東北大学災害科学国際研究所の使命は、東日本大震災における調査研究、復興事業への取り組みから得られる知見や、世界をフィールドとした自然災害科学研究の成果を社会に組み込み、複雑化する災害サイクルに対して人間・社会が賢く対応し、苦難を乗り越え、教訓を活かしていく社会システムを構築するための「実践的防災学」の体系化とその学術的価値の創成である。
そこで、本研究所の英知を結集して被災地の復興・再生に貢献するとともに、国内外の大学・研究機関と協力しながら、自然災害科学に関する世界最先端の研究を推進するために、特定プロジェクト研究【所内/拠点研究】の募集を行った。
ここでは、平成25年度特定研究プロジェクト【所内/拠点研究】として採択された研究課題を掲載する。
源栄 正人(災害リスク研究部門・地域地震災害研究分野)
大野 晋、王 欣
三辻 和弥(山形大学)、Dembrel Sodnomsanbuu(モンゴル科学アカデミー)
東日本大震災における早期地震警報システムの実態と観測記録に基づく適用性の検証を行うとともに、宮城県内複数の公共建築物に構造ヘルスモニタリング機能を有するリアルタイム地震観測装置を設置し、伝播経路途中の観測点の地震波形情報を共有化するネットワークを構築する。これらにより高精度なリアルタイム地震動予測を可能とする次世代早期地震警報システムの開発を行う。100万都市仙台や宮城県内陸部の都市や産業施設の地震対策に供する次世代型地域版早期地震警報システムを構築し、その利活用を図るとともに、海外への展開としてモンゴル国等へのシステムの構築や米国との国際交流を行う。
今村 文彦(災害リスク研究部門・津波工学研究分野)
平川 新、今井 健太郎、菅原 大助、佐藤 翔輔、蝦名 裕一、後藤 和久
原口 強(大阪市立大学)
1611(慶長16年)年の奥州地震による津波のメカニズムについて、平成24年度特定プロジェクト研究により、史料見直し・翻訳、津波数値解析を実施し、さらに堆積物調査により貴重なデータを得られ、その結果、仙台湾沖で発生した地震と日本海溝付近の地震が連動したタイプが評価された。今年度データを増やし解析を進めることにより、メカニズムの同定と断層の南限を評価する事で、より正確なマグニチュードの推定を行う。また、その成果を地域での防災計画や避難計画などに貢献することを目的とする。
越村 俊一(災害リスク研究部門・広域被害把握研究分野)
エリック・マス
山崎 文雄(千葉大学)、松岡 昌志(東京工業大学)、渡邊 学(宇宙航空研究開発機構)
平成24年度の研究成果を踏まえ、きたる南海トラフの巨大地震発生直後の災害救援活動に資する「広域被害把握技術」のフィージビリティ向上と社会実証を行う。特に、地震津波発生直後のリアルタイムシミュレーションによる広域被害推計とリモートセンシングによる被災地の探索と建物被害把握技術を高度化させ、きたる巨大災害発生直後の災害救援活動に資するための技術的要件と緊急観測計画を明らかにし、社会実装に向けた実証研究を行う。
杉浦 元亮(人間・社会対応研究部門・災害情報認知研究分野)
邑本 俊亮、佐藤 翔輔、野内 類、今村 文彦
阿部 恒之(東北大学大学院文学研究科)、本多 明生(東北福祉大学)
3.11震災では、被災・復旧・復興の様々な場面で、多くの人が様々な困難な状況をそれぞれの立場で克服してきた。本研究ではこの時発揮された「生きる力」について、様々な事例を包括的に分析し、状況・立場と認知特性との関係を脳内の情報処理特性にまで還元して、科学的な扱いが可能な一般論に整理する。これに基づいて、新しい防災・減災・復興のプロトコールを提案する。H24年度に震災当事者から得られた聞き取り調査の結果から、H25年度は生きる力の認知モデルを生成し、その妥当性を大規模質問紙調査によって検証する。
馬奈木 俊介(人間・社会対応研究部門・防災社会システム研究分野)
平川 新
田路 和幸(東北大学大学院環境科学研究科)、大東 一郎(東北大学大学院国際文化研究科)、堀江 進也(東北大学大学院環境科学研究科)、谷川 寛樹(名古屋大学)
今後の震災復興計画に対する政策提言を行うことを目指し、人間・社会が災害にどのように対応し、教訓を活かしていく社会システムを構築することを目的とする。特に本研究は現在提案されている防災・減災技術の工学的知見を踏まえた上で、社会科学、特に経済学、政策学の研究手法を用いることで災害サイクル・復興のあり方を分析する。そのために被災者・住民に対する大規模アンケートと付随する経済社会データを結びつけた定量分析を実施することで現状を把握した上で復興の社会システムを提案する。
今泉 俊文(災害理学研究部門・地盤災害研究分野)
岡田 真介
楮原 京子(山口大学)、八木 浩司(山形大学)、徐泊 告徳(国立台湾大学)
東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)後に急変した地殻応力場の影響で、内陸活断層の活動性を再評価する事が求められている。山形盆地の活断層を対象に、この地域の活断層の地下構造を明らかにして、変位様式・活動履歴・変位速度などの資料とあわせて活動性を評価し、類似の構造を持つ台湾の活断層の活動性評価と比較研究を行う。
丹羽 雄一(災害理学研究部門・国際巨大災害研究分野)
遠田 晋次
須貝 俊彦(東京大学)、白井 正明(首都大学東京)
東北地方太平洋沿岸では、2011年の地震時の沈降、検潮記録による過去約100年間の沈降が観測されている。一方、海成段丘地形の存在からは10万年スケールでの継続的隆起が既存研究によって報告されている。しかし、2011年地震時の沈降量が大きかった宮古~牡鹿半島にかけての三陸海岸沿いは海成段丘の分布はきわめて限定的で、既往文献の段丘形成年代の推定に関して不確実性が大きい。そのため、本研究では空中写真の再判読と現地調査を通じて段丘地形を見直し、正確な編年を通じて10万年スケールでの地殻変動を正確に復元する必要がある。また、河川沿いに分布する沖積平野地下の埋没地形にも数千から数万年スケールでの地殻変動の証拠が残されていることが期待される。本研究では、東北地方太平洋沿岸地域を対象に段丘地形や埋没地形の高度分布、編年に基づいて、数千年から10万年スケールでの地殻変動を復元する。得られた結果と観測記録や歴史記録から明らかな過去数百年の地殻変動の関係から、プレートの沈み込みによる歪み蓄積・解放の過程を明らかにする。
服部 俊夫(災害医学研究部門・災害感染症学分野)
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デイニル・プシュパラール(東北大学大学院国際文化研究科)、賀来 満夫(東北大学附属病院)、宇佐美 修(東北大学附属病院)、トム・ルンジン(ウプサラ大学)、狩野 繁之(国立国際医療研究センター研究所)、鈴木 定彦(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)、佐藤 寿夫(日本微生物研究所)、Peter Prompton(Health of the National Institutes of Health)、Elizabeth Telan(STD AIDS Cooperative Central Laboratory)、Bachti Alisjahbana(パジャジャラン大学病院)、Srivicha Krudsood(マヒドン大学)、Andros Theo(UTH)、Moonga mwanamwela(NMCC)、張 暁燕'(復旦大学)、凌 虹(ハルピン医科大学)
災害における感染症対策は、resource limitedな状況での感染症対策を基本とする。対象としては蚊媒介感染症 人獣共通感染症を災害直後の感染症として、中長期的視点から被災者の密集した生活環境での災害感染症の早期発見を研究対象とする。手法としてはLAMP法の開発、バイオマーカー探索、及び主要な細菌(結核、病原性大腸菌など)は東北地方のタイプを解析しておく。研究を通じてWHOなどとの連携体制構築と国内外の感染症対策専門家の育成も目指す。教育の場はhuman security(医学系)修士課程英語コースを拡充する。さらに、感染症流行時のコミュニケーションの特徴を明らかにする研究を行う。
富田 博秋(災害医学研究部門・災害精神医学分野)
兪 志前、佐藤 翔輔、柴山 明寛、今村 文彦
吉田 弘和(宮城県子ども総合センター)、金 吉晴(国立精神・神経医療研究センター)、中島 聡美(国立精神・神経医療研究センター)、Edna Foa(ペンシルバニア大学)、Katherine Shear(コロンビア大学)、Marylene Cloitre(ニューヨーク大学)
災害後の急性期や復興期に地域の中で災害関連精神疾患への罹患者を把握し支援していく体制整備のあり方の検討は重要であり、同時に難しい課題であった。本研究は申請者らがこれまでに取り組んできた住民ベースでの精神保健実態把握を補完するため、(1)災害関連沿岸部医療機関への受診者を対象とする調査研究を行うこと、および、(2)被災地域での他の団体の精神保健活動情報をアーカイブすることにより、急性期や復興期に被災者や災害関連精神疾患への罹患者が如何に精神保健活動や医療機関を利用したかを分析し、災害関連精神疾患への支援体制整備のために有用な情報を抽出すると同時に、災害関連精神疾患者の病状評価に有用な指標を特定する。
伊藤 潔(災害医学研究部門・災害産婦人科学分野)
三木 康宏
鈴木 貴(東北大学大学院医学系研究科)、笹野 公伸(東北大学大学院医学系研究科)、田中 創太(東北大学附属病院)、田勢 亨(宮城県立がんセンター)
ストレスや生活環境は、女性の内分泌環境やホルモン依存性婦人科癌に関与する可能性がある。そこで震災に伴うストレスとその後の生活環境変化が、女性の内分泌動態や婦人科腫瘍の発生進展に与える影響を地域別(被災地とそれ以外)と時系列(震災前後)で検証する。婦人科悪性腫瘍では分子生物学・ホルモン動態からみた検討も行う。対象として宮城県の婦人科がん検診データ約12万検体および悪性腫瘍治療検体を用い、今回の事象と婦人科症状や疾患(特に悪性腫瘍)との関連性の解析から、震災に関連して発症する婦人科疾患の特徴の解明と防止策を検討する。
鈴木 敏彦(災害医学研究部門・災害口腔科学分野)
小坂 健
相田 潤(東北大学大学院歯学研究科)、千葉 美麗(東北大学大学院歯学研究科)、清水 良央(東北大学大学院歯学研究科)、高橋 温(東北大学附属病院)、篠田 壽(東北大学名誉教授)、福本 学(東北大学加齢医学研究所)
福島県および宮城県に在住するか、発災直後に居住していた幼小児を対象とし、永久歯列への交換過程で脱落する乳歯を十分な説明と同意のもとで収集する。それらの乳歯に蓄積した放射性物質を物理化学的・生物学的に評価することで内部被曝歴を個体ごとに明らかにし、将来発症が危惧される疾患と福島第一原子力発電所災害による放射線の影響との因果関係を評価するための基礎資料を提供する。
小野田 泰明(情報管理・社会連携部門・災害復興実践学分野)
佐藤 健、平野 勝也、本江 正茂、今井 健太郎、小林 徹平、姥浦 道生
佃 悠(東北大学大学院工学研究科)、北原 啓司(弘前大学)、野原 卓(横浜国立大学)
本研究は、震災で壊滅的被害を受けた石巻市市街地部を主な対象地として、質の高い空間の再・創生のための効率的効果的な事業、規制、誘導の実施に寄与することを目的として、都市の物的構成要素の再構築に必要な情報整備のための研究活動を行うと共に、そこで得られた情報等を活用した市役所・住民まちづくり組織等に対する復興まちづくりの実践的支援活動を、所内外の研究者等と連携しつつ行う。
小野 裕一(情報管理・社会連携部門・社会連携オフォス)
泉 貴子、池田 菜穂、研究所内教員
地引 泰人(東京大学大学院)
国際機関における防災政策と活動をデータベース化し、ポスト兵庫行動枠組み策定にあたって議論される可能性が高い「数値目標」を掲げているかを分析する。さらに研究所の7部門36分野にわたる実践的防災学の成果を、特に東日本大震災から得た教訓に基づいてブレンドし、日本政府や関連の研究機関と連携しながら、国連などの国際機関が行う国際防災政策に積極的に反映させ、世界の防災・減災活動に寄与・貢献することを目指す。
大野 晋(災害リスク研究部門・地域地震災害研究分野)
源栄 正人、王 欣
三辻 和弥(山形大学)
仙台市内において、東日本大震災の面的地震動の推定を行い、建物被害・地盤被害に加えて土木構造物やライフライン被害の調査結果を集約した上で、被害種別ごとに地震動特性と振動被害の関係について検討し、巨大地震災害における両者の関係を明らかにする。本研究で得られる結果は東日本大震災の複雑な振動被害の要因の解明に寄与するとともに、今後の都市の耐震性能向上のためのマイクロゾーニングの基礎資料となる。
今井 健太郎(災害リスク研究部門・津波工学研究分野)
今村 文彦
原田 賢治(静岡大学)、坂本 知己(森林総合研究所)、野口 宏典(森林総合研究所)
津波による海岸樹木の被害リスク評価の高度化のために、海岸樹木を対象とした現地実験を行う。ひとつは倒伏耐力実験であり、H24 年度に実施した計測結果を踏まえて群生環境などを考慮した倒伏耐力評価式の高度化を行う。もうひとつは海岸樹木の作用流体力評価に必要な体積や表面積について、レーザープロファイラ技術を用いた精密計測を行いた黒松の体積・表面積概算式の高度化を行う。これらの結果を津波数値解析に実装し、2011年東北地震津波での事例検証を行う。加えて、黒潮町入野松原に対して海岸林被害のリスク評価を行い、実践的な対応策を津波工学、防災林学や実務的視点などから検討する。
真野 明(災害リスク研究部門・災害ポテンシャル研究分野)
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田中 仁(東北大学大学院工学研究科)
仙台湾南部海岸では、2011年津波により大規模な浸食(津波湾)が発生し、海岸堤防が高密度で破堤した。本研究は、大規模浸食の実態を把握し、この発生メカニズムを数値モデルを使って解明する。次に沿岸水路による戻り流れの制御機能に着目し、沿岸水路を設けることにより、浸食がどのように軽減されるかを明らかにする。これらの知見をまとめ、仙台湾南部海岸で、ねばり強い海岸堤防を復興する方法についての提言を行う。
有働 恵子(災害リスク研究部門・災害ポテンシャル研究分野)
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Sompratana Ripthing(Kasetsart University)
本研究は、日本における2011年津波およびタイにおける2004年津波の前後の仙台湾海岸とタイ南西部の海岸の海浜地形解析により、巨大津波による海浜変形とその後の回復過程を調べ、その特性を解明することを目的とする。巨大津波被災後の海浜変形とその回復過程を、異なる巨大津波により被災した海岸で比較した研究は世界的に類がなく、科学的に極めて貴重な知見が得られる。これにより、被災海岸における今後の海浜回復過程を予測が可能になるとともに、今後の海岸管理に資する重要な教訓を国内外に提示する。
呉 修一(災害リスク研究部門・災害ポテンシャル研究分野)
ブリッカー・ジェレミー、福谷 陽
Mohammad Farid(バンドン大学)
2013年1月、インドネシアの首都ジャカルタで熱帯モンスーンに伴う豪雨により大規模な洪水被害が生じた。本研究課題の目的は、データの収集、リアルタイム洪水予測モデルの構築・適用、住民・行政への聞き込み調査、堤防・水路などの現地調査を通じて、実践的防災学の観点からジャカルタ洪水被害の軽減を目指すものである。本研究より得られた知見・手法を日本・海外に発信することで世界の洪水災害の軽減に寄与するとともに、今後の洪水災害時に当研究所が迅速かつ有効な情報提供、調査・支援が行える枠組みを構築するものである。
後藤 和久(災害リスク研究部門・低頻度リスク評価研究分野)
菅原 大助
金丸 絹代(マサチューセッツ大学)、柳澤 英明(東北学院大学)
南東北(宮城県以南)から関東地方太平洋岸の沿岸湖沼を対象として数m長のコア試料掘削を行い、高解像度分析と数値解析を実施することで、同地域の日本海溝沿いでの巨大津波履歴と規模を推定する。これにより、東北地方の沖合で発生する津波の関東地方での影響、およびその逆の事例について評価を行う。特に、将来の発生が懸念される常磐・外房沖の海溝型地震に由来する巨大津波の東北地方太平洋岸への影響評価を重点対象とする。
菅原 大助(災害リスク研究部門・低頻度リスク評価研究分野)
後藤 和久
西村 裕一(北海道大学)、Catherine Chague-Goff(ニューサウスウェールズ大学)、James Goff(ニューサウスウェールズ大学)
三陸沿岸では確実性の高い古津波堆積物の報告がわずかであり、仙台湾沿岸における古津波との関連、頻度・規模の違いは明らかにされていない。本研究では、三陸沿岸および仙台湾沿岸地域を対象に、国際的な協力関係のもと、高水準の津波堆積物調査を行い、東北地方沿岸における巨大津波の規模と波源域の時空間的分布を解明する。更に、現地調査で得た堆積物データに基づいて津波堆積物形成の数値シミュレーションを行い、仙台平野から三陸沿岸における古津波の規模と波源域を明らかにする。
野内 類(人間・社会対応研究部門・災害情報認知研究分野)
杉浦 元亮、邑本 俊亮、佐藤 翔輔
関口 敦(東北大学東北メディカルメガバンク機構)、秋元 頼孝(東北大学加齢医学研究所)
緊急時(例えば震災発生時)にリスク認知を正確に行うことができれば、避難行動などの適切な行動を行うことができ、人的・社会的・物質的被害を最小限に抑えることができる可能性がある。しかしながら、緊急時のリスク認知に関する心理・神経科学的研究は少なく、そのメカニズムについて不明な点が多い。本研究の目的は、1)面接・アンケート調査、2)心理実験、3)fMRI実験を行い、緊急時に人がどのように自然災害や事故などの危険やリスクを評価するのかの心理・神経基盤を明らかにすることである。最終的に一連の研究の成果をまとめ、今後の災害予防教育や災害時の救助活動等への応用を目指す。
奥村 誠(人間・社会対応研究部門・被災地支援研究分野)
高橋 信、杉浦 元亮、島田 明夫、金 進英、今井 健太郎、佐藤 翔輔
上原 鳴夫(東北福祉大学)、本多 明生(東北福祉大学)
災害発生後の緊急対応時においては、被災実態や他主体の行動に関する情報が入手できない中での判断を行う必要があり、無人地域に支援物資を送るなどの不整合が生じる危険性がある。本研究ではこのような不整合を防ぐための情報交換と被災状況下での実施可能性を検討するための、多主体が参加するゲーミング実験設備を災害研新棟に導入するための研究を行う。本年度は、自治体等からの具体的なニーズの分析を行い、ボーイング社の持つ実験技術を災害対応型に発展させる方針を明確化して設備の基本設計を行い、別途設備費で購入する機器によりシステムを構成して、基本的な性能の評価を行うことを目的とする。
平川 新(人間・社会対応研究部門・歴史資料保存研究分野)
佐藤 大介、蝦名 裕一、天野 真志
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東日本大震災の発生から2年を経たが、今もなお被災した歴史資料への応急処置対応が続いている。本研究では主に文書資料を対象とする実践活動により被災地支援を継続しつつ、得られた知見を素材として下記の研究を実施し、日本列島の地域社会に残る歴史資料の防災・災害対応の体系化に資する技術・組織論的な知見を得る。①津波などで物理的に被災した文書資料の応急処置方法の体系化に関する研究 ②デジタル記録化と原本保存による文書資料の防災対応に関する研究 ③歴史資料保全技術の普及に関する研究
寺田 賢二郎(地域・都市再生研究部門・地域安全工学研究分野)
石坂 公一、花岡 和聖、加藤 準治、越村 俊一、柴山 明寛、森口 周二
樫山 和男(中央大学)、浅井 光輝(九州大学)、車谷 麻緒(茨城大学)
将来的な開発が期待される災害科学情報管理システム(仮称:DeSIS)における「重層的見える化」機能の開発へ向けたパイロットプログラムとして、地震・津波シミュレーション、リモートセンシング画像解析、人口・土地利用計画、震災映像データ保存などの研究成果を4次元災害科学情報コンテンツとして統合的に管理し、3D投影により立体視することで各事象を時間・空間的に俯瞰しながら分析できるシステムのプロトタイプを提示する。
田所 諭(地域・都市再生研究部門・災害対応ロボティクス研究分野)
竹内 栄二朗
大野 和則(東北大学未来科学技術共同研究センター)、Vijay Kumar(University of Pennsylvania)、Nathan Michael(Carnegie Mellon University)
インフラや大規模産業設備の高所の被災状況や老朽化の調査を目的とし、超小型飛行ロボットが構造物の壁や配管に留まりながら外観詳細検査を行えるための、ロボットの移動技術を研究開発する。飛行機能と構造物への固着離反機能の併用によって、風に対するロバスト性を確保し、カメラぶれ等を防止し、長時間の検査を可能にする。この技術によって、高所調査の大幅な時間短縮、安全化、低コスト化を図り、耐震補強や修繕等を進めやすくする。
飯沼 卓史(災害理学研究部門・海底地殻変動研究分野)
日野 亮太、木戸 元之
伊藤 喜宏(東北大学大学院理学研究科)
絶対変位を検出できるGPS音響結合方式の海底地殻変動観測と基線間の相対変位を精密に計測できる海底間音響測距観測の両方を同時に、かつ大深度海域で実施可能な機器を開発し、2011年東北地方太平洋沖地震の最大すべり域である海溝軸に設置し、海溝軸近傍での地震後の余効変動および再固着の状態を直接計測し、すべりが海溝軸まで達する海溝型超巨大地震の本質を明らかにする。
趙 大鵬(災害理学研究部門・火山ハザード研究分野)
岡田 知己、今村 文彦、豊国 源知、岩崎 俊樹
海田 俊輝(東北大学大学院理学研究科)、出町 知嗣(東北大学大学院理学研究科)、平原 聡(東北大学大学院理学研究科)、プリマ オキ ディッキ(岩手県立大学)、松田 浩一(岩手県立大学)、海野 徳仁(東北大学未来科学技術共同研究センター)
最新の3D映像技術であるMR(Mixed Reality)システムを用いて、実際には見ることができない、あるいは見ることが困難な現象(例えば、地球内部の震源分布、プレートの形状、津波、火山噴火、台風など)を表示する世界初の3D映像表示システムを開発する。各種の観測データやシミュレーション結果を3D表示することにより、自然災害を引き起こす様々な現象の発生機構の理解を深めることが可能となる。さらに、自然現象の内部にまで踏み込んでいくような疑似体験が可能となるため、子供たちが自然災害の発生の仕組みに興味を持ち、それを理解するための防災教育にとって非常に有効なツールとなることが期待できる。完成したシステムは災害科学国際研究所に展示して広く公開する。
岡田 真介(災害理学研究部門・地盤災害研究分野)
今泉 俊文
横山 隆三(岩手大学名誉教授)、住田 達哉(産業技術総合研究所)、牧野 雅彦(産業技術総合研究所)、池田 安隆(東京大学)、楮原 京子(山口大学)
東北地方太平洋沖地震の発生を受けて、内陸活断層の評価は重要性を増している。東北日本弧の地下深部には日本海拡大時の正断層構造が残存している。この正断層構造は、現在の短縮変形に大きな制約を与えており、地表の活断層分布、形状、および性状に深く関わっている。本研究では、変動地形学的に得られる地表活断層と、ブーゲ重力異常分布から得られる地下構造とを丹念に対比することにより、これらの対応関係を明らかにする。
山崎 剛(災害理学研究部門・気象・海洋災害研究分野)
岩崎 俊樹
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数値気象予報モデルの高度利用手法を開発し、より正確な気象予測とそれに基づく気象災害の軽減を目指す。領域を絞った高解像度予報を行うダウンスケーリングの諸問題に取り組む。激しい大気現象の例として台風の数値シミュレーションを扱う。数値モデルの検証のため、青葉山キャンパスに自動気象観測装置を設置し、データをリアルタイムでIRIDeSのHP上に公開するとともに、学内外での研究、教育への活用を図る。
土屋 史紀(災害理学研究部門・宙空災害研究分野)
小原 隆博、三澤 浩昭
佐藤 光輝(北海道大学)、鶴島 大樹(東北大学大学院環境科学研究科)、高橋 幸弘(北海道大学)
落雷放電時の流れる電流の誘導磁界成分をELF帯(3-300Hz)に感度を持つ磁力計によって測定し、観測から落雷電流波形から落雷エネルギーを推定する手法を確立する。このために、(1)国内2か所へのELF磁場計測点の新設、(2)落雷電流波形の直接観測(新潟県尾神岳)とELF磁場波形観測の詳細比較を行い、この手法の科学的・実用的な適用可能範囲を明らかにする。更に、落雷災害把握のための落雷エネルギー速報システムのプロトモデルを開発し、試験運用を開始する。
江川 新一(災害医学研究部門・災害医療国際協力学分野)
佐々木 宏之
久志本 成樹(東北大学大学院医学系研究科)、中川 敦寛(東北大学大学院医学系研究科)、金谷 泰宏(国立保健医療科学院)
東日本大震災における避難所・病院での診療録の解析を行い、災害時の医療ニーズをあきらかにすることで、大規模災害時でも機能不全に陥らないような東北大学病院のBCP構築をモデルとしてその特性を明らかにする。一方、災害時に発生する病院の機能不全を遠隔地で把握し、適切な支援を適切な場所に振り分けるための機能情報ネットワークのモデルを形成する。
千田 浩一(災害医学研究部門・災害放射線医学分野)
稲葉 洋平
武田 賢(東北大学大学院医学系研究科)、佐藤 行彦(東北大学大学院医学系研究科)、樫村 康弘(東北大学大学院医学系研究科)、八島 幸子(東北大学大学院医学系研究科)
福島原発事故を契機に国民の多くは、放射線に対して大きな不安を募らせている。この主要因は、放射線に関する誤った知識や情報整理が不十分であることが考えられる。また福島県内の病院では、現在もデジタルX線写真に、原発事故の放射性降下物に起因した黒点が発生し問題となっており、被曝の懸念を助長する要因となっている。そこで申請者は昨年の初期検討を踏まえて、(1)放射線の基礎知識の普及啓発の研究、(2)X線写真上に生じた黒点に関する研究、の2項目について福島の現状を把握しながら更に詳細に研究する。
三木 康宏(災害医学研究部門・災害産婦人科学分野)
伊藤 潔
五十嵐 勝秀(国立医薬品食品衛生研究所)、種村 健太郎(東北大学大学院農学研究科)、鈴木 貴(東北大学大学院医学系研究科)、高木 清司(東北大学大学院医学系研究科)
大災害後の様々なストレスは内分泌機能の障害を引き起こし、特に女性生殖機能に対する影響は必至かつ深刻である。しかし、災害によるストレスと婦人科疾患との関連を科学的に検証した報告はない。本研究では災害ストレス動物実験系を構築し、子宮におよぼす影響を検討する。動物実験で得られた結果に対し、実際のヒト子宮組織や血液を用いた検証を行い、災害ストレスによる婦人科疾患発症予測マーカーを確立する。以上の結果から、震災ストレスによる婦人科疾患発症予防に関する情報を、ここ被災地から国内外に発信することができる。
栗山 進一(災害医学研究部門・災害公衆衛生学分野)
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栗山 真理子(日本患者会情報センター)、石黒 真美(東北メディカル・メガバンク機構)
平成24年11月に被災地の子どもの健康に関するアンケート調査を行った(別予算)。その結果気管支喘息あるいはアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患をもっている子どもで、症状が極めて重いにも関わらず、医療機関を受診していない子どもの存在が明らかとなった。本研究では医療機関を受診しない理由を精査して、例えば受診必要性の認識不足、あるいは震災による環境変化・経済的な理由など被災地特有の受診行動回避の理由を明らかにする。さらに明らかとなった理由に基づいて、日本患者会情報センターのノウハウを用い、行動変容に資するパンフレットなどの資材開発などコミュニケーションツールの開発を行って、その効果評価を行う。
柴山 明寛(情報管理・社会連携部門・災害アーカイブ研究分野)
佐藤 翔輔、今村 文彦、佐藤 健
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本研究では、「みちのく震録伝」の産学官民連携の社会展開ワーキング(2012年度に3回実施)で議論を重ねてきた「防災・減災教育に資するための社会生活に内包させた循環型震災アーカイブ仕組み作りと震災記録から防災・減災の気づきを与えるための仕組み作り」を被災地内外でワークショップを開催しながら循環型震災アーカイブのモデル構築と防災・減災教育のための利活用モデルの構築を行う。
佐藤 翔輔(情報管理・社会連携部門・災害アーカイブ研究分野)
今村 文彦、柴山 明寛、平川 新
阿部 恒之(東北大学大学院文学研究科)、林 勲男(国立民族学博物館)、阪本 真由美(人と防災未来センター)、宇田川 真之(人と防災未来センター)、マリ・エリザベス(人と防災未来センター)、高森 順子(人と防災未来センター)、山崎 麻里子(長岡震災アーカイブセンター)
東北大学災害科学国際研究所では、東日本大震災アーカイブの構築を精力的に行なっている。震災発生から現在までは、データや情報を収集し、保存・検索システムの構築や利活用を行なっているが、災害の記録・記憶やアーカイブを取り巻く「学問化」に関する検討には至っていない。本研究は、東日本大震災に限らず、これまで設立されてきた様々な災害に関する記憶・記録に関する拠点間(ミュージアム、資料館、アーカイブ等)における交流と連携によって、以上を取り巻く収集・保管・活用に関する調査および整理を行い、災害アーカイブ学の構築について探索することを目的とする。
安倍 祥(地震津波リスク評価寄附研究部門)
今村 文彦、サッパシー・アナワット、保田 真理、福谷 陽
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東日本大震災の津波被災地域では、被災した多くの建築物が解体されたために津波警報時の避難場所が高台等に限られる状況にあること、財産および津波後の生活に欠かせない交通手段として自動車を利用した避難が震災後も多数発生していること、そして数多くの復旧復興事業が臨海地域に展開しており避難交通が多数発生する状況にあるなど、震災以前とは異なる津波避難課題を抱えている。本研究では、これらの諸課題も踏まえながら被災地域の復興段階に応じた避難計画および避難方法を再構築していくための課題解決・実践型の手法構築に取り組む。東日本大震災や以後の津波避難事例等を踏まえた避難実態と課題の整理を行い、解決のための工学的手法の研究、そして地域における避難方法等の議論を通じ課題解決につなげるための実践的手法の研究に取り組む。
保田 真理(災害リスク研究部門・津波工学研究分野)
今村 文彦、サッパシー・アナワット
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副読本にとどまっている減災教育教材をさらに工夫し、災害時に児童生徒が能動的な判断と行動を取ることができる能力を高めるツール開発をする。そのため、自身を守るには如何に行動するべきかを思考する場(場面)を設定し、興味・関心を持って取り組める「仕掛け」を導入する。今回、国内外での学校において、開発された減災教育ツールを使ったモデル授業を実施し、その前後でアンケート調査を行うことで教育効果を検証する。さらに、追加アンケートやホームワークを与え、「話合いの場」を提供することにより家庭内への展開を試みる。
エリック・マス(災害リスク研究部門・広域被害把握研究分野)
越村 俊一
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The present study aims to develop a method of high performance computation for agent based evacuation models of tsunami evacuation. It is required for the tsunami disaster mitigation to evaluate many possible scenarios of evacuation and the effect of new policies of mitigation. An agent based model can perform the analysis of hundreds of scenarios with thousands of agents; however computation time is still a limitation of this technique for its practical application. A comprehensive evacuation model can be applied to evaluate at risk areas or areas under reconstruction in Japan against future tsunami disasters.
佐藤 源之(災害リスク研究部門・広域被害把握研究分野)
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藤澤 敦(東北大学埋蔵文化財調査室)、金田 明大(奈良文化財研究所)、高橋 一徳(東北大学大学院理学研究科)
東日本大震災の津波被害により、宮城・岩手など東北各県の沿岸部の多くの市町村で住宅地の高台移転が計画されている。高台移転では移転用地の遺跡調査が条例により義務付けられているが、膨大な数の遺跡調査が必要となることから事業の遅延が危惧される。本研究では地中構造や埋設物を可視化できる地中レーダを遺跡調査に用いることで、発掘必要性の検討や効率的な発掘作業の計画に役立てられることを実証する。そして自治体への技術供与などにより遺跡調査を効率化し、高台移転実現への貢献をめざす。また文化庁、奈良文化財研究所と協力し、継続的な文化財保護のための遺跡調査技術として地中レーダを地方自治体が利用できる仕組みを構築する。
ブリッカー・ジェレミー(災害リスク研究部門・国際災害リスク研究分野)
今井 健太郎
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Hydrodynamic forces on structures (bridge decks and breakwaters) can cause structural failure during tsunamis and river floods. Damming due to debris and trash can further aggravate these forces, as well as inhibit the performance of other structures, such as flood gates. The proposed research uses experimental methods to investigate the effects of forces, debris, and trash on the performance of hydraulic structures, and to help develop design methods to mitigate damage from future events.
金 進英(人間・社会対応研究部門・被災地支援研究分野)
奥村 誠
倉内 文孝(岐阜大学)
本研究では、徒歩、自動車の2つの交通機関(デュアルモード)を想定した最適避難計画について検討を行う。限定された条件下の災害リスクと所要時間コストを最小化する数理計画的アプローチと現実の避難行動に近い状況を再現可能なシミュレーションアプローチを融合することで、現実性および実用性の高い避難計画を策定可能なフレームワークを構築する。さらに、新たな避難所の位置や避難に必要な道路整備などに関しての検討を進め、地域の防災力向上に寄与することを目指す。
佐藤 大介(人間・社会対応研究部門・歴史資料保存研究分野)
平川 新、蝦名 裕一、天野 真志
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近代的観測技術が整備される以前の地震・津波に関する情報は、その災害について記した記録や絵画が重要な手がかりとなる。本研究では歴史地震津波を初めとする災害関係の文字記録や絵画を収集し、それらを再検証する。そのことで日本列島の地震・津波災害頻度や、災害の地域的特徴、災害環境等についての復元を目指す。
増田 聡(人間・社会対応研究部門・防災社会システム研究分野)
佐藤 健、小野 裕一、吉田 浩
大滝 精一(東北大学大学院経済学研究科)、桑山 渉(東北大学大学院経済学研究科)、高浦 康有(東北大学大学院経済学研究科)
東日本大震災は津波被災地を中心に壊滅的な物的被害をもたらし、今後、膨大な復旧・復興事業による建設需要の発生が見込まれる。地域建設業はこれらの需要対応に迫られることになるが、単に一時的なインフラ建設需要に対応するにとどまらず、復興事業を資本蓄積や技能高度化、構造改革の契機として、将来的には地域住民支援型のビジネス展開を強化していく必要がある。以上の問題意識から、東日本大震災からの復興事業とコミュニティ再生の実態をフォローしながら、「本当に、地域住民の生活に根ざした共益型施設(やサービス)の建設・運営・維持・管理を担いうる建設産業が成立しうるのか」を検討するための端緒を開くことが、本研究の目的である。
井内 加奈子(人間・社会対応研究部門・防災社会国際比較研究分野)
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Robert Olshansky(University of Illinois)
被災地の生活再建には長期の取り組みが必要不可欠である。東日本大震災からの再建では、将来的に起こりうる津波被害の軽減を考慮に入れた再建政策(土地利用計画と実施プログラム等)はいち早く打ち出された。しかし、広域かつ甚大な被災であったため、地理的・社会的特性や計画プロセス等、多様な要素により再建は長期化・複雑化しており、停滞感が増幅している地域も少なくはない。本研究は、災害から3年目における、地域再建の進展に関する実態を把握し、上位政策と再建プロセスの整合性や隔たりを明らかにすることを目的とする。その上で、再建課題に即した必要な対応策を、世界各国の事例を考慮に入れつつ提案する。本研究を起点として、今後世界各国で起こりうる大災害からの生活再建におけるベンチマークの設定と、政策デザインのためのガイドラインの構築に寄与することを目指す。
石坂 公一(地域・都市再生研究部門・都市再生計画技術分野)
花岡 和聖
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前年度までに開発した被災地特性推計・計測システムを用いて、東日本大震災被災地域に加えて、首都直下型地震、東海・東南海地震による被災想定地域について、基礎的な「小地域(町丁目や基本単位区(50世帯程度))」単位での社会・経済データの推計を行う。また、これを用いて地域の居住者特性を把握し、想定される地震、津波危険度と重ね合わせることで、地域の被災度と居住者特性を踏まえた詳細な被災推定と対策のための課題の抽出を行う。
姥浦 道生(地域・都市再生研究部門・都市再生計画技術分野)
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本研究は、地区レベルの詳細かつ具体的な復興土地利用計画の策定が進められてきていることを背景として、第一にそのような復興土地利用計画を横断的に比較検討することを通じて、その基本的内容及び課題を網羅的かつ体系的に把握し、計画論的または制度論的解決策を探ること、第二に、それをハリケーンカトリーナ被災地の復興土地利用計画・規制及びその運用実態と比較することを通じて、我が国の復興土地利用計画に位相を明らかにすると共に、その有する課題の解決策の示唆を得ることを目的として、遂行する。
花岡 和聖(地域・都市再生研究部門・都市再生計画技術分野)
石坂 公一
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東日本大震災の被災地での復興計画や将来の大規模な地震被害想定の策定において、詳細な空間スケールでの人口・土地利用データベースは不可欠である。本研究では、空間的マイクロシミュレーションと呼ばれる手法を用いて、土地利用と人口のメッシュデータの推計を行う。そして、これらデータのWeb配信やまちなみ三次元モデル化を通じて、復興計画・被害想定における人口・土地利用データベースの実践的活用を目指す。
加藤 準治(地域・都市再生研究部門・地域安全工学研究分野)
寺田 賢二郎
京谷 孝史(東北大学大学院工学研究科)
東日本大震災の特徴は、本震の地震動が東日本全域で6分以上、長周期地震動に至っては10分以上の長い揺れが継続したことである。このような背景から、構造物に加わる地震エネルギーを長い揺れの中でも時々刻々吸収できる先端的な金属材料の開発が期待されている。本研究ではこれまでに蓄積した金属材料の経験則に加え、マルチスケールトポロジー最適化という新しい数値解析法を開発することで、構造物に伝わる地震エネルギーを低減させる微視的構造を有した先端材料の開発に貢献するものである。
竹内 栄二朗(地域・都市再生研究部門・災害対応ロボティクス研究分野)
田所 諭
大野 和則(東北大学未来科学技術共同研究センター)
道路やトンネル、橋梁等の損傷・崩落等事故の原因調査やその予測に関する研究を行うためには広域の長期的な情報が必要である。本申請では一般車輛により地物表面の形状および高解像度画像を高速走行しながら取得する装置およびその手法の研究開発を行う。高速走行しつつ高解像度画像を撮影するためにはブレやボケ等に対応する必要があり、また移動経路が毎回異なるため比較のためには適切な射影を行う必要がある。本申請では計測装置開発に加え、動作情報に基づきブレから元画像を復元する手法、および、時系列での調査を行うための形状による位置同定等を行い、都市内の任意箇所のヒビや形状変化等の時系列変化を観察可能とすることを目指す。
木戸 元之(災害理学研究部門・海底地殻変動研究分野)
飯沼 卓史、和田 育子、日野 亮太
伊藤 喜宏(東北大学大学院理学研究科)、望月 公廣(東北大学大学院理学研究科)、小原 一成(東北大学大学院理学研究科)、Laura Wallace(University of Texas USA)、Stuart Henrys(GNS Science)、Stephen Banister(GNS Science)、Bill Fry(GNS Science)
ニュージーランド北島東方沖のヒクランギ沈み込み帯において、海底圧力計(OBP)およびGPS・音響結合方式(GPS/A)と海底間音響測距方式による海底総合地殻変動観測をH24年度からH26年度(計3カ年)で実施する。これにより、同沈み込み帯で繰り返し発生するスロースリップに伴う地殻変動を観測し、スロースリップ域の詳細な空間的広がりを推定する。また、日本海溝との比較研究に基づき、津波地震による津波ハザードを評価する。
和田 育子(災害理学研究部門・海底地殻変動研究分野)
木戸 元之、飯沼 卓史、岡田 知己、内田 直希、日野 亮太
Glenn Spinelli(New Mexico Institute of Mining and Technology)、伊藤喜宏(東北大学大学院理学研究科)
沈み込み帯プレート境界における、地震性・非地震性滑りイベントや低周波微動の発生を規定する物理的条件の把握を目的とし、熱流量及び地殻変動に関する観測データ、地震学的知見(地震波速度構造・震源分布など)を制約条件に含めて数値計算を行い、東北日本におけるプレート境界とその周辺の三次元的な温度構造と水の分布を推定する。断層の摩擦特性は温度に依存し、また、間隙水圧の増加は断層を滑りやすくするため、温度と間隙水圧の推定結果から、プレート境界面での滑り様式・滑り分布とイベント発生頻度に関する理解を深めることができると期待される。
岡田 知己(災害理学研究部門・地震ハザード研究分野)
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山本 希(東北大学大学院理学研究科)、市來 雅啓(東北大学大学院理学研究科)
宮城県南部地域に分布する双葉断層などの活断層周辺の地震活動や蔵王山などの活火山の火山活動およびそれらに対する東北地方太平洋沖地震の影響について検討を行う。
内田 直希(災害理学研究部門・海底地殻変動研究分野)
岡田 知己
太田 雄策(東北大学大学院理学研究科)、大久保 寛(首都大学東京)、松澤 暢(東北大学大学院理学研究科)、中島 淳一(東北大学大学院理学研究科)、矢部 康男(東北大学大学院理学研究科)
絶対変位を検出できるGPS音響結合方式の海底地殻変動観測と基線間の相対変位を精密に計測できる海底間音響測距観測の両方を同時に、かつ大深度海域で実施可能な機器を開発し、2011年東北地方太平洋沖地震の最大すべり域である海溝軸に設置し、海溝軸近傍での地震後の余効変動および再固着の状態を直接計測し、すべりが海溝軸まで達する海溝型超巨大地震の本質を明らかにする。
豊国 源知(災害理学研究部門・火山ハザード研究分野)
趙 大鵬
竹中 博士(九州大学)
少ない計算時間やメモリで、火山の地形と強い内部構造不均質の効果を考慮して、現実的な火山性地震を再現できるシミュレーション手法の開発を行う。本手法は観測データを逆解析して、震源の位置・メカニズムといった火山噴火の予測や災害軽減に必要な情報を得る際の強力なツールとなる。またインフラサウンド等、大気-固体地球の相互作用で発生する波動現象の解析にも応用することができる。
岩渕 弘信(災害理学研究部門・気象・海洋災害研究分野)
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早坂 忠裕(東北大学大学院理学研究科)、吉岡 真由美(東北大学大学院理学研究科)
雲解像モデルによる数値シミュレーション結果を最新の衛星観測データと比較し、夏期の日本周辺域における降水量の再現性を定量的に明らかにする。台風や梅雨に伴う集中豪雨等の事例を対象として条件を変えて実験を行い、モデルの性能向上と降水量予測の改良を目指す。雲物理特性の時空間分布をモデルと衛星観測で比較し、雲微物理過程の表現が降水量予測精度にどのような影響を持っているか、および衛星観測データの活用によってどの程度の性能向上が見込まれるのかを明らかにする。
小原 隆博(災害理学研究部門・宙空災害研究分野)
土屋 史紀
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地球を取り巻く放射線帯は、磁気嵐時に大きく乱れ、その結果、放射線帯の高エネルギー電子は地球大気に向かって降下する。これらの電子の降下により、高度80kmと中心とした超高層大気領域に新たに電離層が形成され、短波通信に悪影響が発生する。本研究では、放射線電子が降下すると予想される高緯度地域に低周波電波受信機を設置して、電子航法・時刻標準に用いられている低周波電波を継続的に観測する事で、磁気嵐時の通信障害を定量的に評価することを目的とする。
三澤 浩昭(災害理学研究部門・宙空災害研究分野)
小原 隆博、土屋 史紀
増田 智(名古屋大学)、岩井 一正(国立天文台)
太陽面近傍~コロナ域を起源とする20~500MHzの広帯域の太陽電波を観測可能な電波スペクトル観測装置を開発し、電波による太陽活動の常時モニターの確立を行う。更に、この電波観測と、地上や科学衛星により得られる多波長の太陽現象イメージや高エネルギープロトン現象(SEP)等との比較・照合を通じて、地球や地球周辺の環境や人間活動に影響を及ぼす現象と電波現象との関連を精査し、電波観測による太陽活動危険状態監視の役割を明らかにする。
遠田 晋次(災害理学研究部門・国際巨大災害研究分野)
丹羽 雄一
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東北地方太平洋沖地震以外に、北米西海岸、アラスカ、チリ、スマトラなど世界各地の沈み込み帯でM9超巨大地震は発生している。これらの地震の比較だけではなく、長期地殻変動と超巨大地震との関連性についても国際的な比較研究が必要である。本研究では、数千〜10万年スケールでの地殻変動指標となる隆起海成段丘や沈降記録の残る海岸平野について複数の沈み込み帯沿岸地域間で比較し、共通点や相違点を明らかにし、プレートの沈み込みによる歪み蓄積・解放の過程と超巨大地震の発生メカニズム解明を目指すものである。さらに、上下変動の顕著な地域の現地調査を実施し、現地の研究者と国際共同プロジェクトを立ち上げを目指した情報交換を行う。
佐々木 宏之(災害医学研究部門・災害医療国際協力学分野)
江川 新一
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【背景と目的】東日本大震災では、急性期〜亜急性期〜中長期的医療支援において被災地域のニーズにあった人的・物的支援が効果的に行われたかどうかについて包括的評価の困難さが浮かび上がった。災害サイクルの概念にもとづき、今後、迅速且つ効率的な被災地医療支援を行うために、今回の震災で発生した医療ニーズと供給のバランスを測定・評価することを目的とする。【対象と方法】被災地の避難所・医療機関・役所における医療ニーズを急性期、亜急性期、中長期のそれぞれについて分析する。またニーズに対する供給の実態を検証する。アンケート調査とともに、震災時に入力されたデータの解析を行う。東北メディカル・メガバンク機構と共同して大学病院の各医局へのアンケートを行い、疾患ごとの医療ニーズの各期における特性を明らかにする。東北大学病院・中核病院からの被災地への医師派遣実態をあきらかにする。被災地で医療情報収集を基に、現在までに行われた医療支援についての評価、問題点についての調査研究を行う。
芦野 有悟(災害医学研究部門・災害感染症学分野)
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慶長 直人(国際医療研究センター)、石井 直人(複十字病院)、奥村 昌夫(複十字病院)、野内 英樹(複十字病院)、吉山 崇(複十字病院)、仁木 敏郎(香川大学)
Galectin 9(Gal-9)は香川大学の平島により発見同定された蛋白で、アレルギー、感染の免疫制御活性を持つことが提唱されてきた。研究者らは急性ウイルス感染症にて血漿中のGal-9が著増することを明らかにしてきた。またGal-9は近年マクロファージの結核菌の増殖抑制作用・及びT細胞の結核免疫応答の増強作用が知られた。ここでは潜在性結核、活動性結核におけるGal-9の発現を調べ、Gal-9が潜在性結核からの結核発症を抑制できる可能性を検討する。
浩 日勒(災害医学研究部門・災害感染症学分野)
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Elizabeth Telan(STD AIDS Cooperative Central Laboratory)、Bachti Alisjahbana(パジャジャラン大学病院)、清元 秀泰(東北メディカルメガバンク機構)、木村 正人(東北大学附属病院)、仁木 敏郎(香川大学)、久保 亨(長崎赤十字血液センター)、小泉 信夫(国立感染症センター)
災害に伴う感染症を定義づけするのは困難であるが、洪水の際のレプトスピローシス(環境水に存在するスピロヘーターを原因とする)やデング熱(蚊の媒介)は中規模災害後にも多発する疾患であり、その対応は重要である。特に前者は非特異的な症状が多く、早期診断が困難であるために初期対応の遅延は予後に直結する致死的イベントへと繋がる。そのため、尿検査や血液検査による腎機能検査の特徴を把握し、更に新たなバイオ・マーカーの発見が大きな課題である。一方、デングウイルスに関しては既にGalectin-9、 Osteopontinなどのマトリセルラー蛋白の上昇が認められている。これらの意義をさらに経時的に採取したサンプルで明らかにする。また、川崎病も主要六症状により比較的診断が簡単ではあるが、その病理学的成因については不明なところが多い。そこで、本研究では災害関連発熱疾患の各種検体を用いて、Galectin-9、 Osteopontinなどのタンパク測定に加え、Lumienxでの解析を行い、各疾患の発症成因に迫るものとする。
稲葉 洋平(災害医学研究部門・災害放射線医学分野)
千田 浩一
盛武 敬(筑波大学)、平山 暁(筑波技術大学)
原子力事故など、放射線が関与する事故や災害の発生時には、多くの市民の中から直ちに治療措置が必要となる者を選別することが極めて重要である。このような有事に際しては、古典的なバイオドシメトリー法である染色体異常検査や小核アッセイなどは、解析に多大な労力と時間を要するため、大量のスクリーニングには適していない。また低線量被曝による生物学的影響を観察すること自体容易なことではない。これらの問題点を克服するには、生体の防御機構の個体差を考慮しつつ、低線量の被曝でも影響を拾い出すことができる感度の高いアッセイ法が必要になる。そこで本研究では、電子スピン共鳴(ESR)を利用し、血液サンプル中のラジカルを定量することで、簡便に被曝をスクリーニングする今までにない新手法の開発を試みる。
兪 志前(災害医学研究部門・災害精神医学分野)
富田 博秋、浩 日勒
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災害ストレスは心的外傷後ストレス障害やうつ病を始めとする精神疾患の病態形成要因の一つであり、一方、災害ストレスは免疫機能にも影響することが知られているが、災害ストレスの免疫機能を介した災害ストレス関連精神疾患の病態形成への関与のメカニズムについては不明な点が多い。申請者は脳内の免疫担当細胞であるミクログリアに着目し、ミクログリア活性の増加、もしくは減少が、心的外傷後ストレス障害の病態形成に及ぼす影響を検討し、ミクログリア活性の調節を介した、病態改善のあり方の検討に繋げる。
斎藤 昌利(災害医学研究部門・災害産婦人科学分野)
伊藤 潔
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大震災は地域の保健医療システムの崩壊を引き起こした。宮城県の子宮がん検診受診率は全国一位であったが、検診体制は壊滅的打撃を被った。被災地での検診受診率は激減したが詳細は不明である。そこで震災の婦人科がん検診体制への影響を、被災地のがん検診受診率の詳細や受診率減少の要因、復旧の障害事象という観点から検証する。対象に宮城県の婦人科がん検診データ(震災1年前、震災年、震災後1年)を用い、被災地とそれ以外の地域での検診データを解析し、災害への備えをもつ新たながん検診システムのあり方を検討する。
佐藤 健(情報管理・社会連携部門・災害復興実践学分野)
源栄 正人、小野田 泰明、増田 聡、柴山 明寛
渡辺 正樹(東京学芸大学)、戸田 芳雄(東京女子体育大学)、南 哲(神戸大学名誉教授)、藤岡 達也(上越教育大学)、村山 良之(山形大学)、桜井 愛子(神戸大学)
本研究は、東日本大震災の被災地における教育分野における復興支援、および国内外に対する学校の災害危機管理の高度化に向けた情報発信を行うことを目的とする。具体的には、研究代表者が中心となってこれまで実施してきている「東日本大震災における学校等の被害と対応に関するヒアリング調査」に基づき、リスクマネジメントとクライシスマネジメントの両面から、学校における防災管理と防災教育の高度化、および災害危機管理学の構築に向けた学際的研究を行う。2年度目は特に、「災害に強い地域とともにある学校づくり」の実現(社会実装)に向け、教育現場の防災主任等との連携に基づいた実践的研究とフォーラム開催にも取り組む。
平野 勝也(情報管理・社会連携部門・災害復興実践学分野)
小林 徹平
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被災地の復興まちづくりにおいては、今回整備されるL1防潮堤が大きな問題の一つとなっている。防災面から必要なものが、まちづくり面では不要どころか阻害物になりかねない。こうした防潮堤整備に関し、岩手、宮城の各地では、実践的にどのような調整が行われたのか、調査・整理することを通じて、今後の津波に対する防災まちづくりに資する知見を得るものである。
小林徹平(情報管理・社会連携部門・災害復興実践学分野)
平野勝也
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本研究は、震災復興計画において多くの自治体で位置づけられている震災復興祈念施設(公園、震災遺構、慰霊碑)の計画が、後世に残すべき施設と成りえるよう、災害等の祈念施設の先進事例の調査を通して、都市デザイン・公園デザイン的見地から現行計画における課題を明らかにし、祈念施設計画手法への適応検討を行うことを目的とする。又その手法においては、土地利用・地勢条件を都市ダイアグラム、広場や林を含めた施設配置を公園ダイアグラムとして用い、二つのスケールのダイアグラムの提示により、スケールを横断したデザイン手法の提示を行う。
本江 正茂(情報管理・社会連携部門・災害復興実践学分野)
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本研究は、災害に関するデータ研究を対象とし、災害教訓の継承および研究成果のアウトリーチに寄与する目的で、研究データの視覚化手法の調査開発の研究活動を行うとともに、それを活用した実践的な表現形式による発信活動を、所内外の研究者・専門家等と連携しつつ行う。
サッパシー・アナワット(地震津波リスク評価寄附研究部門)
今村 文彦、保田 真理、福谷 陽、安倍 祥
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本研究では、現実に近い漁船被害評価を行うため、東日本大震災による漁船被害データを解析し、現地調査や津波シミュレーションより得られた津波の高さや流速等を利用し、被害関数を構築する。また被災地の現地へ入って、当時漁船の状況・行動・係留の仕方等についてヒアリング調査を行う。構築した被害関数やヒアリング調査等の結果から、今後想定される南海トラフ津波等の対策の為、より良い漁船防災対策を提案する。
福谷 陽(地震津波リスク評価寄附研究部門)
今村 文彦、サッパシー・アナワット
矢代 晴実(防衛大学校)
本研究では、東北地方太平洋沖地震で得られた知見等を基に、従来の津波ハザードの確率論的評価手法を高度化する形で、日本国内の主要港湾における津波の沿岸波高・流速等を確率的に評価する。24年度は近地津波を対象に評価したが、25年度は主に遠地津波を対象に評価する。また、確率的に評価した津波の沿岸波高・流速・周期を入力波として、国内の主要港湾を対象に各再現期間に応じた津波遡上計算を実行し、津波リスク評価の基礎となる津波ハザード評価を行う。
島田 明夫(人間・社会対応研究部門 防災法制度研究分野)
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西田 主税(東北大学大学院法学研究科)、金谷 吉成(東北大学大学院法学研究科)
今般の東日本大震災の実態に照らして、現行の災害対策法制が広域・大規模災害の実態に対応した適切な形の法体系になっているか否か、また、どこに問題点があるのか、その課題は何かについて、現地調査や各種の実態調査に基づいて実証的に研究することによって、現行法体系の問題点を洗い出し、それに即した必要な法改正等の方向についての研究を行う。
川島 秀一(人間・社会対応研究部門災害文化研究分野)
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平成23年(2011)の東日本大震災による大津波においては、岩手県の沿岸部に顕著に現出したように、昭和8年(1933)の昭和三陸大津波以降に高台移転を果たした「復興地」 が難を逃れ、それ以外の低地が被災された。なぜ、高台移転を行なった住民が、78年間をかけて「原地」に戻ってきたのか。その課題を、明治三陸大津波(1896)から昭和三陸大津波までの37年間の原地復帰の状況と比較しながら、聞き書き調査という民俗学的な方法を用いて、津波常習地である三陸沿岸の、海に対する生活文化を捉える。
森口 周二(地域・都市再生研究部門地域安全工学研究分野)
寺田 賢二郎、加藤 準治
上石 勲(防災科学技術研究所)、山口 悟(防災科学技術研究所)、平島 寛行(防災科学技術研究所)
中長期的な視点で東北地方大震災からの復興を考えた場合、国土の耐災害性能の向上・重層化のためには、沿岸部の津波対策だけでなく、内陸部の対災害性能の向上もやはり重要な課題である。特に、国土の半分が豪雪地帯である我が国では、雪崩の存在が冬季の地震被害をより複雑なものにしている。本研究では、雪崩のリアルタイムハザードマップの枠組み構築を最終目標として掲げ、この達成のための前段階として、実際に存在する雪崩危険個所を対象としてプロトタイプを構築する。これにより、積雪状況や雪質によって変化するリアルタイムハザードマップの有効性を具体的に示す。
村尾 修(地域・都市再生研究部門国際防災戦略研究分野)
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松岡 昌志(東京工業大学)
本研究は、2007年ペルー地震により被災したピスコを対象として、リモートセンシング技術を用いた復興過程のモニタリングを行うことにより、都市における被災から復興までの過程を定量的に明らかにすることを目的とする。そのために、2007年8月の地震発生前から2013年夏までのQuickBird衛星データ等を収集し、都市の成立過程、被災、そして復興過程を分析・把握する。また現地調査により、衛星データにより把握できる都市の様相と実地調査による差異を明らかにし、建物復興率により都市の復興過程を定量的に示す。
日野 亮太(災害理学研究部門海底地殻変動研究分野)
飯沼 卓史、和田 育子、東 龍介
鈴木 秀市(東北大学大学院理学研究科)、荒木 英一郎(海洋研究開発機構)
東北地方太平洋沖地震の余効変動の把握と震源域周辺でのプレート境界型大地震の発生ポテンシャル評価に不可欠な長期・広域の地殻変動場を把握するための観測技術開発の一環として、海底ベンチマークでの絶対水圧繰り返し測定による海底水準測量の要素技術の開発を進め、東北沖での実施に向けたフィージビリティー研究を実施する。
東 龍介(災害理学研究部門海底地殻変動研究分野)
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2011年東北地方太平洋沖地震では、プレート境界面の高速破壊に伴う陸側プレート先端部の堆積岩体(付加体)のオーバーシュートによって、巨大津波が生じた。その原因となった海溝軸近傍の地震時大すべりは宮城県沖に集中し、三陸沖・福島沖のすべり量に比べはるかに大きい。すべり量のこうした南北差の要因の一つとして、海溝陸側斜面下の地殻構造が海溝軸に沿って不均質である可能性が考えられる。本研究では、東北地方太平洋沖地震震源域の地震学的構造の抽出を試み、構造の観点から巨大津波の発生メカニズムの解明にアプローチする。
細井 義夫(災害医学研究部門災害放射線医学分野)
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上原 芳彦(東北大学大学院医学系研究科)、村田 泰(東北大学大学院医学系研究科)
福島第一原子力発電所事故により土壌が汚染された地域に居住する住民は、今後長期間にわたり低線量・低線量率放射線に被ばくする。旧ソ連のウラル核惨事とテチャ川の核汚染により低線量率長期被ばくした住民では、発癌だけでなく心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが増加することが近年報告れている。放射線による発癌や遺伝的障害についての基礎的研究は進められてきたが、低線量率放射線による心筋梗塞や脳梗塞は発癌と比較して致死リスクが小さくないにもかかわらず、その発症機序に関してはあまり研究がなわれていない。本研究では、低線量・低線量率被ばくにより心筋梗塞や脳梗塞など血栓が形成される機序を解明し、将来有効な予防法を開発するための道筋をつけることを目的とする。
泉 貴子(情報管理・社会連携部門社会連携オフォス)
小野 裕一
Jemilah Mahmood(King’s College)、Ir. Krishna S. Pribadi(InstituteTechnology Bandung)
防災、災害対応、復興などの災害リスク管理の第一義的責任を保有するのは政府であるが、その役割を果たすには、様々なステークホルダーによるサポート・協力が不可欠である。特にNGOはプロジェクト遂行者として、コミュニティーに非常に近い存在であり、防災活動の主なステークホルダーとなり得る。また、プライベートセクターの貢献は、最近では、災害対応のみならず、防災面でも重要視されている。大学はこれまで、研究が主な責務であったが、近年では、研究のみならず、その研究を実際のプロジェクトや実践的防災学の構築に反映させ、国、地方など様々なレベルでの研究を超えた取り組みが期待されている。 インドネシアは東南アジア、バングラデシュは南アジアにおいて、非常に災害の多い地域であり、経済的被害も大きい。さらに、あらゆる種類の災害(地震、洪水、台風、津波など)に毎年見舞われている。そのため、防災活動の面で、新しい試みが始められているものの、今後解決すべき課題も多い。この研究では、これまで、大学、プライベートセクター、NGOなどのステークホルダー間で、どのような防災対策における協力・連携が存在し、有効であったかを調査し、インドネシアやバングラデシュのような災害頻発国がかかえる防災対策における問題、課題、解決策を、ステークホルダー間の協力・連携という観点から、調査・分析する。
池田 菜穂(情報管理・社会連携部門社会連携オフォス)
佐藤 翔輔、花岡 和聖、小野 裕一、泉 貴子
Jemilah Mahmood(King’s College)、Ir. Krishna S. Pribadi(InstituteTechnology Bandung)
東北大学災害科学国際研究所では、実践的防災学の創成を重要なミッションとしている。自治体などが被災地の復興計画を策定する際に、技術的・政策的な面での支援を行うことも、そのミッションの一つである。一方で、被災地の地域社会は、例えば、コミュニティの規模や生業構成(産業構造)、集落の立地条件だけをとっても多様性に富んでいるため、それぞれの地域において効果的な支援を行おうとする者は、その地域特性と復興プロセスとの関連性について考察することが求められるであろう。本研究では、東日本大震災で被災した三陸地方の地域特性について地域社会の人口構造や生業構成などの観点から分析し、同地方における復興プロセスとの関連性について事例調査をもとに考察する。