研究・実践

平成27年度 特定プロジェクト研究【連携研究】(採択課題)

東北大学災害科学国際研究所の使命は、東日本大震災における調査研究、復興事業への取り組みから得られる知見や、世界をフィールドとした自然災害科学研究の成果を社会に組み込み、複雑化する災害サイクルに対して人間・社会が賢く対応し、苦難を乗り越え、教訓を活かしていく社会システムを構築するための「実践的防災学」の体系化とその学術的価値の創成である。

昨年度にひきつづき、平成27年度も研究所における国内外の研究戦略に合致したプロジェクトを展開するために、協定関係等にある大学機関との連携研究を募集し、採択した。

ここでは、平成27年度特定研究プロジェクト【連携研究】として採択された研究課題を掲載する。

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連携研究

  • 海外大学等:海外大学(協定校等)との連携研究及び戦略的海外連携研究
  • 被災地大学:被災地の国立大学との連携研究
  • 国内連携国立大学:国内の連携国立大学との連携研究

1 IRIDeS-UK universities collaborative research on global disaster risk reduction
グローバル災害・防災研究に関する連携強化プロジェクト:英国大学との連携(新規)

研究代表者

サッパシー・アナワット(災害リスク研究部門 ・災害ポテンシャル研究分野)

所内共同研究者

今村 文彦、奥村 誠、小野 裕一、遠田 晋次、サッパシー・アナワット、久利 美和、菅原 大助、イ・ケリーン、ボレー・セバスチャン、野内 類、安田 真理

所外共同研究者

Peter Sammonds、Emily So、Rosanna Smith、Tiziana Rossetto、David Alexander、Joanna Faure Walker、Ilan Kelman、Simon Da(UCL)、Emily So、Amy Donovan(UC)、Stephen Platt(Cambridge Architectural Research Ltd)

研究の概要

東日本大震災の被災地における広域被害把握技術とモバイル端末等からのツイートデータの分析を融合し、津波浸水域内の被害程度(浸水深、建物被害、人的被害)と被災地における中期的な生活支障や被災地のニーズとの関連性を明らかにする。この関連性を用いて、被災直後に得られる被害の予測・把握情報からその後の生活支障や被災地のニーズを推定する、全く新しいデータ駆動科学による被災地動態と支援ニーズの推定モデルを開発する。

2 データ駆動科学による被災地動態の把握とマッピング(継続)

研究代表者

越村 俊一(災害リスク研究部門・広域被害把握研究分野)

所内共同研究者

奥村 誠、佐藤 翔輔、花岡 和聖、マス・エリック

所外共同研究者

Joachim Post、Christian Geis(ドイツ航空宇宙センター)、Chris Renschler(ニューヨーク州立大学)

研究の概要

東日本大震災の被災地における広域被害把握技術とモバイル端末等からのツイートデータの分析を融合し、津波浸水域内の被害程度(浸水深、建物被害、人的被害)と被災地における中期的な生活支障や被災地のニーズとの関連性を明らかにする。この関連性を用いて、被災直後に得られる被害の予測・把握情報からその後の生活支障や被災地のニーズを推定する、全く新しいデータ駆動科学による被災地動態と支援ニーズの推定モデルを開発する。

3 新しい行動枠組みに基づく災害保健医療統計と国際災害医療教育の樹立(新規)

研究代表者

江川 新一(災害医学研究部門・災害医療国際協力学分野)

所内共同研究者

佐々木 宏之

所外共同研究者

Razel Kawano、Carmela Dizon(アンヘレス大学公衆衛生大学院)、Armando Crisostomo、Nina G. Gloriani(フィリピン大学)、金谷泰宏、Alex Ross、加古まゆみ(WHO神戸研究センター)、Fatma Lestari(インドネシア大学)

研究の概要

『保健医療管理に関する国際シンポジウム』、『知のフォーラム』を経て、人々の健康を災害リスク減少の中心に据え、そのために保健医療福祉従事者と保健医療以外の分野との相互理解、さらには一般の医療従事者と災害医療の従事者との相互理解を深めることの重要性がコンセンサスを得られた。本研究では、国内外の災害保健医療関係者、防災減災関係者と協力しながら新しい行動枠組みに基づいて、とくに保健医療に関する災害統計データの集積を行い、保健医療福祉の体制整備を通した災害リスク減少に必要な知識の共有化を行い、国際災害保健医療教育の標準化をめざす。フィリピン大学マニラ校、アンヘラス大学、国立保健医療科学院、パジャジャラン大学など部局間協定を結んでいる組織を中心に災害保健医療統計の標準化を検討する。また災害医学の特別講義あるいは遠隔講義を行いて、教育の前後における学習者の行動変容を評価解析する。

4 タイにおける災害感染症と災害復元力形成の試み(新規)

研究代表者

浩 日勒(災害医学研究部門・災害感染症学)

所内共同研究者

服部 俊夫、江川 新一

所外共同研究者

Srivicha Krudsood(マヒドール大学)、狩野繁之(国立国際医療研究センター研究所)、川嶋辰彦(学習院大学名誉教授)、富田育磨(GONGOVA)、Chakarpand Wongburanavart、Chucheep Praputpittaya(Mae Fah Luang Univ)

研究の概要

マラリアは、毎年3-5 億の感染者が発生し、100 万人が死亡する。今までにマヒドール大学の熱帯医学研究所とは全血サンプルを用いてマラリアにおける炎症マーカー(オステオオンチン)の研究をおこなった。その後血漿サンプルの予備研究をする機会を経て、これらの蛋白が臨床マーカーと相関する印象を得て、今回新たに倫理委員会に提出し、血漿を用いた、病態・復元力マーカーの研究を行う予定である(東北大学とマヒドール大学は大学間交流協定を結んでいる)。またタイ北部のチェンライの国立・王立大学であるメーファールアン(MFU)は昨年のチェンライの地震以降、災害医学教育に興味を持ち、災害研との今後の交流と災害医学の共有を目指している。またMFU はGONGOVA(ゴンゴヴァ:草の根国際協力研修プログラム)を支援している。GONGOVA は、タイ北部の山岳少数民族白カレン族居住山村で、1997年以来継続的に国際ボランティア活動を行っていて、所属する郡では年間100 名のマラリア患者が発生する。村民のマラリア発生状況を観察しながら、その予防対策を図る。また、現地での、電気、ガスなどがない生活が災害に対する抵抗性を与える可能性、及び参加者の鬱状態の克服効果がある可能性を追求するそのために、このボランティア活動の体験及びこの活動中での災害医学・感染症講義を現地で行い、その効果を確認する。

5 自然災害アーカイブの国際連携の強化と東日本大震災の震災記録の国際発信(新規)

研究代表者

柴山 明寛(情報管理・社会連携部門・災害アーカイブ研究分野)

所内共同研究者

ボレー・セバスチャン、佐藤 翔輔 、今村 文彦

所外共同研究者

Andy Gordon、森本 涼(ハーバード大学)、杉本 重雄(筑波大学)、Muzailin Afan(Syiah Kuala University)、Susann Baez Ullberg(National Defense College, Sweden)

研究の概要

みちのく震録伝では、国際連携としてハーバード大学エドウィン・O・ライシャワー日本研究所と共同で震災アーカイブの12万件の震災記録の連携やシンポジウムの共同開催、震災アーカイブを利用した授業の実施、研究者の交流などを実施してきた。また、アーカイブ国際シンポジウムの開催や国連防災世界会議パブリックフォーラム「災害教訓の伝承~アーカイブとメモリアルの役割とは~」を企画し、国内外の自然災害アーカイブの連携の強化を図ってきた。しかしながら、国際標準となる自然災害アーカイブのメタデータが基準化されておらず、相互の貴重な災害記録の連携がなされていない。また、東日本大震災の震災記録の国際発信についても不十分な点が数多くある。 そこで本研究課題では、自然災害アーカイブの国際連携の強化のために国内外の事例を基に自然災害アーカイブのメタデータの標準化と東日本大震災の震災記録の国際発信の強化を実施する。

6 被災地における「見える復興」広報活動の要件とは何か -東日本大震災における復興広報の「受け手」の評価を通して- (新規)

研究代表者

佐藤 翔輔(情報管理・社会連携部門・災害アーカイブ研究分野)

所内共同研究者

今村 文彦

所外共同研究者

井ノ口 宗成、中野 敬介(新潟大学)

研究の概要

東日本大震災の被災地では、発生から数年が経過しているなかで「見えない復興(復興の進捗が見えない)」という声が聞かれる。これまでの災害の広報に関する研究は、発災間もない応急期を対象にしたものが中心的であり、復興期に関する広報の実態や効果的な方法論に関する知見は多くない。申請者は先行研究で、東日本大震災で被災した自治体による復興広報活動に関する調査・分析を行い、現状やその課題を明らかにした。先行研究では、被災自治体がどのような手段・内容で復興広報活動を行ったかという「発信者」側からの実態は把握できたものの、その「受け手」側となっている被災者や支援機関等の広報の受信者による以上の復興広報発動の認識や評価は明らかになっていない。本申請は、適用された制度がほぼ類似する新潟県中越地震災害における復興の情報発信を照らしあわせながら、東日本大震災で被災自治体が行っている復興広報活動に対する、被災者や支援機関・団体の認識や評価に関する実態を明らかにすることを目的とする。これにより、復興広報のあり方が明らかになり、被災地の復興を情報発信の側面から貢献できる。

7 災害発生に備えた文化財所在情報の集約に向けた国際比較研究(新規)

研究代表者

天野 真志(人間・社会対応研究部門・歴史資料保存研究分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

北後 明彦(神戸大学)、奥村 弘、吉川 圭太(神戸大学大学院人文学研究科)、内田 俊秀(京都造形芸術大学)

研究の概要

文化財の所在情報およびその現状を把握することは、防災・減災体制を構築する上で、根元的な作業である。しかし国内に現存する文化財は、文化財指定の有無や官有・民間所在の相違、さらには建造物・考古的遺物などの不動産文化財と古文書や美術工芸品などの動産文化財の別によってその把握状況は大きく異なっている。 膨大な文化財を保有するイタリアにおいては、国内の多様な文化財を一元的に把握・管理するハザードマップの構築・運用が進められており、文化財行政に留まらない多機関との情報共有に基づき、都市景観も含めた文化財保存体制が構築されつつある。イタリア同様全国に多様な文化財を保有する日本においても、行政や民間諸機関との意見調整を通じてあらゆる文化財情報の把握・管理体制の構築は急務の課題である。本研究では、イタリアにおける文化財ハザードマップの構築状況を調査するとともに、同システムを構築したローマ国立修復研究所との技術交流を実施し、日本国内における状況との国際比較をおこなう。あわせて、阪神・淡路大震災から東日本大震災における文化財および都市景観の被害状況を検証するとともに、災害発生に備えた文化財ハザードマップの策定に向けた連携体制の構築を目指す。

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