研究・実践

平成26年度 特定プロジェクト研究【連携研究】(採択課題)

東北大学災害科学国際研究所の使命は、東日本大震災における調査研究、復興事業への取り組みから得られる知見や、世界をフィールドとした自然災害科学研究の成果を社会に組み込み、複雑化する災害サイクルに対して人間・社会が賢く対応し、苦難を乗り越え、教訓を活かしていく社会システムを構築するための「実践的防災学」の体系化とその学術的価値の創成である。

昨年度にひきつづき、平成26年度も研究所における国内外の研究戦略に合致したプロジェクトを展開するために、協定関係等にある大学機関との連携研究を募集し、採択した。

ここでは、平成26年度特定研究プロジェクト【連携研究】として採択された研究課題を掲載する。

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連携研究

  • 海外大学等:海外大学(協定校等)との連携研究及び戦略的海外連携研究
  • 被災地大学:被災地の国立大学との連携研究
  • 国内連携国立大学:国内の連携国立大学との連携研究

1(海外大学等)津波堆積物順解析・逆解析の連携による先進的津波規模評価手法の構築(新規)

連携機関

米国地質研究所

研究代表者

菅原 大助(災害リスク研究部門・低頻度リスク評価研究分野)

所内共同研究者

後藤 和久

所外共同研究者

Bruce Jaffe、Guy Gelfenbaum(米国地質研究所)

研究の概要

地質学的データに基づく津波規模の推定は、巨大津波リスク評価の要請にとどまらず、高度の理工融合が必要な先端的学際研究分野として、国際的に高い関心を集めている。本研究の目的は、東北大学と米国地質調査所(USGS)による異なるアプローチの数値解析手法を連携することで、津波堆積物に基づく津波規模の推定手法の革新的な進歩を図り、東北地方における過去の巨大津波の実態を、規模の面から明らかにすることである。本研究では、東北大学による津波土砂移動の順解析と、USGSによる津波堆積物の逆解析を組み合わせることで、それぞれの利点を相乗的に高めた新たな津波規模評価手法を構築する。数値的手法により地質学的データの最高度の活用を追求する学際的研究分野において、東北大学とUSGSの連携の下に実施される本研究が与えるインパクトは大きいと期待される。本研究により新たに構築される津波規模の数値的評価手法は、津波・流砂現象と津波堆積物との関係における一貫性と定量性を備えるものであり、これを東北地方の古津波堆積物に適用することで、被災地を繰り返し襲ってきた過去の巨大津波の規模をこれまで以上の精度で明らかにすることが可能となる。

2(被災地大学)岩手県南部沿岸地域における被災歴史資料の修復と地域情報の研究(新規)

連携機関

岩手大学

研究代表者

蝦名 裕一(人間・社会対応研究部門・歴史資料保存研究分野)

所内共同研究者

-

所外共同研究者

菅野 文夫、佐藤 由起男(岩手大学)、大林 賢太郎(京都造形芸術大学)

研究の概要

災害科学国際研究所人間・社会研究対応部門歴史資料保存研究分野では、東日本大震災で被災した岩手県大船渡地域における個人所有の歴史資料の調査・修復の研究を実施している。岩手県大船渡市三陸町綾里の江戸時代以来の地域有力者宅では、仙台藩の儒学者・大槻盤渓の書を装丁した襖など、歴史的に重要な意義をもつ資料郡が東日本大震災によって被災した。当分野では現在この被災資料に対する応急処置を実施し、保管している。本研究では、東日本大震災で被災した襖・屏風について、作者や来歴・歴史的背景を調査し、その歴史的重要性を明らかにする。併せて京都造形芸術大学と連携し、これらの歴史的重要性をもつ襖・屏風について修復処置を実施する。さらに、同地域では他の地域有力者宅が数多く被災し、その所在も明らかになっていない。大船渡市およびその周辺地域において、同地域の歴史情報および歴史資料の被災状況についてフィールドワークを実施して調査し、岩手県南部沿岸部における歴史情報の保全と同地の復興に資することを目的とする。

3(海外大学等)ハワイ大との学際的リスク研究推進のためのネットワーク構築(継続)

連携機関

ハワイ大学

研究代表者

浩 日勒(災害医学研究部門・災害感染症学分野)

所内共同研究者

服部 俊夫、今村 文彦、サッパシー・アナワット、保田 真理

所外共同研究者

Denise Eby Konan、Kwok Fai Cheung、Vivek R. Nerurkar、Lishomwa C. Ndhlovu、Cecilia Shikuma、Vivek R. Nerurkar、Apichai Tuanyok、Norman Okamura(ハワイ大学)、Mark Behrens(ハワイ州教育局長)

研究の概要

本年度、災害リスク、感染症、経済被害などのリスク研究に関する学際的なテーマについてのネットワークを構築するために合同ワークショップを行う。全体の会議(3つの分野で日米のスピーカー)に続き、各分科会を開催し、最後に、合同なテーマについて議論する。共通のテーマについては、リスクに関する啓発・教育、さらに2015年国連防災世界会議に向けた協働の研究体制についても議論を行う。 災害リスクでは、地震や津波のリスク評価の高精度化、さらには解析結果の公表と周知、防災教育プログラムなどの検討をおこなう。災害感染症として、まず蚊媒介感染症のデング熱、水によるレプトスピローシスなどの研究を主として行い、また日本人に多いHTLV-1研究の学際的共同研究を行う。これらの感染症はハワイに散発的に発生する感染症で、既にハワイ大学のエイズセンターとその早期発見のバイオ-・マーカーに関する共同研究を行っている。最後に、経済的な面からの特徴が災害にはある。自然災害は、発生の時点と地点さらに被害の大きさの予測が困難であることを特徴とする。しかし、事前あるいは事後における措置によっては、その被害の規模を縮小することが可能であり、政府はその主たる役割を担う。東日本大震災においても、被害の予測の難しさは観察されている。現在、甚大な被害をもたらした東日本大震災から一定期間が経過し、復興へ向けた議論が活発になっている。その際、被災地域の社会活動の再建・復興と建築物のインフラの整備は強く結びついており、被災前の状況と比較しつつ、社会・経済面を考慮して復興計画を立てる必要がある。

4(国内連携国立大学)東日本大震災の被災地における「被災者目安箱システム」の開発(継続)

連携機関

新潟大学災害・復興科学研究所

研究代表者

佐藤 翔輔(情報管理・社会連携部門・災害アーカイブ研究分野)

所内共同研究者

今村 文彦

所外共同研究者

井ノ口 宗城(新潟大学災害・復興科学研究所)、中野 敬介(新潟大学大学院自然科学研究科)、阿部 恒之(東北大学大学院文学研究科)

研究の概要

東日本大震災は我が国が戦後において初めて経験した広域複合災害である。発災から2年が経過した現在、被災地では復旧から復興へ局面を移行しながらも、複合災害により被災者が直面している課題は多岐にわたり、難航している。一方で、広域災害により多くの被災者が被災地外で仮住まい生活を続けており、状況把握するための仕掛けは存在しない。そこで、本研究ではWebシステムとして「被災者目安箱システム」を開発し、被災者の「いまの悩みごと」をリアルタイムで把握する仕組みを確立する。本システムでは、いつでも、どこからでもアクセスできるウェブに仕組みを展開し、登録情報をもとにして、TRENDREADERによる言語処理をとおして、被災者の悩みの変化をトラッキングする。また、被災地内外や被害の有無等から投稿者の属性や発災時の状況、地域性が「被災者の悩みの変化」に与える影響を分析するとともに、成果を社会発信することで二次利用の可能性を広げ、社会の復興力の一助になることを目指す。

5(海外大学等)UCL collaborative research on global natural disasters(グローバル自然災害研究に関する連携強化プロジェクト-ロンドン大学との連携)(継続)

連携機関

ロンドン大学災害リスク軽減研究所

研究代表者

サッパシー・アナワット(地震津波リスク評価(東京海上日動)寄附研究部門)

所内共同研究者

今村文彦、真野明、源栄正人、奥村誠、富田博秋、小野裕一、遠田晋次

所外共同研究者

Peter Sammonds、Rosanna Smith(IRDR)、Tiziana Rossetto、Ingrid Charvet(ロンドン大学)

研究の概要

IRIDeS and the Institute for Risk and Disaster Reduction (IRDR) at UCL have started their collaboration on disaster research since March 2012 as one of the science and technology exchange mission between Japan and the UK. All of research divisions in IRIDeS take part in this collaboration on the integrated research to accomplish the final goal of disaster risk reduction.(東北大学災害科学国際研究所(IRIDeS)とロンドン大学災害リスク軽減研究所(IRDR)は2012年3月から災害に関する共同研究の覚書の下、両研究所の各研究分野の日英学術交流を開始している。さらに、連携の強化を図るために、IRIDeS側(災害リスク、人間・社会対応、災害理学、災害医学、情報管理・社会連携研究部門)の担当教員とIRDRのパートナーから各研究課題を総合的な災害研究の観点で解明する。)

研究・実践