることが原因の一つとして想定される。本調査で得られるデータは、雨による放射性物質の動態研究の重要な基礎データとなるものと期待される。

A-3災害時における避難所運営システムモデルの構築

研究代表者

水田 恵三(尚絅学院大学総合人間科学研究科)

所内共同研究者

佐藤 健

所外共同研究者

西道 実(奈良大学)、清水 裕(昭和女子大学)、田中 優(大妻女子大学)、元吉 忠寛(関西大学)、堀洋 元(大妻女子大学)、池田 和浩(尚絅学院大学)、阿留多伎 眞人(尚絅学院大学)

研究の概要

我々の研究組織はSTEP(Simulation Training of Earthquake Shelter Program:避難所運営シミュレーショントレーニング)を開発し、自治体職員や地域住民に対するトレーニングを行ってきた。STEPは阪神淡路大震災のデータに基づいて作成されたため、本研究はSTEPを東日本大震災の実際のデータに基づいて修正するためのデータを集積する。そのため東日本大震災後の避難行動、避難所の開設から解散(閉鎖)までのデータを学校、公民館、その他公共施設の職員などを対象に避難所運営に関して面接調査した結果を集積し、ナレッジベースにデータを整理し、避難所運営システムモデルの構築を行う。

A-4福島県における歴史資料の保全と学術的活用を目的とする地域連携に基づく現況調査と防災的保全システムの構築に関する研究

研究代表者

阿部 浩一(福島大学人文社会学群行政政策学類)

所内共同研究者

佐藤 大介

所外共同研究者

阿部 浩一(福島大学)、菊地 芳朗(福島大学)、徳竹 剛(福島大学)、三宅 正浩(福島大学)、本間 宏(福島県)、高橋 充(福島県立博物館)、阿部 俊夫(郡山女子大学)

研究の概要

本研究は、3・11東日本大震災を機に本格的に始まった福島県での歴史資料保全活動による経験と実績を基礎に、原発災害と放射能汚染によって未だ復旧・復興の見通しの立たない中で、解体・消滅の危機に瀕している福島県内諸地域の伝統文化・歴史遺産を保全し、その文化的・学術的価値を地域住民とともに創出・共有しながら、未来へと継承していくための実践的方法論を、先駆的業績をあげてきた東北大学災害国際研究所・歴史資料保全研究分野との共同研究によって構築しようとするものである。本研究では、その手始めとして歴史資料、中でも個人蔵の多い古文書類を中心に、1)県内の歴史資料所在情報集約システムの構築のための現況調査、2)自治体・博物館・郷土史研究会等との連携による現況追跡調査の実践、3)被災資料の記録化と歴史資料の伝来状況の分析、4)シンポジウムによる情報共有と啓発活動、を研究内容とする。これらを有機的に連関させることで、福島県において立ち遅れている文化面での復旧・復興事業だけでなく、将来的な災害時にあっても、歴史資料保全活動を軸とした地域文化の継承という面から貢献をはたしていくための社会的システムづくりをめざすものである。

A-5地域在住高齢者における災害弱者スクリーニングと支援システムの設計

研究代表者

目黒 謙一(東北大学医学系研究科)

所内共同研究者

富田 博秋

所外共同研究者

赤沼 恭子(東北大学)、中塚 晶博(東北大学)、中村 馨(東北大学)、千葉 正典(登米市民病院)

研究の概要

東日本大震災の際、地域で発見した要支援者の多くが、情報不足の下、適切な判断が出来ず混乱していた、健常と認知症の境界状態、軽度認知障害高齢者であった。今回、地域在住高齢者における災害弱者のスクリーニング指票を作成し、災害弱者の割合を明らかにする。そして、脳MRI検査所見との関連を検討する。医学的に妥当な検査により災害弱者の予見を可能にし、自治体における医療機関や福祉避難所など「受け皿」とのマッチング等、「対策マップ」作成の一助とする。

A-6大規模災害に対する保健医療災害対応マニュアルの整備と標準化に関する研究

研究代表者

上原 鳴夫(東北福祉大学)

所内共同研究者

江川 新一、服部 俊夫、佐藤 健

所外共同研究者

小井土 雄一(国立病院機構災害医療センター)、甲斐 達朗(済生会千里病院救命救急センター)、大友 康裕(東京医科歯科大学)、石井 美恵子(日本看護協会看護研修学校)、坂元 昇(川崎市)、金谷 泰宏(国立保健医療科学院)、仲佐 保(国立国際医療研究センター)、高田 洋介(人と防災未来センター)

研究の概要

東日本大震災の経験と教訓及び海外事例の分析を通じて、広域大規模災害時に被災者のいのちと健康をまもるために災害前に備えておくべきことを明確にし、これを踏まえて、各自治体や関係機関・支援団体が共有すべき災害対応計画と実践的な災害対応マニュアルの体系化およびこれに必要な態勢とツール類の基本案を策定して提言する。またこれらの標準化と共有化の方法について実践的に検証する。

A-7低線量被ばく環境下における心理的ストレスが幼児・児童と保護者に与える影響

研究代表者

筒井 雄二(福島大学理工学群共生システム理工学類)

所内共同研究者

富田 博秋

所外共同研究者

高谷 理恵子(福島大学)、高原 円(福島大学)、富永 美佐子(福島大学)

研究の概要

福島県における原発被害に起因するとみられる子どもたちの心理的ストレスへの対処が急務となっている。我々は原発事故直後から福島県内で児童・幼児とその保護者を対象にストレス調査を行ってきた。その結果、放射線量の高い地域で保護者と子どもに高いストレスがみられ、低年齢児ほどストレスが高いこともわかった。本研究では、福島県内の児童・幼児とその保護者を対象とし、低線量被ばく地域で生活する彼らの心理的ストレスの強度と質を行動的に評価し、状況の推移を観察するとともに、自治体が取り組むストレス対策プログラムに実験的に介入し効果的ストレス対処法を検討する。

A-81578年千軒台大洪水の検証と海跡湖沼堆積物による古津波の検出

研究代表者

箕浦 幸治(東北大学大学院理学研究科)

所内共同研究者

平川 新、蝦名 裕一

所外共同研究者

平野 信一(東北大学)、山田 努(東北大学)、根本 直樹(弘前大学)、杉原 真司(九州大学)

研究の概要

「1578年夏、千軒の集落を成す尻屋村が洪水により流失した」とする記述がある。大洪水の記録は水災害論的に注目すべき史料である。下北半島の太平洋岸には海の痕跡を留める海跡湖沼が点在しており、こうした湖沼の1つである大沼から、かつて古津波あるいは洪水の痕跡が多数発見されている。何れも歴史資料に留められる自然災害であり、海跡湖沼系は古津波記録計として有用な自然環境であると考えられる。我々は、六ヶ所村尾駮沼において堆積コアを採取し、堆積物解析により古津波を検出する計画を立案した。

A-9津波荷重評価に基づく建築物の耐津波性能評価および津波被災建築物の被災度区分判定技術の確立

研究代表者

西田 哲也(秋田県立大学システム科学技術学部)

所内共同研究者

今村 文彦

所外共同研究者

前田 匡樹(東北大学)、中埜 良昭(東京大学)、高橋 典之(東京大学)

研究の概要

申請者らは2011年東北地方太平洋沖地震に際し、その発生直後から被害調査を行うとともに、津波避難ビルを対象とした設計用荷重のレベル設定について検討を重ねてきた。本研究では、今回の震災を教訓に対象を一般的な建築物にまで拡大し、被災後の現地調査結果の分析および実験的・解析的検討を踏まえ建築物に対応する津波荷重評価モデルに基づき、建築物の耐津波性能評価手法および津波被災建築物の被災度区分判定技術の確立を目指すものである。

A-10東日本大震災被災地在住高齢者を対象とした園芸療法を用いた生活介入実証研究

研究代表者

事崎 由佳(東北大学加齢医学研究所)

所内共同研究者

富田 博秋、杉浦 元亮(兼任)

所外共同研究者

川島 隆太(東京大学)、荒木 剛(東北大学)、関口 敦(東北大学)

研究の概要

本研究は、東日本大震災で甚大な被害を受けた被災地域在住の高齢者を研究対象とした、園芸療法を用いた生活介入(園芸介入)により、心身機能の改善や心的外傷後ストレス(PTSD)低減の効果を実証することである。園芸療法は日本では主に高齢者や障害者を対象に病院や施設で広く取り組まれており、植物に触れることによる心理的効果は示唆されているが、医学的な効果についてはまだ明確になっていない部分が多く存在する。そこで、園芸療法を用いた生活介入による脳や心身機能への効果について、神経科学・心理学・免疫学の観点から実証する。

A-11災害拠点病院BCP策定に向けたimpactanalysis災害拠点病院の業務継続計画に関するガイドライン策定に向けた宮城県災害拠点病院全施設調査

研究代表者

中川 敦寛(東北大学病院)

所内共同研究者

江川 新一

所外共同研究者

古川 宗(東北大学)、工藤 大介(東北大学)、松村 隆志(東北大学)、山内 聡(東北大学)、阿部 喜子(東北大学)、岡本 智子(東北大学)、久道 周彦(東北大学)、鷲尾 利克(産業技術総合研究所)、荒船 龍彦(東京大学)、小西 竜太(ハーバード大学)、久志本 成樹(東北大学)、冨永 悌二(東北大学)、Richard Aghagabian(Massachusettes Medical Society)、Stephanie Kayden(ハーバード大学)

研究の概要

本研究は、災害における医療の基盤である災害拠点病院の事業継続計画(business continuity plan: BCP)に関する国レベルの指針の将来的な策定に向け、モデルケースとなり得る東北大学病院におけるBCPの策定への提言を製作することである。災害拠点病院では受け入れ(トリアージ)、域内治療、重症者の域外搬送と最甚大被災地域への医療支援が重要業務となるが、現在、国レベルでの具体的な指針はなく、海外からも包括的、かつ、具体的な国レベルの指針策定の必要性が指摘されている。本研究組織では、すでに宮城県下全県調査(全72二次、三次医療機関対象:偶発性低体温症、情報通信)を施行した実績をもつ。研究期間内に、調査ならびに多業種による検討を行い、論文発表はもちろん、行政・産業界との連携も視野に入れた具体的、かつ根拠のある提言としてまとめる。

A-12大規模災害後の胎児、新生児への健康影響に関するゲノムコホート研究と妊婦のメンタルヘルスケア

研究代表者

有馬 隆博(東北大学医学系研究科)

所内共同研究者

富田 博秋、伊藤 潔

所外共同研究者

菅原 準一(東北大学)、佐藤 喜根子(東北大学)、坂本 修(東北大学)

研究の概要

東日本大震災の被災地では、妊婦への長期にわたる栄養、運動、心因性ストレス等のマイナスの生活習慣が、妊娠予後や、児の発育に重大な影響を及ぼし、その結果、未熟児や身体•知的障害児および産褥期うつ病の増加とその後のケアについて危惧されている。特に災害復興期においては、精神障害分野における睡眠障害、フラッシュバック、PTSD症状が現れ、それに継続するうつ病、アルコール関連問題等に対し、機動性や専門性を生かした、効果的研究に基づく福祉的支援が必要である。本研究では、被災地の低出生体重児における身体的発育、発達に加え、特に認知行動面をも含む観察調査を子どもの成長のマイルストーンに照らし戦略的に把握するとともに、ゲノム解析を追加して環境適応の視点を考慮した縦断的な観察研究を行い、被災状況との因果関係について検討する。同時に自治体と連携した保健指導による管理と指導とその効果について検証する。

A-13岩盤斜面の3次元安定度評価システムの開発

研究代表者

京谷 孝史(東北大学大学院工学研究科)

所内共同研究者

寺田 賢二郎、加藤 準治

所外共同研究者

岩熊 哲夫(東北大学)、斉木 功(東北大学)、山田 真幸(東北大学)

研究の概要

先に起こった東日本大震災では、山間部を中心にいくつかの斜面崩壊が発生し、運搬車両の通行を妨げるなどの問題がみられた。そのため、事前に危険性の高い場所を特定し、詳細な調査と地山の安定度解析を行いながら対策をしておくことが肝要である。しかし、岩盤斜面の安定性については、例え妥当な地山調査が行われたとしても、場所によっては岩盤内に存在する多数の不連続面の方向や位置、特にその規模と地山全体の地形によって大きく異なり、定量的な岩盤斜面安定性の評価予測は困難である。そこで、本研究では、GIS を用いて3 次元の地山全体の地形情報を取得し、さらに不連続面の規模に応じて安定度評価予測法を適宜に使い分ける、一連の安定度評価システムのプロトタイプを開発する。

A-14具体的震災対策提言を目指した災害文化の研究

研究代表者

阿部 恒之(東北大学大学院文学研究科)

所内共同研究者

平川 新、今村 文彦、佐藤 翔輔

所外共同研究者

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研究の概要

雪国では毎年3mの積雪があっても災害にならないが、東京に50cm積もれば災害になる。すなわち、備えがあれば「災害」は災害にならない。この歴史的に蓄積された備えの知恵が災害文化であろう。(A)豪雪地帯と他地域の比較で雪害文化を、(B)江戸と同時代の他地域、江戸と今の東京の比較で火災文化を見出すことによって方法論を確立し、この方法を適用して(C)地震・津波の高頻度地域と低頻度地域との比較で地震・津波文化を見出す。これを延長・拡大することで、次の大震災に備えるための具体的提言を行うことを目指す。

A-15半島部漁業集落のくらしの再・創生のための研究及び実践活動

研究代表者

福屋 粧子(東北工業大学工学部建築学科)

所内共同研究者

平野 勝也、今井 健太郎、小野田 泰明(兼任)、本江 正茂(兼任)

所外共同研究者

土岐 文乃(東北大学)、小嶋 一浩(横浜国立大学)、貝島 桃代(筑波大学)、塚本 由晴(東京工業大学)、渡辺 真理(法政大学)、ヨコミゾ マコト(東京芸術大学)、山中 新太郎(日本大学)

研究の概要

本研究は、震災で壊滅的被害を受けた石巻市半島部40集落を対象に、自然災害と常に向き合い共生してきた半島部漁業集落のくらしと質の高い生活空間の再・創生のための効果的な事業、規制、誘導に寄与することを目的として、研究所内の土木・防災・計画分野の研究者等と連携しつつ、全国の大学研究室の協力で得る全集落の網羅的かつ詳細な調査データをもとにした半島部の実践的まちづくりを、実践的防災学の一部として研究する。また研究/復興支援実践活動のフィードバックのなかで、研究成果の複数地域での半島部復興事業計画への反映を行う。

A-16東北地方太平洋沖地震津波で被災した宮城県松島湾の海底環境の被災状況把握と環境修復・影響評価に関する研究

研究代表者

西村 修(東北大学大学院工学研究科)

所内共同研究者

今村 文彦

所外共同研究者

長尾 正之(産業技術総合研究所)、鈴木 淳(産業技術総合研究所)、田中 裕一郎(産業技術総合研究所)、入月 俊明(島根大学)、河潟 俊吾(横浜国立大学)(東北大学)

研究の概要

大津波で海底環境が大きな被害を受けた宮城県松島湾に着目し、津波で生態系が流出されなかった場所と流出してしまった場所の違いを調査するため、環境地質学的視点から津波堆積物を採取し指標生物(貝形虫・底生有孔虫を予定)群集組成や粒度分布等により、被災前後の環境変動解析を行う。また、海洋生態工学的視点から海底付着藻類、海水温・塩分を調査する。そして、津波や高潮などの沿岸域激甚災害後の健全な海底環境復元に必要な提言ををまとめる。

A-17RC橋脚の損傷度に対応した地震動強度指標の開発とその振動台実験による検証

研究代表者

鈴木 基行(東北大学大学院工学研究科)

所内共同研究者

越村 俊一

所外共同研究者

内藤 英樹(東北大学)、松﨑 裕(東北大学)

研究の概要

本研究では、地震後における構造物の被害状況の迅速かつ適切な評価・把握を図るための基礎的研究として、i) RC橋脚の非線形応答特性を反映させ、最大応答水平変位や損傷度に直結したより精緻な地震動強度指標を開発する。ii) 振動台実験を行い、開発する地震動強度指標に基づく構造物の応答変位の推定精度を検証する。さらに、iii) 外観では判断しにくい損傷を評価するための非破壊検査技術の確立に向けた検討を併せて行う。これらを基礎として、入力地震動特性から構造物の応答・損傷までを体系的に評価・検査できる枠組を構築する。

A-18大規模災害ストレスによるアルコール依存の形成・病態機序の解明

研究代表者

曽良 一郎(東北大学大学院医学系研究科)

所内共同研究者

富田 博秋

所外共同研究者

笠原 好之(東北大学)

研究の概要

本研究は大規模な被災ストレスがアルコール依存の罹患に関与しているメカニズムを、臨床疫学知見を十分に勘案した動物モデル研究を行うことにより解明し、被災者の健康とこころのケアに資することを目的とする。薬物依存およびストレスの動物モデル研究を推進してきた研究代表者と東日本大震災の被災地の疫学臨床調査研究に取り組んでいる分担研究者が協働し、動物モデルを用いて大規模災害によるアルコール依存の発症・再発の機序を明らかにすることにより、被災者の健康と適切なこころのケアに貢献する。

A-19重金属汚染除去のための金属吸着タンパク質細胞表層提示技術の開発とバイオリソースの集積化

研究代表者

久保田 健吾(東北大学大学院工学研究科)

所内共同研究者

佐藤 翔輔

所外共同研究者

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研究の概要

自然災害時に生じる重金属汚染は、低濃度かつ広範囲におよぶ場合が多く、凝集・吸着剤などを用いる方法が適さない場合が多い。このような低濃度汚染には生物学的な処理方法が有効であると言われているが、実際に適用可能な技術は殆どないのが現状であるため、自然災害によって起こりうる汚染からの早急な回復が困難な場合が多い。そこで本研究では、自然災害によって生じる人間活動を脅かす様々な汚染に速やかに対応可能な要素技術 (災害対応技術)として、生物学的重金属汚染除去システムを構築することを目的とし、特定の金属を吸着するタンパク質を、バイオテクノロジーを用いて細胞表層に提示する技術を開発する。また、新規金属吸着タンパク質を獲得するための、バイオリソースの集積を行う。

共同研究 研究種目B

B-1物語としての震災体験談の分析と記憶に関する研究

研究代表者

細川 彩(仙台青葉学院短期大学ビジネスキャリア学科)

所内共同研究者

邑本 俊亮

所外共同研究者

斉藤 順子(医療法人社団千葉医院)

研究の概要

本研究では、東日本大震災が発生の際、過去に聞いた被災体験により適切な避難対応をすることで被害者を出さなかった宮城県南三陸町戸倉小学校の教訓に着目し、どのような被災体験の語りが人々の心に強い痕跡を残すのかを検証するため、1。被災者の語りの収集と分析、2。語りを材料とした記憶実験を実施する。そのために、今年度は、実際に被災者から生の語りをデータとして収集し、その内容を分析し、次年度に実施する記憶実験の刺激テキストとして再構成することを目的とする。

B-2情報通信技術とロボット技術を利用した養殖業復興支援システムの開発

研究代表者

松野 文俊(京都大学工学研究)

所内共同研究者

柴山 明寛、田所 諭(兼任)

所外共同研究者

木村 哲也(長岡技術科学大学)、畑山 満則(京都

研究の概要

世界三大漁場の1つと数えられる三陸沖は、日本の水産業の中核をなす漁場であったが、東日本大震災での津波被害により大きな打撃を受けた。本研究では、被害の激しかった南三陸町志津川湾、歌津湾での養殖業の復興支援を目的とし、水中ロボットを用いた湾内の海底状況の調査を行い、GISをベースとする漁場管理システムの開発と防災計画検討への利用に関する研究を行う。また、現在進行形の復興現場である宮城県漁協志津川支所、歌津支所と連携することで、実際の復興足跡のデータベース化も行う。

B-3不均質地殻構造を考慮した東北地方太平洋沖地震の地殻変動・津波生成のモデル化-隣接域の地震発生の可能性評価-

研究代表者

伊藤 喜宏(東北大学大学院理学研究科)

所内共同研究者

飯沼 卓史

所外共同研究者

日野 亮太(東北大学)、武藤 潤(東北大学)、芝崎 文一郎(建築研究所)、藤井 雄士郎(建築研究所)

研究の概要

東北地方太平洋沖地震のすべり過程に関して、地殻変動や津波データを使った解析が行われているが、これまでの解析では、主に半無限弾性媒質を仮定した解析である。本研究では、地殻、最上部マントル、スラブ、海底地形の3次元的な不均質構造を考慮した有限要素法モデルを用いて、地殻変動及び津波生成シミュレーションを行う。飯沼・他(2012)により余効すべりの解析が進められているが、本シミュレーションで粘性緩和過程を評価して、余効すべりの解析を行う。また、3次元的な不均質構造を考慮した津波生成のモデル化を行い、逆解析により津波を生成したすべり分布を求める。これらの研究を通じて、地震時すべり、余効すべりを推定して、隣接域の地震発生の可能性を評価すると共に、地震時に沈降した沿岸部の地殻変動(隆起量)を評価し、港湾設備・沿岸集落等の再生に有用な知見を得る。

B-4震災後精神症状の脆弱性因子/獲得因子/回復過程の心理・神経基盤及び遺伝的背景の解明

研究代表者

関口 敦(東北大学加齢医学研究所)

所内共同研究者

富田 博秋、杉浦 元亮(兼任)

所外共同研究者

川島 隆太(東北大学)、事崎 由佳(東北大学)、竹内 光(東北大学)、瀧 靖之(東北大学)

研究の概要

東北大学加齢医学研究所で管理している、東日本大震災前の脳画像データベースを利用し、縦断的に震災約1年後の精神症状、心理特性、脳形態画像、ゲノム解析を行うことで、震災ストレスが脳形態に与える影響を特定し、更に震災ストレスからの回復過程の心理・神経基盤および遺伝的背景を解明する。

B-5地盤変状に起因する送電鉄塔および基礎の損傷後余耐力

研究代表者

山川 優樹(東北大学工学研究科)

所内共同研究者

寺田 賢二郎、加藤 準治

所外共同研究者

池田 清宏(東北大学)、田村 洋(東北大学)

研究の概要

地震等による地盤変状に起因する送電鉄塔の倒壊事故が発生しており、電力インフラの基盤施設である鉄塔・基礎構造物の損傷の事前評価と損傷後の健全性評価手法の確立が望まれている。本研究では、地盤変状に起因する基礎不同変位および支持力低下と、それに伴う鉄塔の損傷および耐荷力低下を定量評価し、損傷を受けた地盤-基礎-鉄塔系の健全性・余耐力評価手法を確立する。損傷後の終局耐荷特性を明らかにし、災害後の修繕の要否や優先度を判断するための損傷度判定基準の策定に必要な工学的知見を整備し、災害後の迅速な電力復旧と都市再生に資する。

B-62011年東北地方太平洋沖地震による仙台市の造成宅地とインフラ被害のデータベースの作成

研究代表者

森友宏(東北大学工学研究科)

所内共同研究者

柴山明寛、佐藤翔輔

所外共同研究者

佐藤真吾(復建コンサルタント)、河井正(東北大学)

研究の概要

大地震発生後のゆっくりすべりは、その隣接地域への応力集中により地震の連鎖を引き起こすことがある(例えばスマトラ島沖地震など)。東北地方太平洋沖地震後も地震後すべり(余効すべり)が観測されており、周囲の固着領域での地震の発生が心配される。本研究では地震後すべり・地震時すべりを、プレート境界で発生する小繰り返しの積算すべりと地殻変動データから迅速に推定する。具体的には地震波形データ、GPSデータを高速に処理するシステムを構築し、プレート境界でのすべりの準リアルタイムモニタリングを行う。

B-7陸前高田市今泉地区の歴史を活かした復興計画の核となる吉田家と街並みのCG&復原模型と復興計画案の作成

研究代表者

月舘 敏栄(八戸工業大学工学研究科)

所内共同研究者

石坂 公一

所外共同研究者

高橋 恒夫(八戸工業大学)、佐々木 勝宏(岩手県立博物館)、三橋 伸夫(宇都宮大学)、佐藤 栄治(宇都宮大学)

研究の概要

陸前高田市今泉地区は三陸沿岸地域で唯一の店藏が残る歴史的町並みであったが、東日本大震災の津浪ですべての街並が流失した。昨年7月から当研究グループでは、地元と協力した流失した岩手県指定吉田家住宅の部材を収集・部材調査、昨年12月には有志による「今泉復興を考える会」を設立し、「歴史を活かした復興計画」に向けた活動を行ってきた。 本研究では、これまでの研究蓄積、収集部材調査によるCG及び模型復原を制作し、今泉地区住民の意向を踏まえた歴史街並を活かした復興計画案作成、住民説明会を実施する。

B-8復興計画策定における合意形成の迅速化に関する研究:被災者の意見変容過程の解明

研究代表者

青木 俊明(東北大学国際文化研究科)

所内共同研究者

奥村 誠

所外共同研究者

川嶋 伸佳(東北大学)

研究の概要

東日本大震災の復興では、被災者との合意形成が復興計画策定の遅延要因になっている。特に、被災者が復興計画の策定過程で大きく意見を変化したことが合意形成を遅らせ、復興遅延の一因になっている。このような状況を受け、本プロジェクトでは、復興計画の策定に関わっている被災者と行政関係者を対象にインタビュー調査と質問紙調査を行い、復興計画に対する被災者の意見変容の内容、変容原因、変容メカニズムを明らかにする。これにより、今後、復興計画を策定する際に、被災者が最終意見に到達するまでの期間を短縮する合意形成の進め方を提案する。ここで言う最終意見に到達するまでの期間短縮とは、行政による意見誘導ではなく、多様かつ過剰な情報によって生じる意思決定の混乱時間の削減を指す。そのため、本研究では、あくまで被災者自らが自己の価値観に基づき、自らの意思で最終意見を形成するために要する時間を短縮しうる合意形成の進め方を提案することを目指す。

B-9東日本大震災におけるRC造建築物の耐震補強効果の検証と被災度判定技術の

研究代表者

前田 匡樹(東北大学大学院工学研究科)

所内共同研究者

源栄 正人

所外共同研究者

市之瀬 敏勝(東北大学)、Santiago Pujol(Purdue University)、真田 靖士(大阪大学)

研究の概要

東日本大震災で被災したRC造建築物の被害調査データや耐震診断データを用いて、耐震性能と被災度の関係、及び、耐震補強の効果を統計的に検証する。検証結果から、梁崩壊型や靭性型建物、耐震補強した建物の被害や非構造部材の被害など従来にはなかった被害事例について、地震応答解析など詳細な検討を行い被害原因を解明し、これらの被害形態にも対応できるように耐震診断・耐震改修や被災度判定法の高度化を行う。

B-10災害エスノグラフィー手法を用いた借り上げ仮設住宅世帯の生活再建過程の分析

研究代表者

田中 聡(富士常葉大学環境防災研究科)

所内共同研究者

佐藤 翔輔

所外共同研究者

重川 希志依(富士常葉大学)、立木 茂雄(同志社大学)、牧 紀男(京都大学)、柄谷 友香(名城大学)、河本 尋子(富士常葉大学)

研究の概要

本研究では、東日本大震災によってはじめて正式に採用された民間賃貸住宅の借り上げ仮設住宅に住む被災者に対してエスノグラフィー調査を実施し、彼らの生活再建プロセスの実態を明らかにすることを目的とする。特に被災者のみならず、行政、住宅所有者、地域ボランティアなど、生活再建支援に関わるさまざまなステークホルダーの活動に着目し、生活再建プロセスにおいて発生するさまざまな事象の関連性を構造化するとともに、その教訓を一般化・統合化することにより、我が国の災害対応システムの再構築において主要なテーマである「被災者の生活再建と住まいの確保」の問題解決に資する実践的研究をおこなう。

B-11リアルタイム地震・津波ハザードマッピング技術の仮想化とクラウドシステムの構築

研究代表者

松岡 昌志(東京工業大学)

所内共同研究者

越村 俊一

所外共同研究者

山本 直孝(産業技術総合研究所)

研究の概要

耐災害性強化を指向したリアルタイム地震・津波ハザードマッピング技術の仮想化と国際標準に準拠した配信技術を実装したクラウドシステムを構築する。地震については、日本全国を対象として、本震や続発する余震群に対応できるよう計算処理の拡張性を持たせ、地震発生後速やかに詳細な地震動マップを生成する。津波については様々な震源モデルシナリオに応じて津波シミュレーションを高速かつ分散処理を行い、最大津波高マップなどを生成する。国や自治体、企業等の災害対応の意志決定に活かすため、これらの計算結果については、実被害情報や他機関の情報とマッシュアップ可能なように地理空間情報の国際標準に準拠した形で配信する。

B-12生体試料を用いた低線量放射線影響の基礎的研究

研究代表者

盛武 敬(筑波大学医学医療系)

所内共同研究者

伊藤 潔、千田 浩一(兼任)

所外共同研究者

松丸 祐司(冲中記念成人病研究所)、松本 謙一郎(放射線医学総合研究所)、平山 暁(筑波技術大学)

研究の概要

生物学的影響が統計学的に確認できる最低線量は100mSv/年であるとされるが、それ以下の線量ではリスクの推定には閾値無しの直線モデル(LNTモデル)を採用している。そこで本申請では、低線量・低線量率放射線による人体への影響を明らかにするため、比較的低線量〜中線量被曝を受けるCTやインターベンショナルラジオロジー(IVR)実施患者の血液サンプルを用いて、擬似的低線量(低線量率)被曝環境における生体影響を評価する手法を確立する。具体的には物理学的な被曝線量測定技術を基盤にして、患者の抗酸化による防御能を加味しながら、DNA損傷を指標にした細胞遺伝学的手法により線量再構築を実施する。さらには低線量被曝による適応応答の有無を、実際の医療放射線被曝後の患者血清を用いて明らかにすることで防護法開発に役立てる。このことは、将来的に福島における低線量被曝地域の住民の安全を守る施策に生かされる可能性が

B-13海中の異常信号を検知する簡易設置型海洋エレベーターの開発とその検証

研究代表者

塚越 秀行(東京工業大学理工学研究科)

所内共同研究者

今村 文彦

所外共同研究者

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研究の概要

海底地震・津波に起因する海中の情報を迅速に検知するために、海上と海底間を長期間無人操作で往復し続けるエレベーター式探査ロボットを開発し、水深を変えながら海中の多様な情報を提供できるシステムの構築を目指す。具体的には、i)海上-海底間を結ぶホース内の水圧を利用してセンサユニットを搬送する駆動系の開発、ii)圧力・音・電位・映像などの信号を水深情報とともに収集するセンサユニットとその信号伝達系の開発、iii)海中環境での検証実験と得られた海中情報の評価と分析、などを行う予定である。

B-14原発事故による農業の風評被害と営農再建に関する調査研究

研究代表者

関根 良平(東北大学環境科学研究科)

所内共同研究者

邑本 俊亮、柴山 明寛

所外共同研究者

佐々木 達(東北大学)、小田 隆史(札幌学院大学)、小金澤 孝昭(宮城教育大学)、高木 亨(福島大学)、阿部 恒之(東北大学)

研究の概要

とくに福島県を主たる対象地域とし、原発事故の被災地域における放射能汚染と農業被害から農産物の流通体系、および消費者の購買行動と意識までを実証的に記録・調査し、それらを統合的に検討ことで、被災地復興のうえで大きな問題である風評被害の全体構造を明らかにする。それを通じ、現在進行形である風評被害の抑止にむけた実践的方策に加え、被災地における農業の復興方向性と安全・安心な食料供給体制のあり方を提示する。

B-15光学リモートセンシング画像解析に基づく早期被災地マッピング技術の構築

研究代表者

三浦 弘之(東京工業大学理工学研究科)

所内共同研究者

越村 俊一

所外共同研究者

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研究の概要

広域災害時において国や自治体等の効率的な早期対応を支援するためには、被害状況の分布を表すマップをできるだけ迅速に取得することが必要である。本研究では、地震直後に得られたリモートセンシング画像を用いたテクスチャ解析と既存の空間データを用いた融合解析により、建物倒壊箇所、瓦礫散乱箇所、道路閉塞箇所を把握する手法を検討し、現地調査結果との比較・検証を行った上で、教師データを必要とせずに迅速に被害地域を特定する被災地マッピング技術を構築する。

B-16海岸線変動を用いた東北沖巨大地震の発生履歴の解明

研究代表者

原口 強(大阪市立大学理学研究科)

所内共同研究者

遠田 晋次、岡田 真介

所外共同研究者

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研究の概要

東北地方太平洋沖地震によって三陸海岸南部は最大1。4m沈降した。これに伴い海岸地形の顕著な変化が見られ、多くの自然海浜において汀線が陸側に大きく後退した。鳴き砂として有名な気仙沼市唐桑町の九九鳴き浜では、地震前に砂浜背後に存在した杉林や広葉樹が枯れた。津波の塩害だけではなく、地震により汀線が陸側に後退し砂浜が侵入したことによる。現在は樹木の一部が砂に覆われている。本研究では、このような汀線付近の環境変遷をボーリング調査によって明らかにすることにより、過去の巨大地震による沈降過程と津波襲来を解明する。

B-17津波遡上が河川生態系に及ぼす影響評価

研究代表者

渡辺 幸三(愛媛大学理工学研究科)

所内共同研究者

越村 俊一

所外共同研究者

熊谷 幸博(東北大学)

研究の概要

河川を遡上した大津波は人間社会のみならず、河川生態系にも甚大な被害をもたらした可能性がある。本研究は、仙台平野の複数河川で生物多様性や個体数を調査し、大震災津波の生態影響が現れた河川区間や、被害が深刻だった生物種などを解明する。そして、津波高さや河道形状などの水理特性と生態影響の関係を整理する。さらに、津波直後から経時的に採取されている生物標本を分析して生態系の回復過程も評価する。本研究は、防災工学と生態工学を融合した「防災生態工学」という新たな学際的な学問分野の発展に資する。

B-18日本全国を対象とした流域スケールの雨水貯留容量マップの作成

研究代表者

横尾 善之(福島大学理工学群共生システム理工学類)

所内共同研究者

真野 明

所外共同研究者

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研究の概要

本研究は、研究代表者が開発してきた「毎時の河川流量データに基づく流域スケールの雨水貯留量推定法」を利用して、流域スケールの雨水貯留量の時間変動を計算し、その変動量から流域の雨水貯留容量を推定し、これを日本地図上にマッピングするものである。得られた地図情報は、各流域の降雨流出モデルの構造決定、洪水・土砂災害・渇水への脆弱性の評価、洪水・土砂災害・渇水予警報システムの基盤情報に用いることができ、被災地の水害による犠牲を減らし、早期復興の実現に貢献するものと期待できる。

B-19復興計画及び地震被害想定支援に向けた動態的な空間的マイクロシミュレーションによる中長期的な地域人口推計法の確立

研究代表者

花岡 和聖(立命館大学文学部 ※現在、東北大学災害科学国際研究所所属)

所内共同研究者

石坂 公一

所外共同研究者

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研究の概要

東日本大震災の被災地や、今後、大規模な地震被害が想定される地域において、少子高齢化や都市集中などの中長期的な地域別の人口動態を踏まえた上で、復興計画や防災計画の策定が求められる。そこで、本研究では、動態的な空間的マイクロシミュレーション法を用いて、個人・世帯のミクロデータを生成し、個人単位での人口動態シミュレーション・モデルを構築することで、地域人口推計の精緻化・詳細化を図る。その上で、復興計画や防災計画の策定に必要な基礎資料を提示する。

B-20船舶避難・待避ハザードマップの構築

研究代表者

小林 英一(神戸大学海事科学研究科)

所内共同研究者

越村 俊一

所外共同研究者

村山 雅子(富山工業高等専門学校)、木村 安宏(大島商船高等専門学校)

研究の概要

津波が港湾に来襲した時に少なからず船舶は影響を受ける。航行中船舶は港外避難、係留・停泊中の船舶はそのまま留まるか港外避難の選択となる。現時点では津波来襲時に港湾内航行船舶がその津波規模に基づきどのような行動をとるのが最も安全か、停泊・係留船舶は平時にどのように備えまた津波来襲時にどのように行動するのが安全化などについて具体的な指針は乏しい。本研究では在港湾船舶が津波来襲が予想された場合に止まるべきか、どこに逃げるべきかを示すWebベースの動的ハザードマッププロトタイプの開発を行う。

B-21経験の蓄積を踏まえた津波復興まちづくりの計画立案手法の

研究代表者

池田 浩敬(富士常葉大学環境防災研究科)

所内共同研究者

佐藤 翔輔

所外共同研究者

饗庭 伸(首都大学東京)、木村 周平(富士常葉大学)

研究の概要

東日本大震災以前の津波遡上高の日本最高値を持つ大船渡市綾里地区は、従来から津波に対する取り組みが行われていたが、津波による大きな被害を受け、申請者らの支援を受けて復興計画策定に取り組んでいる。歴史的な経験の蓄積をふまえて、他地区に見られないような、「人/組織」と「Built Environment(建造物環境)」が有機的に連携した復興計画が立案されつつある。本研究では、コミュニティベースの復興まちづくり計画立案手法の開発と実践を行うとともに、過去および今回の災害の避難と復興の記録を作成し、復興まちづくりを通じて被災地への具体的な支援を行うとともに、来るべき次の津波に備えた実践的防災学の形成に貢献することを目的とする。

B-22海底観測時系列データのウェーブレット解析および統計解析による地殻変動成分抽出に関する研究

研究代表者

川崎 秀二(岩手大学人文社会科学部)

所内共同研究者

木戸 元之

所外共同研究者

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研究の概要

海底地殻変動観測データは、地震時の変動の解析はもとより、非地震時の歪の蓄積過程、地震前のイベント・地震後の余効変動の検出にも有効となる重要なデータである。しかし、海洋変動に起因するノイズ成分を多く含んでおり、データから地殻変動成分の抽出を行うには、このノイズの除去が鍵となる。本研究では、海洋変動成分のスケーリング性等に着目し、ウェーブレット解析および統計解析によりその成分を抽出・除去する手法を考察し、また有効性を検証する。

B-23日台における災害教育に関する実証的研究:3.11を教訓にした感染症教育プログラムの検討

研究代表者

坪内 暁子(順天堂大学大学院医学研究科研究基盤センター)

所内共同研究者

佐藤 健

所外共同研究者

内藤 俊夫(順天堂大学)、奈良 武司(順天堂大学)、丸井 英二(順天堂大学)、張 念中(台北医学大学)、范 家堃(台北医学大学)

研究の概要

本課題は、地震・津波等自然災害の二次災害としての感染症発生・流行による被害を最小限に抑える目的で、東北大の災害教育を参考にしつつ科研課題(坪内、2009〜)で得られた知見をもとに進める。今年度から中教審の答申を受け都立の全ての高校・中高一貫校後期において合宿訓練が実施されるが、当研究班では災害時の避難所にもなる、2009年以降教育的介入を実施している中高一貫校の都立小石川中等教育学校をモデル校とし、生徒の現状を踏まえ、教師・保護者・地域住民との連携体制下で、「危険予知能力」・「災害対応能力」・「自己制御力」の教育を念頭に教育プログラムを作成し、講義・演習等を組合せ、さらにKEEPADの教育機器を用いることで、知識の浸透を図る。

B-24発達障害を持つ子のための防災教育および防災対策

研究代表者

堀 清和(太成学院大学人間学部)

所内共同研究者

佐藤 健

所外共同研究者

村上 佳司(天理大学)

研究の概要

現在の学校現場における防災教育や防災対策は、健常児を前提として考えられており、発達障害のため、災害発生時に危機を察知できない子、助けを求めることができない子のための教育や対策は十分検討されていない。そこで、本研究では、調査研究を通して、発達障害のある子やその保護者のニーズと現在の学校の対応状況を比較することで、災害弱者となりやすい子たちを念頭に置いた防災教育、防災対策の充実を図ることを目的としている。

B-25GISを用いた東北地方太平洋沖地震による建物被害分布の地形・地質学的要因の検討

研究代表者

中澤 努(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

所内共同研究者

岡田 真介

所外共同研究者

川畑 大作(産業技術総合研究所)、小松原 琢(産業技術総合研究所)、長 郁夫(産業技術総合研究所)、納谷 友規(産業技術総合研究所)、中村 洋介(福島大学)、坂田 健太郎(産業技術総合研究所)

研究の概要

本研究では、地震動に伴う建物被害の地形・地質学的な要因を明らかにすることを目的として、2011 年東北地方太平洋沖地震における茨城県つくば市・土浦市周辺の深刻な瓦屋根被害に着目し、Google Earth の衛星画像を用いて広域な被害分布調査を行う。また得られた被害分布・被害率を既存及び自らの調査による地球科学データとともにGIS で管理し、両者の関係、特に埋没谷と被害との関係について検討する。

B-26東日本大震災による地域経済への影響に関する調査

研究代表者

多々納 裕一(京都大学防災研究所)

所内共同研究者

奥村 誠

所外共同研究者

梶谷 義雄(京都大学)

研究の概要

本研究では、東北地方、関東北部地方に立地する企業を対象としたアンケート調査を実施し、設備や従業員の被災状況など、企業が直面した様々な問題についてデータベースを作成する。本データベースに基づき、産業の種類に応じた生産能力の外力に対する脆弱性や、サプライチェーンの変更容易性、生産能力の回復特性等を分析し、企業の事業継続計画の策定や事前の災害対策のベンチマークとなりうる脆弱性や復元性の指標を提案する。

B-27津波からの安全避難を目的とする平常時・非常時の道路運用方法に関する研究

研究代表者

高田 和幸(東京電機大学理工学部)

所内共同研究者

奥村 誠

所外共同研究者

大原 美保(東京大学)

研究の概要

自動車を用いた津波避難の安全性は、避難時に道路空間をどのように運用するかに依存する。そこで本研究では、気仙沼市を対象にして、自動車による津波避難の安全性向上を達成し得る道路運用のあり方を明らかすることを目的とする。はじめに、東北地方太平洋沖地震で発生した津波からの自動車による避難状況を交通流ミクロシミュレーター上で再現する。次に、津波避難の安全性向上を目的とする様々な道路運用メニューおよびパッケージを考案し、構築したシミュレーターを用いて評価する。さらに津波避難時のみに導入する施策、平常時から導入しておくべき施策を区分し、平常時から導入が必要な施策については、その導入可能性を関係主体へのヒアリングやアンケート調査を実施して検討する。

B-28遠隔ロボットと繋留型浮遊体を用いた三人称視点での情報収集システムの開発

研究代表者

杉本 麻樹(慶應義塾大学理工学部情報工学科)

所内共同研究者

越村 俊一

所外共同研究者

稲見 昌彦(慶應義塾大学)

研究の概要

災害時には崩落や環境汚染によりヒトが直接の情報収集を行うことが困難な極限状況が発生する。本提案では、災害時の情報収集システムとして、地上の遠隔ロボットと風船型の浮遊デバイス(以下、繋留型浮遊体)を統合した情報収集システムを開発する。繋留型浮遊体には広角な映像を撮影できる無線カメラを取り付け、ロボットの三人称視点をリアルタイムに提供することで習熟していない操作者でも簡便な情報収集を可能とするインタフェースを実現するとともに、繋留型浮遊体の柔軟な位置制御を可能とすることで、ロボット本体が侵入できない環境に対しても浮遊体を活用した情報収集を実現する。

B-29大規模災害における民俗(民族)知の援用に関する実践的研究

研究代表者

田口 洋美(東北芸術工科大学芸術学部)

所内共同研究者

佐藤 翔輔

所外共同研究者

高倉 浩樹(東北大学)、高橋 満彦(富山大学)、澤田 哲生(東京工業大学)、蛯原 一平(東北芸術工科大学)

研究の概要

本研究は、大規模災害に対して地域住民あるいは先住民族が歴史的に経験を蓄積し、醸成してきた民俗(民族)知を評価し、これを現代社会に援用可能な形で集積し、データベース化を図るための基礎研究として位置付く。大規模災害に対する科学技術的分野における経験知的対応は近代以降一定の蓄積を見るが、歴史的に見ればその蓄積は不足しているといえよう。本研究では、国内とくに東北地方と国外における先住民、少数民族集団の中から、災害に関する民俗(族)知の抽出を図り、データベース化とその援用に関する枠組のモデルを構築する。

B-30震災復興と事前復興支援のための復興まちづくり事例データベース

研究代表者

馬場 美智子(兵庫県立大学総合教育センター防災教育センター)

所内共同研究者

佐藤 翔輔

所外共同研究者

越山 健治(関西大学)、青田 良介(兵庫県立大学)

研究の概要

復興まちづくり事例に関する情報は、事例横断的に、地域特性等の項目が体系立てて整理されていないことが多く、多くの情報の中から被災地に適した有用な情報を取り出すのは容易ではない。また、ハード面の復興事業等の復興初期情報が多く、事業評価や合意形成プロセス、地域でのソフトな取組等についてまとめられた情報は少ない。そこで本研究では、被災地の特性を考慮し、長期的な観点から復興まちづくりを検討する上で有用な情報を提供するため、国内外の復興まちづくり事例を分類・整理してデータベースを構築する。

B-31災害に頑健な物流のデザインに関する政策分析

研究代表者

堀江 進也(東北大学環境科学研究科)

所内共同研究者

平川 新

所外共同研究者

馬奈木 俊介(東北大学)、大東 一郎(東北大学)、藤井 秀道(東北大学)、伊藤 豊(東北大学)、田中 健太(東北大学)

研究の概要

阪神淡路大震災及び東日本大震災が日本企業に与えたインパクトを市場評価、財務評価、及びサプライチェーンリスクマネジメントの三つの観点から、大規模なデータを用いて定量的かつ包括的な把握を行い、環境・経済・災害リスクを考慮した持続可能社会に向けたサプライチェーンの構築に関する政策提言及び経済・市場評価の検証によるリスクマネジメント構築を目指す。

B-32心の復興-「ことばの移動教室」による教育実践-

研究代表者

小泉 祥一(東北大学教育学研究科)

所内共同研究者

佐藤 健

所外共同研究者

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研究の概要

東日本大震災の復興支援が取り組まれる中、児童・生徒に対する精神的支援が必要となっている。このような中、ボランティアスクール「ことばの移動教室」(代表:小泉祥一)は、平成23年4月から児童・生徒の心の復興をめざし、各学校を訪問、詩を媒体とした活動に取り組んできた。この活動を通して生まれた詩作品と指導書を『震災 宮城・子ども詩集』として24年3月に発行した。これは、全国の学校で副教材として使用できるものである。震災以降、この1年間の取り組みをさらに全国的に発展させ、自然災害に対処できる心の復興の教育実践のあり方とそのネットワークの形成を探る。

B-33津波被災地の商業機能再建モニタリング調査

研究代表者

磯田 弦(東北大学大学院理学研究科)

所内共同研究者

奥村 誠、石坂 公一、柴山 明寛、安倍 祥、増田 聡(兼任)

所外共同研究者

岩動 志乃夫(東北学院大学)、岩間 信之(茨城キリスト教大学)、土屋 純(宮城学院女子大学)、小金澤 孝昭(宮城教育大学)

研究の概要

三陸沿岸の津波被災地における商業地の再建過程を、主として自治体、商工会議所・商工会、仮設店舗経営者に対するインタビューにより、モニタリング(継続)調査する。津波被災地の商店経営者は、自宅の再建と店舗の再建という二つの困難に直面しており、地域リーダーの存在、外部からの専門的・技術的支援、行政との協働体制のいかんによっては、その地域の中心地としての機能が大きく損なわれる可能性がある。この調査は、共同研究者がそれぞれ取り組んでいる各自治体における調査に、共通調査項目を設け、横断的に比較可能な再建過程を記録するとともに、随時、被災地に向けて情報発信する。

B-34竜巻等突風災害に対する個人および行政レベルの対応マニュアルに関する研究

研究代表者

植松 康(東北大学大学院工学研究科)

所内共同研究者

佐藤 健

所外共同研究者

ガヴァンスキ 江梨(東北大学)、奥田 泰雄(国土技術政策総合研究所)、高橋 章弘(北方建築総合研究所)、池内 淳子(摂南大学)

研究の概要

北海道佐呂間町(平成18年年11月)や茨城県つくば市(平成24年年5月)の事例のように、近年ではF2~F3クラスの竜巻が発生し、大きな被害をもたらしている。本研究では、これら近年の竜巻災害における住民や行政の対応に関するアンケート調査やヒアリング調査の結果を分析することで、これまで全く検討がなされていない「突風災害に対する個人および行政レベルでの対応マニュアル」の雛形を提示する。本研究成果が単なる提案に止まらず、自治体が策定する地域防災計画に反映されることが最終到達点である。

B-35東日本大震災の震災資料の所在調査および収集・保存の手法等に関する検討-宮城県岩沼市をフィールドとして-

研究代表者

奥村 弘(神戸大学人文学研究科)

所内共同研究者

天野 真志

所外共同研究者

佐々木 和子(神戸大学)、三輪 泰史(大阪教育大学)、小長谷 正治(伊丹市立博物館)、水本 有香(神戸大学)、添田 仁(神戸大学)、板垣 貴志(神戸大学)、川内 淳史(伊丹市)、兒玉 州平(関西国際大学)、吉川 圭太(神戸大学)、高橋 陽一(東北大学)、田中 洋史(長岡市率中央図書館)

研究の概要

東日本大震災の被災地では、震災に関する写真や映像などのデジタルデータ収集とそのデジタルアーカイブの構築が国内外において進められている。一方、避難所日誌・ミニコミ誌・ビラ・チラシ等といった震災資料(原資料)の収集・保存は、自治体レベル・各種図書館で行われているが、十分対応できているとは言えない。そこで、阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、東日本大震災被災地における民間を含めた震災資料の所在調査・収集・保存の方法論の構築に向けて、宮城県岩沼市を中心にパイロット事業を行う。

B-36津波体験ドライビングシミュレータを用いた避難誘導実験

研究代表者

丸山 喜久(千葉大学工学研究科)

所内共同研究者

越村 俊一

所外共同研究者

山崎 文雄(千葉大学)

研究の概要

本研究の目的は、自動車運転中に津波が来襲したときに、迅速かつ円滑な避難を促すのに望ましい情報提供のあり方を提案することである。道路標識やレーンマーク等の施設対策とカーナビ等の地図情報端末への地形データの付加を施策例として想定する。研究目的を達成するために、3次元コンピュータグラフィックス(CG)を駆使した津波体験ドライビングシミュレータを開発し、自動車運転者を高台へ誘導するのに高い効果を示す標識の設置方法やカーナビによって提供するべき情報の質について走行実験に基づいて検討する。

B-37教員養成における防災教育に関する研究

研究代表者

村山 良之(山形大学教育実践研究科)

所内共同研究者

佐藤 健

所外共同研究者

八木 浩司(山形大学)、川邉 孝幸(山形大学)、齋藤 英敏(山形大学)

研究の概要

学校教員が防災教育や学校の防災管理に適切に携わることができるよう、教員養成における防災教育と学校の防災管理に関わる授業プログラムを作成する。

B-38震災復興における福島県小規模自治体を対象とした実践型地域再生モデル

研究代表者

坂口 大洋(仙台高等専門学校建築デザイン学コース)

所内共同研究者

石坂 公一

所外共同研究者

浦部 智義(日本大学)

研究の概要

本研究は、東日本大震災における福島第一原発事故の影響が続く福島県小規模自治体を対象とし、震災後の居住と集落再生の観点からの実践型の地域再生モデルを構築する。具体的には、町内の一部が計画的避難区域にある福島県川俣町を対象とし、震災前後の自治体全体の居住状況の推移を把握する。次に集落と移転後の仮設住宅に着目し、過疎集落の再生と避難対応における仮設居住の住み替えの二点から、実態把握に基づく課題の整理と継続したワークショップに基づく小規模自治体の将来的な居住移行モデルを検討する。

B-39液状化地盤における杭基礎の倒壊に伴う高層建築物の倒壊シミュレーションと杭基礎の終局限界設計法の確立

研究代表者

木村 祥裕(東北大学未来科学技術共同研究センター)

所内共同研究者

源栄 正人

所外共同研究者

時松 孝次(東京工業大学)、田村 修次(京都大学)、古川 幸(東北大学)

研究の概要

都市部埋立地の地盤は極めて軟弱であり、地下数十mにまで達する杭基礎を必要とする場合がある。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では、震源地から300km以上も離れた東京湾沿岸埋立地でも広範囲にわたり地盤が液状化し、上屋構造がほとんど無被害であっても建物が傾き、建て替えや補修を余儀なくされた。さらに、巨大地震が生じれば、地盤の液状化は著しく、急激に地盤の水平抵抗が低下するため、杭基礎では曲げ座屈が生じ、さらに杭の鉛直支持力の喪失、上屋構造である高層建築物の倒壊に発展する可能性がある。本研究では、東北地方太平洋沖地震による高層建築物の杭基礎の被害事例を調査するともに、遠心載荷実験により研究事例のない杭基礎の崩壊による上屋構造の連鎖的な倒壊現象を明らかにする。特に高層建築物の被害を予測し、液状化地盤における杭の限界状態設計法を提案する。

研究・実践