研究・実践

平成26年度 特定プロジェクト研究【拠点研究】(採択課題)

東北大学災害科学国際研究所の使命は、東日本大震災における調査研究、復興事業への取り組みから得られる知見や、世界をフィールドとした自然災害科学研究の成果を社会に組み込み、複雑化する災害サイクルに対して人間・社会が賢く対応し、苦難を乗り越え、教訓を活かしていく社会システムを構築するための「実践的防災学」の体系化とその学術的価値の創成である。

そこで、本研究所の英知を結集して被災地の復興・再生に貢献するとともに、国内外の大学・研究機関と協力しながら、自然災害科学に関する世界最先端の研究を推進するために、特定プロジェクト研究【所内/拠点研究】の募集を行った。

ここでは、平成26年度特定研究プロジェクト【拠点研究】として採択された研究課題を掲載する。

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拠点研究 研究種目A

A-1広域被害把握・調査・解析に基づく被災地状況マッピングチームの創成(新規)

研究代表者

越村 俊一(災害リスク研究部門・広域被害把握研究分野)

所内共同研究者

村尾 修、江川 新一、花岡 和聖、佐藤 翔輔、呉 修一、イ・ケリーン、マス・エリック

所外共同研究者

松岡 昌志(東京工業大学)、山本 直孝(防災科学技術研究所)、三浦 弘之(広島大学)

研究の概要

地震・津波・風水害・土砂災害などの自然災害の発生直後に実施する調査や解析の結果を効果的に可視化し、それを国内外に発信するための地図作成チーム(マッピングチーム)を創成し、災害科学国際研究所の調査研究活動の発信力を高めることを目的とする。研究実施初年度にあたる平成26年度は、他機関が公開・運用しているマッピングシステムのレビューを踏まえ、WMS(Web Mapping Service)配信を前提とした災害研独自のマッピングシステムの構築と、既往災害調査・解析(東日本大震災、2013年山口・島根豪雨災害、2013年大島町土砂災害、2013年台風ハイエン)の結果を実装する。

A-2日本・東南アジアの豪雨・台風被害の減災に向けた実践防災学的アプローチ(新規)

研究代表者

呉 修一(災害リスク研究部門・災害ポテンシャル研究分野)

所内共同研究者

越村 俊一、ブリッカー・ジェレミー、サッパシー・アナワット、久利 美和、マス・エリック、ローバー・フォルカ、野内 類、イ・ケリーン、福谷 陽

所外共同研究者

小森 大輔(東北大学大学院工学研究科)、吉岡 真由美(東北大学大学院理学研究科)、手計 太一(富山県立大学)、宮本 守(土木研究所)、Mohammad Farid(バンドン工科大学)、Maritess Quimpo(Department of Public Works and Highway, Philippines)

研究の概要

近年、例えばインドネシア・ジャカルタ洪水や台風30号に伴うフィリピンの高潮災害など、日本や世界各地で豪雨・台風災害が頻発している。災害科学国際研究所の現地調査より上記災害の特徴は、1) 非常に大きな外力、2) 地域の脆弱性、3) 避難実施時の問題点等の共通の課題が明らかになった。本研究の目的は、上記豪雨・台風災害に関して、実践防災学的観点から、文理融合の学際的な追加調査を実施することで、災害の詳細な情報を集め、災害をもたらした現象を気象モデル、洪水モデル、高潮モデルを用い学術的に高度な解析を行い、災害発生メカニズム・被害拡大要因をより明確にすることである。これにより、①国際的に応用可能なフレームワークの提案、②世界の豪雨・台風災害を減災するための対応策の提案、 ③明らかになった課題等を現地に還元し、今後の災害被害低減につながる実践的な活動の実施等が可能となる。このような豪雨・台風災害への実践防災学的な取り組みは、災害科学研究所の新しい特色として必要不可欠な取り組みである。

A-3災害を生きる力とは?―8因子の認知脳科学的分析(新規)

研究代表者

杉浦元亮(人間・社会対応研究部門・災害情報認知研究分野)

所内共同研究者

邑本俊亮、佐藤翔輔、野内類、今村文彦

所外共同研究者

阿部恒之(東北大学大学院文学研究科)、本多明生(山梨英和大学)、山口浩、佐々木誠(岩手大学)

研究の概要

3.11震災では、被災・復旧・復興の様々な場面で、多くの人がそれぞれの立場で様々な危機や困難に直面し、それを回避・克服してきた。その際に有利に働いた個人の性格・考え方・習慣について、これまでの2年間で被災者を対象とした聞き取り調査とアンケート調査を実施し、8つの「生きる力」としてまとめてきた。本研究では、この成果を科学的な扱いが可能な一般論に整理した上で、学校教育の理念まで視野に入れた新しい防災・減災・復興のプロトコールに還元することを目標にする。今後の2年間で、これら生きる力因子が危機回避・困難克服の個人差を生む際に、脳内のどのような知覚・認知・判断過程がそれを媒介するのか明らかにする。そのために8つの生きる力因子について、災害科学・心理学・認知科学・脳科学の諸分野の知見を結集して知覚・認知・判断過程のモデルを作成し、これを実証するための計測技術・実験環境を開発、これを用いた脳活動計測実験を実施する。その上でこの成果を防災・減災・復興のプロトコールに還元する研究計画を模索する。

A-4ゲームを用いた災害教育の開発とその国際応用
-どこでも・だれでも・たのしくできる実践的防災学の展開-(新規)

研究代表者

野内 類(人間・社会対応研究部門・災害情報認知研究分野)

所内共同研究者

邑本 俊亮、杉浦 元亮、保田 真理、今村 文彦、サッパシー・アナワット

所外共同研究者

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研究の概要

災害教育とは、災害による人的・社会的被害を軽減するための教育的な取り組みである。ゲームを用いた災害教育は、年代に関係なくすべての個人の防災・減災意識の向上に貢献し、地域・社会全体の防災力・減災力の発展に重要な役割を果たすと期待されている。そこで、本研究計画は、1)様々な災害場面に関連するゲーム・ブックの開発、2)日本国内でのゲーム・ブックを用いた災害教育の実践、3)ゲーム・ブックを用いた災害教育の国際応用を行い、【どこでも】・【だれでも】・【たのしく】できる実践的防災学を展開することが目的である。最終的に一連の研究の成果をまとめ、今後の防災・減災対策や地域・社会への還元を目指す。

A-5ニュージーランド・ヒクランギ沈み込み帯のプレート間相対運動の収支(新規)

研究代表者

日野 亮太(災害理学研究部門・海底地殻変動研究分野)

所内共同研究者

木戸 元之、飯沼 卓史、東 龍介、和田 育子、岡田 知己

所外共同研究者

伊藤 喜宏(京都大学)、望月 公廣、小原 一成(東京大学)、Laura Wallace、Stuart Henrys、Stephen Banister、Bill Fry(GNS科学研究所)

研究の概要

海溝軸に近い浅部プレート境界面でスロースリップイベント(SSE)が周期的に発生しているニュージーランド・ヒクランギ沈み込み帯において海底地殻変動観測を行うことにより、1)SSE発生域の特定、2)SSE発生域周辺でのプレート間固着強度の定量的評価、を行う。2013年に設置した自己浮上式海底圧力計を回収し、そのデータと陸上GNSS観測点での変位速度場との併合解析から、同年に発生したSSEの発生域を特定する。さらに、SSE発生域近傍における中長期的なすべり欠損速度を推定するためにGPS/音響結合式海底地殻変動観測に着手する。こうして得られるすべり欠損速度とSSEによって解放されたすべりとの収支関係を明らかにし、クランギ沈み込み帯の海溝軸近傍におけるプレート間地震とそれに伴う巨大津波の発生ポテンシャルの評価に資する。本学で蓄積された海底地殻変動観測研究のノウハウを国際的にフィードバックすることで、ニュージーランドにおける地震・津波発生予測研究に貢献するだけでなく、東北地方太平洋沖地震の震源域において本研究所が進めている観測研究の成果との比較から巨大津波の発生過程の理解の深化を図る。

A-6東北地方太平洋沿岸域における段丘・埋没地形の分布高度・編年に基づく長期地殻変動の復元と巨大海溝型地震にともなう歪みの蓄積・解放過程の解明(継続)

研究代表者

丹羽 雄一(災害理学研究部門・国際巨大災害研究分野)

所内共同研究者

遠田 晋次、石村 大輔

所外共同研究者

須貝 俊彦(東京大学)、白井 正明(首都大学東京)

研究の概要

東北地方太平洋沿岸では、2011年の地震時の沈降、検潮記録による過去約100年間の沈降が観測されている。一方、海成段丘地形の存在からは10万年スケールでの継続的隆起が既存研究によって報告されている。しかし、2011年地震時の沈降量が大きかった宮古?牡鹿半島にかけての三陸海岸沿いは海成段丘の分布はきわめて限定的で、既往文献の段丘形成年代の推定に関して不確実性が大きい。そのため、本研究では空中写真の再判読と現地調査を通じて段丘地形を見直し、正確な編年を通じて10万年スケールでの地殻変動を正確に復元する必要がある。また、河川沿いに分布する沖積平野地下の埋没地形にも数千から数万年スケールでの地殻変動の証拠が残されていることが期待される。本研究では、東北地方太平洋沿岸地域を対象に段丘地形や埋没地形の高度分布、編年に基づいて、数千年から10万年スケールでの地殻変動を復元する。得られた結果と観測記録や歴史記録から明らかな過去数百年の地殻変動の関係から、プレートの沈み込みによる歪み蓄積・解放の過程を明らかにする。

A-7災害に強い保健・医療供給体制に関する連携研究(新規)

研究代表者

江川 新一(災害医学研究部門・災害医療国際協力学分野)

所内共同研究者

伊藤 潔、服部 俊夫、富田 博秋、細井 義夫、中山 雅晴、栗山 進一、千田 浩一、小坂 健、佐々木 宏之

所外共同研究者

石井 正(東北大学病院)、上原 鳴夫(東北大学名誉教授)、菅原 準一(東北メディカルメガバンク)、Arturo Pesigan(スリランカWHO)、Carmencita Banatin(フィリピン保健省)、Anthony Redmond(Manchester大学)、Abdul Radjak(Thamrin大学)、Terje Skavdal(国連OCHA)、Jonathan Abrahams(WHO)、Virginia Murray(英国保健省)、中川 敦寛、工藤 大介、古川 宗(東北大学病院)、小井土 雄一(国立病院機構災害医療センター)、甲斐 達朗(済生会千里病院)、大友 康裕(東京医科歯科大学)、中瀬 克己(岡山市保健所)、石井 美恵子(日本看護協会)、坂元 昇(川崎市健康福祉局)、金谷 泰宏(国立保健医療科学院)、高田 洋介(国立国際医療研究センター)

研究の概要

本研究は①災害に強い医療・保健・福祉供給体制を確立するための兵庫行動枠組み見直しにむけたワシントン国際シンポジウムの開催と世界防災会議への反映、②医療・保健対応者の標準化した行動対応を可能にするためのマニュアル標準化、③病院受援力を含めた病院BCPの開発と体制整備という3つの柱からなり、災害における保健・医療・福祉の対応がより合理的で、情報共有が速やかになされ、国際的な医療対応体制についても東日本大震災の経験やフィリ台風被害調査が反映されるように連携をはかることを目的とする。

A-8エビデンスに基づいた災害精神医学の確立(新規)

研究代表者

富田 博秋(災害医学研究部門・災害精神医学分野)

所内共同研究者

兪 志前、笠原 好之、今村 文彦、柴山 明寛、佐藤 翔輔、村尾 修、イ・ケリーン

所外共同研究者

吉田 弘和(宮城県子ども総合センター)、金 吉晴、中島 聡美(国立精神・神経医療研究センター)、Katherine Shear(コロンビア大学)

研究の概要

災害後のメンタルヘルス対応を有効に行う上で必要なエビデンスや精神医療保健体制の防災・減災・災害対応への備えやメンタルヘルス向上に有効な復興行政を有益に行う上で必要なエビデンスは乏しいのが現状である。申請者らは東日本大震災発災以降、被災沿岸地域で行ってきた被災住民の健康状態、および、被災した精神科医療機関、精神保健機関の被災や災害対応に関する情報の把握を行っているが、本申請研究ではこれまでの調査研究を補完する調査・研究を行い、(1)新たな客観的指標に基づく災害ストレス反応の類型化、(2)精神医療保健機関の防災・減災・災害対応の体制向上に必要な要因の特定、(3)復興行政がメンタルヘルス向上に有効であるための要因の特定を行うことを通して、エビデンスに基づく災害精神医学の確立を進める。

A-9被災地の女性が健康を維持するために:
子宮がん検診受診率回復への方策と、災害後起こり得る女性疾患の検証(新規)

研究代表者

伊藤 潔(災害医学研究部門・災害産婦人科学分野)

所内共同研究者

三木 康宏

所外共同研究者

鈴木 貴、笹野 公伸(東北大学医学部)、田勢 亨(宮城県立がんセンター)

研究の概要

被災地の女性が健康を維持する上で、がん検診受診率の回復は急務である。しかし震災後、被災地での子宮がん検診受診率は大幅に低下し、いまだ回復しない。この回復手段として、最新の検査:HPV併用検診(子宮頸癌発症の主因となるウイルスを細胞診と同時に調べる検査)を、26年度からは被災地全域で実施する。この検診の導入で、受診率の回復・向上とがん発見率の引き上げが可能かどうかを検証する。また震災後、健康に影響を及ぼす生活習慣:喫煙・ホルモン剤の服用状況に変化があるかを検診データから検証し、健康増進策策定の一助とする。一方、宮城県ではがん検診時に高精度の検診方式(経膣超音波検査)も行い、子宮体癌、卵巣癌の疑いも検査している。震災後、ホルモンや環境要因に関連する女性の腫瘍が増加するか否かは、慎重な経過観察と動向分析が必要である。25・26年度のモニタリングを行い、今後の女性疾患の動向を予測するとともに、病気の性向を分子生物的手法で分析し、災害後にストレスや環境変化で起こり得る女性の病気の予測と予防策を構築する。

A-10「みちのく震録伝」の震災アーカイブ利活用基盤システムの構築と実践(新規)

研究代表者

柴山 明寛(情報管理・社会連携部門・災害アーカイブ研究分野)

所内共同研究者

佐藤 翔輔、今村 文彦

所外共同研究者

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研究の概要

みちのく震録伝では、震災後から約35万点の震災記録の収集を行い、震災記録の整理・公開を目的としたアーカイブシステムの構築を行ってきた。また、これらの震災記録の利活用モデルとして「ヒトの目に映る3。11津波浸水」など数多くのシステムの試作、公開を進めてきた。しかしながら、これらのシステムは、アーカイブシステムとの直接的な連携ができておらず、新たな震災記録が登録されても個々のシステムにデータが反映されない問題があった。そこで本研究課題では、真の連携を実現するために新たなAPI開発をし、35万点の震災記録を直接利用できる「震災アーカイブ利活用基盤システムの構築」を実施する。また、震災記録の利活用を促進するために、震災記録のメタデータの拡充及び「みちのく震録伝防災・減災ハッカソン(仮)」を開催し、IT技術者や企業との連携強化を図り、新たな震災記録の利活用方法を推進する。

A-11石巻市(市街地部)の再・創生のための研究及び実践活動(新規)

研究代表者

小野田 泰明(情報管理・社会連携部門・災害復興実践学分野)

所内共同研究者

佐藤 健、平野 勝也、本江 正茂、今井 健太郎、小林 徹平、姥浦 道生

所外共同研究者

佃悠(東北大学大学院工学研究科)、北原 啓司(弘前大学)、野原 卓(横浜国立大学)

研究の概要

本研究は、震災で壊滅的被害を受けた石巻市市街地部を主な対象として、質の高い空間の再・創生のための効率的効果的な事業、規制、誘導の実施に寄与することを目的として、都市の物的構成要素の再構築―特に予定されている建築の計画検討やストックマネジメント利用―に必要な情報整備のための研究活動を行うと共に、そこで得られた情報等を活用した市役所・住民まちづくり組織等に対する復興まちづくりの実践的支援活動を、所内外の研究者等と連携しつつ行う。H24・H25年度の実践的取組みでは、都市・土木・建築の連携により一体的なまちの基盤計画について一定の成果をあげてきた。H26年度はまちの運営の観点からより質の高い建築計画を検討する。

A-12研究所の実践的防災学の知見を国際防災政策に反映させるための研究(継続)

研究代表者

小野 裕一(情報管理・社会連携部門・社会連携オフィス)

所内共同研究者

村尾 修、江川 新一、サッパシー・アナワット、泉 貴子、井内 加奈子、池田 菜穂、イ・ケリーン、福谷 陽、保田 真理

所外共同研究者

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研究の概要

国連を中心とした国際機関におけるマルチの防災政策と活動を把握し、研究所の7部門36分野にわたる実践的防災学の成果(特に東日本大震災から得た教訓に基づいて)をブレンドし、日本政府や関連の研究機関と連携しながら、国連などの国際機関が行う国際防災政策に積極的に反映させ、世界の防災・減災活動に寄与・貢献することを目指す。特に今年度は、2015年3月に仙台開催の国連防災世界会議に照準を合わせて戦略を練ることとする。

拠点研究 研究種目B

B-1微動観測による青葉山免震新設建物群の地盤ー構造物振動特性評価(新規)

研究代表者

大野 晋(災害リスク研究部門・地域地震災害研究分野)

所内共同研究者

源栄 正人、王 欣

所外共同研究者

古川 幸(東北大学大学院工学研究科)、三辻 和弥(山形大学)

研究の概要

東日本大震災において、青葉山で大破となった建物は免震化されたが、地下構造や地盤卓越周期との関係、上下振動など、免震でも検討が必要な項目がある。また、導入予定の構造ヘルスモニタリングシステムは観測点が限られるため、別途建物の立体振動特性の把握が必要である。そのため、免震新設4建物を対象として、地盤系、地盤-基礎系、上部構造について多点微動観測を行い、地盤-基礎-上部建物連成系としての振動性状を把握する。これらは大学建物の安全性確保の点からも重要であると同時に、学術的には、地盤振動特性の敷地内変動(入力変動)の把握、地盤造成による振動特性の違いの把握、新キャンパス地点の深部地下構造の把握、基礎による入力損失の違いの把握、上部構造形式の違いによる立体振動モードの把握、免震建物の上下振動特性(特に大空間や床応答の上下応答特性)の把握、積載荷重による建物振動特性の変動、などに対する知見が得られる。

B-2超高層ビルの層間せん断波速度の抽出及びヘルスモニタリングへの適用(新規)

研究代表者

王 欣(災害リスク研究部門・地域地震災害研究分野)

所内共同研究者

源栄 正人

所外共同研究者

入倉 孝次郎、正木 和明(愛知工業大学)、久田 嘉章(工学院大学)

研究の概要

東日本大震災では震源から遠く離れた首都圏で、大きいかつ長時間な長周期地震動により超高層ビルの上部がかなり大きい揺れが生じし、非構造被害だけではなく、構造的な被害を受ける恐れもあるので、構造物の継続使用の安全性に懸念を抱く。したがって、超高層ビルの健全性・被害状況が早期かつ適切的に把握するため、検査診断評価技術の重要性は益々高まっている。本研究では、超高層ビルの各層における残存耐震性能を適切に評価するため、波動干渉理論に基づく逆重畳法により振動モードがせん断モードだけではなく、曲げ振動やねじれ振動も著しく、より複雑な振動モードを有する超高層ビルへの適用性を明確し、曲げ振動とねじれ振動はせん断波速度の抽出への影響も定量評価する。また、基本振動モードだけではなく、高次モードも卓越する超高層ビルの各モードの卓越周波数に対応する周波数の解析範囲によりせん断波速度の解析精度に対する検討を行って、解析周波数範囲の選択原則を提案する。本手法は申請者が現在に従事する地震早期警報とオンライン建物ヘルスモニタリングの融合システムの開発に関する研究にも実用できることも期待されている。

B-31677年延宝三陸・房総沖地震の再評価と1611年慶長奥州地震との関連性(新規)

研究代表者

今井 健太郎(災害リスク研究部門・津波工学研究分野)

所内共同研究者

蝦名 裕一、飯沼 卓史、内田 直希

所外共同研究者

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研究の概要

1611年慶長地震から66年後に発生した1677年延宝三陸地震と1677年延宝房総地震の震源域・波源域とその地震規模について、歴史学・理学・工学的知見を結集して再評価を行う。延宝三陸地震・房総地震に関わる新たな史料発掘を試み、史料記載情報から地震活動状況や津波痕跡情報を抽出し、得られた各種情報や最新の知見(地震活動や地殻活動観測結果など)に基づいて震源域・波源域の推定を行い、地震規模の再評価を試みる。これら延宝の地震と1611年慶長奥州地震との関連性について、地震学やプレートテクトニクス学に基づいて検討する。加えて、2011年東北地方太平洋沖地震前後の地震活動や最新の地殻変動観測結果から、関東から東北の太平洋沿岸での今後の地震・津波リスク評価を行う。歴史学・理学・工学的視点から、これらの地震と1611年慶長奥州地震との関連性を明らかにすることで、太平洋プレートの沈み込み帯における巨大地震の発生予測に寄与すると考えられ、加えて、東日本大震災以降の東北地方における地震・津波リスク評価に貢献することが考えられる。

B-4児童・生徒のための効果的な減災教育ツール開発とその効果の検証(継続)

研究代表者

保田真理(災害リスク研究部門・津波工学研究分野)

所内共同研究者

今村文彦、サッパシー・アナワット、野内類

所外共同研究者

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研究の概要

昨年度、当特定プロジェクト研究により、開発したツールを用いて、七郷中学校、階上小学校、天真小学校、高森小学校、高森東小学校、ハワイ州サンセットビーチ小学校、アラワイ小学校での出前講座を行って実証実験を行って来たが、アンケート調査により、児童生徒の理解力や思考力への好影響が見られた。被災地内での児童生徒にも、経験を活かす工夫をアドバイスできた。今年度はそのツールの中身をより実践的に改良し、グループワークなどでもっと使いやすい形に高度化する。ツールを含めた総合的な学習プログラムを構築し、引き続き国内外の児童生徒への減災教育を実施し、減災教育のモデルを構築し、認知力、判断力の向上を検証するとともに、今年度は家庭への波及状況の調査にも重点をおく。

B-52011年津波による大規模洗掘機構の解明(新規)

研究代表者

真野 明(災害リスク研究部門・災害ポテンシャル研究分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

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研究の概要

2011年東日本大震災では、海岸堤防、防波堤、防潮水門など防災施設の横に強い流れの集中が起こり、大規模な洗掘を引き起こした。この洗掘は構造物復興の妨げになっており、粘り強い構造とする観点からも、洗掘の機構解明が急がれている。 本研究は、津波等での洗掘の原因とされてきた、過剰感激水圧による地盤の液状化、流れの集中により高い底面せん断応力による侵食の2つの機構を定量的に解析し、構造物周辺の大規模洗掘の機構を解明し、洗掘を予測できるようにしようとするものである。なお本研究テーマは、国際的に解明が急がれているテーマであり、ASCE7-10(建物やその他構造物の最低外力に関する基準)でも洗掘の外力については課題として残されている。また本研究はUCLのTizian Rossetto准教授との共同研究テーマである。

B-6最先端技術の統合による津波前後の土砂輸送および海浜回復過程の解明(新規)

研究代表者

有働 恵子(災害リスク研究部門・災害ポテンシャル研究分野)

所内共同研究者

佐藤 源之、後藤 和久、菅原 大助

所外共同研究者

高橋 一徳(東北大学東北アジア研究センター)

研究の概要

本研究は、2011年津波前後の海浜地形・津波堆積物・地中レーダ探査(GPR)データの総合的な解析により、巨大津波による海浜変形とその後の回復過程を調べ、その特性を解明することを目的とする。2011年津波では、押し波時に大量の土砂が海域から陸域に輸送され、引き波時には深刻な海岸侵食が生じて大量の土砂が海域に輸送された。陸域への津波堆積物は、復興過程においても大きな弊害となったが、この土砂輸送の全容については未だ解明されていない。また、侵食海岸では今後40年以上をかけた大規模な養浜と海岸構造物の整備が計画されており、今後の回復過程には高い関心が寄せられているものの、これに資する知見は得られていない。本研究は、本研究所所属の研究者が蓄積してきた、最先端の地中レーダ探査・堆積物分析・地形解析技術を統合することで、現地データより海浜変形過程を明らかにすることを目的とする。これにより、被災海岸における今後の海浜回復の展望を示すことが可能になるとともに、今後の海岸管理に資する重要な教訓を国内外に提示する。

B-7東日本沿岸水域における化学的環境の時空間変化の解析:震災および人為的環境改変の影響を理解し今後の環境管理方策を探る(新規)

研究代表者

坂巻 隆史(災害リスク研究部門・災害ポテンシャル研究分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

藤林 恵(東北大学大学院工学研究科)

研究の概要

東日本大震災により、東日本沿岸では地形や生物相が非常に大きな撹乱を受けるとともに、インフラ施設や農地等の人工的景観も大きく破壊された。これに伴い、流域から沿岸にかけての水域では、様々な物質の動態が変化し、結果として河川や沿岸域の水質環境にも様々な変化があったと考えられる。本研究では、宮城・岩手沿岸の河川・沿岸部の水質等の化学的環境に関連する項目および土地利用形態や主要インフラの状態について、フィールド調査ならび既存データの整理により震災前後を含むここ10年間程度の時空間変化を捉えるためのデータベース構築を進める。そして、沿岸域の化学的環境への震災影響の理解と流域環境の影響に関する経験的定量モデルを作成し、今後の環境保全の方策を探る。

B-8地中レーダを用いた遺跡調査の効率化による復興支援(継続)

研究代表者

佐藤 源之(災害リスク研究部門・広域被害把握研究分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

藤澤 敦(東北大学埋蔵文化財調査室)、金田 明大(奈良文化財研究所)、高橋 一徳(東北大学大学院理学研究科)

研究の概要

東日本大震災の津波被害により、宮城・岩手など東北各県の沿岸部の多くの市町村で住宅地の高台移転が計画されている。高台移転では移転用地の遺跡調査が条例により義務付けられているが、膨大な数の遺跡調査が必要となることから事業の遅延が危惧される。本研究では地中構造や埋設物を可視化できる地中レーダを遺跡調査に用いることで、発掘必要性の検討や効率的な発掘作業の計画に役立てられることを実証する。そして自治体への技術供与などにより遺跡調査を効率化し、高台移転実現への貢献をめざす。また文化庁、奈良文化財研究所と協力し、継続的な文化財保護のための遺跡調査技術として地中レーダを地方自治体が利用できる仕組みを構築する。

B-9Damage and human loss estimation using integrated modeling of tsunami inundation, fragility curves and agent-based evacuation to support tsunami mitigation and reconstruction activities(新規)

研究代表者

マス・エリック(災害リスク研究部門・広域被害把握研究分野)

所内共同研究者

越村 俊一

所外共同研究者

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研究の概要

The present research study focuses on the damage assessment and human loss estimation at tsunami prone areas and the areas affected by the 2011 Japan tsunami. Coastal communities struggle to find a way to protect their population from tsunami and minimize the damage to their assets. In this study we aim to support these necessities by integrating a comprehensive analysis of tsunami impact through numerical modeling of inundation, structural damage to buildings from earthquake and tsunami and the estimation of casualties using evacuation simulation. The vulnerability of two kind of tsunami prone communities will be evaluated as chosen case studies: (i) a community at present risk of tsunami from seismic gap areas around the world (i.e. Nankai thrust in Japan; Peru-Chile trench); (ii) a community in Tohoku area at ongoing reconstruction efforts, where new plans of urban development will be evaluated against mega earthquake and tsunami.

B-10低環境負荷ジオポリマー硬化体の開発とγ線遮蔽材への適用(新規)

研究代表者

鈴木 裕介(災害リスク研究部門・最適減災技術研究分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

Sanjay PAREEK(日本大学)

研究の概要

近年、新たな建設材料の一つとして、コンクリートなどのセメント系複合材料に比して材料(セメント)製造時のCO2排出量を大幅に削減可能な、ジオポリマー法によるセメントレス硬化体(以下、GPコンクリート)の開発が注目されている。GPコンクリートとは、フライアッシュなどの活性フィラーにGP溶液(水ガラス、水酸化ナトリウム)を混練し、ポゾラン反応によって硬化させるコンクリートである。また、硬化体の強度増進のため適宜各種骨材が加えられ作製される。本研究では、「低環境負荷、地産地消」をキーワードとし、福島県で副産される銅スラグを骨材に用いたセメントレス硬化体の開発として、一般的なコンクリートと比べ高水準な強度、耐久性を持たせたGPコンクリート最適調合設計及び養生条件を検討する。また、開発した硬化体のガンマ線遮蔽性能評価を実施し、原発事故汚染物の遮蔽容器としての適用性を検討する。

B-11外房地域における古津波履歴と規模の推定(新規)

研究代表者

後藤 和久(災害リスク研究部門・低頻度リスク評価研究分野)

所内共同研究者

菅原 大助

所外共同研究者

柳澤 英明(東北学院大学)

研究の概要

房総沖では、1677年延宝房総沖地震津波が発生して以来、すでに300年以上が経過しており、近い将来の巨大地震・津波の発生が懸念される。しかし、外房地域での古津波調査は十分に行われておらず、津波履歴がまだ明らかにされていない。本研究では、千葉県銚子市を中心とする外房地域において津波堆積物調査を実施し、歴史・地質痕跡を説明しうる1677年延宝房総沖地震津波の波源モデルの再評価を行う。さらに、外房地域において長期の古津波履歴を得て、房総沖を震源とする地震・津波の発生履歴を明らかにする。本研究は、地域防災上の重要性のみならず、日本海溝沿いでの地震発生メカニズムを考える上で、極めて重要な成果になるものと考えられる。

B-12津波堆積物に基づく三陸海岸南部における巨大津波の解明(新規)

研究代表者

菅原 大助(災害リスク研究部門・低頻度リスク評価研究分野)

所内共同研究者

後藤 和久

所外共同研究者

西村 裕一(北海道大学)

研究の概要

日本海溝に近い三陸海岸一帯における津波堆積物は、プレート境界型巨大地震・津波の頻度と規模を評価する際に、鍵となる情報を提供すると考えられる。石巻市鮫浦湾では、これまでの調査により、2011年東北地方太平洋沖地震津波に際して陸上に大量の海砂が打ち上がっていたことが確認された。また、掘削調査により現地の地層中には古津波で堆積したと推定される砂層が複数確認された。鮫浦湾は、その海底地形および波源域との位置関係により、巨大津波に対して特有の応答を示してきた可能性がある。本研究では、過去の巨大津波の実態を明らかにするため、鮫浦湾および近傍の三陸海岸南部において、音波探査により浅海域海底の地層状況を確認し、2011年および過去の巨大津波による堆積物の分布状況を明らかにする。また、陸上および海底の堆積物の採取と分析を実施して津波発生年代、堆積物の供給源および運搬過程を推定し、津波伝播・氾濫と土砂移動の連成シミュレーションにより波源規模との関連を明らかにする。本研究により、日本海溝沿いの巨大地震津波の長期的リスク評価に資する知見が得られることが期待される。

B-13波浪の良さと悪い影響:波力発電と台風の被害(新規)

研究代表者

ブリッカー・ジェレミー(災害リスク研究部門・国際災害リスク研究分野)

所内共同研究者

ローバー・フォルカ

所外共同研究者

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研究の概要

現地調査・室内実験・数値シミュレーションを使い、波浪の影響を調べます。フィリピンの台風ハヤンにより起こった奇妙な段波の発生メカニズムがまだ不明なので、数値シミュレーションと室内実験を使い、調べます。同じ室内実験施設を使い波力発電機の効率性を検討します。

B-14台風による海岸付近波浪現象(新規)

研究代表者

ローバー・フォルカ(災害リスク研究部門・国際災害リスク研究分野)

所内共同研究者

ブリッカー・ジェレミー

所外共同研究者

Cheung, Kwok Fai(ハワイ大学)

研究の概要

Wave setup and flow velocities induced by individual typhoon waves. Storm wavesfrom typhoons and extra-tropical low-pressure systems affect the shoreline in manycountries. These waves pose hazardous conditions to the coastal population and cause substantial damage to coastal infrastructure. This study investigates the physics of individual swell storm waves and their contribution to storm hazards.

B-15交通の途絶が災害化するメカニズムに関する調査研究(新規)

研究代表者

奥村 誠(人間・社会対応研究部門・被災地支援研究分)

所内共同研究者

金 進英、佐藤 大介

所外共同研究者

南 正昭(岩手大学)、浜岡 秀勝(秋田大学)、神谷 大介(琉球大学)、植田 今日子(東北学院大学)、藤原 潤子(総合地球環境学研究所)

研究の概要

今年2月15日の豪雪による山梨県の孤立に代表されるように、異常気象を原因とする交通途絶が頻発している。しかし、交通の途絶が発生しても、地域に「籠城」するための事前の認識と備えがあれば大きな問題とはならない。このことから、事前の認識、直前の準備状況との関係を踏まえ、途絶の災害化に至るプロセスを分析することが必要であると考える。 本研究では、台風による交通の途絶にさらされる沖縄県の離島の実態に詳しい研究者、積雪による交通の途絶にさらされる東北地方山間部の実情に詳しい研究者とともに、交通の途絶の発生頻度、深刻化のプロセス、地域住民の事前認識と対応行動を調査、整理することを目的とする。合わせて途絶状況の克服が交通政策につながった歴史も検討する。また、研究代表者の奥村らは、関連する内容の書籍「途絶する交通・孤立する地域」を東北大学出版会から公刊している。その共著者のシベリアを専門とする文化人類学者、沖縄を対象とする社会学者もメンバーに加え、分野横断的な研究を行い、情報提供のあり方、事前規制の在り方、事前準備の高度化などを議論したい。

B-16交通シミュレーションに基づいた自治体の自動車避難計画の評価(新規)

研究代表者

金 進英(人間・社会対応研究部門・被災地支援研究分野)

所内共同研究者

奥村 誠

所外共同研究者

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研究の概要

地域によって道路の構造やネットワークの連結性がことなるため、各自治体では当地域にふさわしい避難計画を策定する必要がある。本研究では、現実の避難行動に近い状況を再現可能な交通シミュレーションを用いて、各自治体で提案した避難計画に基づいて自動車避難行動を再現することで、自動車避難による道路ネットワークの問題点や渋滞のメカニズムなどを明かすことができる。このような分析から、各自治体が提案している避難計画を評価することを本研究の目的とする。また、限定された条件下の災害リスクと所要時間コストを最小化する数理計画モデルを構築して交通シミュレーションに適用することで、現実性および実用性の高い避難計画を提案することができる。本研究の結果を用いると、新たな避難所の位置や避難所の容量制限、避難に必要な道路整備、避難誘導などに関しての検討が可能になり、地域の防災力向上に寄与することが期待できる。

B-17歴史資料の活用を通じた被災地域の歴史文化的記憶の継承に関する研究(新規)

研究代表者

佐藤 大介(人間・社会対応研究部門・歴史資料保存研究分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

高橋 美貴(東京農工大学)、高橋 陽一(東北大学東北アジア研究センター)

研究の概要

東日本大震災の被災地域において、津波その他で被災したものも含めた、文書や古美術品などの歴史資料を、地域社会における「歴史情報資源」として活用・継承するための環境整備を実践する。そのことを通じて、実務的課題について検討する。その上で、これらの歴史情報資源に内包される情報を活かし、被災した地域の「未来の古文書」を作成するという視点を踏まえ、地域の歴史文化的記憶の復元・記録化を進めてゆく。これらの作業過程の検証を通じて、歴史記録の中長期的な継承のための社会的なしくみのあり方について研究する。

B-18被災歴史資料の下張り文書に対する保全技術の研究(新規)

研究代表者

蝦名 裕一(人間・社会対応研究部門・歴史資料保存研究分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

山口 悟史(東京大学)

研究の概要

災害科学国際研究所人間・社会研究対応部門歴史資料保存分野では、東日本大震災で被災して解体を余儀なくされた建造物から、襖や屏風を回収し、下張りとされている古文書の保全活動に取り組んでいる。これらの下張り文書は、その全てが新発見の歴史資料というべき存在であり、所蔵されていた地域の歴史を解明しうる可能性を秘めたものである。本研究は、これら襖・屏風の下張り文書について、酵素水溶液を用いた下張りの剥がし作業、歴史情報を読み取れる状態にするための資料乾燥とフラットニング、資料の活用を期した中性紙封筒への収納と整理・記録・分析の行程を開発・効率化し、被災資料の保全技術を研究・確立するものである。

B-19地域歴史資料の防災・減災体制の構築に向けた広域的連携研究(新規)

研究代表者

天野 真志(人間・社会対応研究部門・歴史資料保存研究分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

内田 俊秀(京都造形芸術大学)、竹原 万雄(東北芸術工科大学)、吉川 圭太(神戸大学)

研究の概要

東日本大震災の発生は、地域の歴史文化を象徴する地域歴史資料の救済について、広域的かつ大規模な地震・津波被害に備えた多角的・広域的な連携体制の必要性をあらためて提起した。こうした状況を踏まえ、今後は各地で発生が想定される大規模災害に備え、救済すべき地域歴史資料に対する認識の市民レベルまで広げた共有化と実践的技法の普及化をおこなう必要がある。さらに、被災資料救済に関わる技法を、専門的レベルから一般的な応急対応法に至る多様なレベルの技法を連関的に把握することで、被災程度に即応した救済対応法を構築することも、急務の課題として求められている。以上の状況を踏まえ、本研究では、地域歴史資料の防災・減災体制の構築に向け、東日本大震災時における救済体制の検証・教訓化をおこなうとともに、それらの成果を近い将来大規模地震・津波の発生が想定される地域と、過去の教訓と現状の課題について分析することを目的とする。それらを通して、地域歴史資料の防災・減災体制に関する実践的モデルを提示し、新たな歴史資料保存学の展開を目指す。

B-20大学の業務継続計画(BCP)の策定・運用手法に関する研究(新規)

研究代表者

丸谷 浩明(人間・社会対応研究部門・防災社会システム研究分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

白木 渡(香川大学)、宮村正光(工学院大学)

研究の概要

大学の業務継続計画(BCP)は、企業や政府組織でBCPの策定が進む中で必要性が指摘されている。災害等の危機事象の発生時に、大学の学生や教職員の安全確保や資産の保全に加え、厳しい競争環境にある研究活動の継続、卒業・入学の確実な実施、さらには地域社会への災害時の貢献なども実現することの必要性は高い。しかし、現在、日本国内では大学でのBCPの策定事例は極めて少ない。一方、米国の著名な大学等に策定例が見られる。そのような中で、東日本大震災の教訓を踏まえて、東北大学においてもBCPを策定すべきではないかとの認識の下、学内で検討が始まっており、本件研究の代表者も加わっている。大学のBCPは、重要業務に多くに季節性が大きいこと、部局や教員の独立性の高い組織形態であることなどの特性があり、それらを踏まえた策定手法を見出す必要がある。そこで、国立大学でのBCP策定の先行例である香川大学工学部キャンパス、私立大学でBCPを準備中の工学院大学の研究者と意見交換をしながら、現実的で実効性があり、継続的な運用が可能な大学のBCPの策定・運用手法について研究を行う。

B-21東日本大震災に照らした我が国災害対策法制の改正に対する検証(災害応急対策)(新規)

研究代表者

島田 明夫(人間・社会対応研究部門・防災法制度研究分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

小森 繁、飯島 淳子(東北大学大学院法学研究科)

研究の概要

平成23年度から3年度に渡り、平成23年度には災害応急対策、平成24年度には災害復旧対策、平成25年度には災害復興・予防対策における災害対策法制の問題点と課題について、研究してきたところである。この間、2度に渡る災害対策基本法の改正、大規模災害復興法の制定などによって、提言の一部は実現したものの、災害救助法など未だに大きな改正が行われていない法律も多く残されており、災害対策基本法等についても積み残された課題も残されている。本研究においては、災害応急対策に焦点を当てて、これらの法改正等と東日本大震災の実態に照らして、被災地における現地調査や各種の実態調査に基づいて実証的に検証することによって、何が解決して何が未だに足りないかについて検証する。それを踏まえて、今後発生の可能性が高まっている首都直下の地震や南海トラフ沿いの地震・津波災害に堪えうる更なる災害対策法制の改正について提言を行う。

B-22列島における津波碑の民俗学的研究(新規)

研究代表者

川島 秀一(人間・社会対応研究部門・災害文化研究分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

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研究の概要

列島の太平洋沿岸に顕著に見られる津波の記録媒体として、石造の記念碑や供養碑などが残されている。西南日本には近世の建立が多く、三陸沿岸では近代の建立が多いが、その地域的、時代的特徴を捉えるのが、本研究の目的である。とくに、碑文の内容の比較だけではなく、その立地箇所(津波浸水線であることが多い)や、造立者の情報(公的な私的か)など、文献資料の扱いとは異なる、聞き書きを主とする民俗学的方法で総体的に把握する。

B-23リスク配慮型地域再建政策と生活再建プロセスに関する研究(継続)

研究代表者

井内 加奈子(人間・社会対応研究部門・防災社会国際比較研究分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

Robert Olshansky(University of Illinois)、Laurie Johnson(Laurie Johnson Consulting)

研究の概要

被災地の生活再建には長期の取り組みが必要不可欠である。東日本大震災からの再建では、将来的に起こりうる津波被害の軽減を考慮に入れた再建政策(土地利用計画と実施プログラム等)はいち早く打ち出された。しかし、広域かつ甚大な被災であったため、地理的・社会的特性や計画プロセス等、多様な要素により再建は長期化・複雑化しており、停滞感が増幅している地域も少なくはない。本研究は、災害から3~4年目における、地域再建の進展に関する実態を把握し、上位政策と再建プロセスの整合性や隔たりを明らかにすることを目的とする。その上で、再建課題に即した必要な対応策を、世界各国の事例を考慮に入れつつ提案する。本研究を起点として、今後世界各国で起こりうる大災害からの生活再建におけるベンチマークの設定と、政策デザインのためのガイドラインの構築に寄与することを目指す。

B-24小地域データを用いた大規模災害被災想定地域の地域特性の推計(継続)

研究代表者

石坂 公一(地域・都市再生研究部門・都市再生計画技術分野)

所内共同研究者

花岡 和聖

所外共同研究者

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研究の概要

これまでに開発した被災地特性推計・計測システムを用いて、東日本大震災被災地域に加えて、首都直下型地震、東海・東南海地震による被災想定地域について、基礎的な「小地域(町丁目や基本単位区(50世帯程度))」単位での社会・経済データの推計を行う。また、これを用いて地域の居住者特性を把握し、想定される地震、津波危険度と重ね合わせることで、地域の被災度と居住者特性を踏まえた詳細な被災推定と対策のための課題の抽出を行う。

B-25復興まちづくりと平時のまちづくりの相互関係に関する研究(新規)

研究代表者

姥浦 道生(地域・都市再生研究部門・都市再生計画技術分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

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研究の概要

一般に「まちづくり」とは、主体が住民であり、かつソフト面も含めた内容を含む点で、行政主導型でかつハード面の事業が中心となる「都市計画」と区別されるものである。このようなまちづくりは、行政のマンパワーや財政力に限界がみられる中で、非常に重要な役割を果たすべきものである。その点は、震災の有無にかかわらず該当するが、震災時はその必要性がさらに高まる。本研究は、このようなまちづくりを「震災時のまちづくり」と「平時のまちづくり」に区分し、その両者の関係性を明らかにすることを目的とする。具体的には、「一方で、平時のまちづくりは震災時のまちづくりを円滑に進める上での重要な構成要素であり、他方で、震災時のまちづくりは平時のまちづくりへの円滑な移行を行う上での重要な構成要素である」との仮説に基づき、その点を実証的に明らかにすることを目的とする。

B-26震災復興・防災計画に向けた人口・土地利用に関する細密データベースの構築と活用(継続)

研究代表者

花岡 和聖(地域・都市再生研究部門・都市再生計画技術分野)

所内共同研究者

石坂 公一

所外共同研究者

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研究の概要

東日本大震災の被災地での復興計画や将来の大規模な地震被害想定の策定において、詳細な空間スケールでの人口・土地利用データベースは不可欠である。本研究では、空間的マイクロシミュレーションと呼ばれる手法を用いて、土地利用と人口のメッシュデータの推計を行う。そして、これらデータのWeb配信やまちなみ三次元モデル化を通じて、復興計画・被害想定における人口・土地利用データベースの実践的活用を目指す。

B-27遡上津波と構造物の連成解析とその重層的見える化に関する研究(新規)

研究代表者

寺田 賢二郎(地域・都市再生研究部門・地域安全工学研究分野)

所内共同研究者

森口 周二、加藤 準治、今井 健太郎

所外共同研究者

樫山 和男(中央大学)、浅井 光輝(九州大学)、金子 賢治(八戸工業大学)、車谷 麻緒(茨城大学)

研究の概要

遡上津波による都市域内の種々の構造物の変形・損傷のメカニズムの解明を目的として、構造部材の漂流・衝突に伴う流体力の時空間変化の影響を考慮しながら評価できる連成解析手法のプロトタイプを開発し、そのプロセスの詳細な調査・考察が可能となるような“見える化”を試みる。広域の地形のモデル化にはGISデータを用い、沿岸部における堤防や防潮堤、および都市域の家屋・ビルや橋梁等のインフラ構造物のモデル化にはCADデータからなる3次元数値地図を利用して実際の街並みを再現する。そして、これまで開発を進めてきた、震源域、沖合からの津波の伝播・遡上、および街中への浸水過程の3次元数値シミュレーション手法の高精度化およびロバスト化を図り、建物の損壊過程を再現可能な有限要素法と個別要素法を組み合わせた流体・構造連成解析手法の開発へと展開する。解析結果は、H26年度に所内に導入予定の「災害科学情報の多次元統合可視化システム」上で重層的かつ精細に表示し、現象の直感的な理解を助ける視覚的効果についても検討する。

B-28高精度津波シミュレーションに基づく確率論的津波ハザード評価(新規)

研究代表者

森口 周二(地域・都市再生研究部門・地域安全工学研究分野)

所内共同研究者

寺田 賢二郎、加藤 準治、今村 文彦

所外共同研究者

京谷 孝史(東北大学大学院工学研究科)、大竹 雄(岐阜大学)

研究の概要

高精度な数値解析を主軸とする信頼性解析手法の枠組みを応用し、津波発生時の沿岸部における高精度な津波到達高さの確率論的評価を可能とする枠組みを提案する。また、東北地方太平洋沖地震に伴って発生した津波を対象として、提案する枠組みを適用することにより、その利点や問題点を明らかにする。複数ケースの数値解析の結果と各種のバラツキを考慮して、発生確率分布を直接的に求めるため、高度な数値解析の結果を反映させた確率論的評価が期待できる。また、本研究で用いる評価の枠組みは、津波以外の災害に対して応用が可能である。今後の防災を考える上で、数値解析技術と確率論的評価の融合は、学術レベルと実務レベルの双方に対して重要なものであり、本研究の成果はその良例として提示することが可能である。

B-29地震エネルギーを効率よく吸収する材料の最適微視的構造の開発(新規)

研究代表者

加藤 準治(地域・都市再生研究部門・地域安全工学研究分野)

所内共同研究者

寺田 賢二郎、森口 周二

所外共同研究者

京谷 孝史(東北大学大学院工学研究科)

研究の概要

巨大な地震エネルギーに対し、安全かつ低コストで構築できる土木構造物を設計するためには、主要な構造部材に「靭性に優れた材料」を用いることが重要である。このような背景から、現在では材料の靭性性能を向上させる先端材料の研究開発が盛んに行われている。しかし、その材料の靭性性能を決定づける鍵は材料の微視的組織にあり、その最適構造を経験則による手法だけで発見することは不可能であるといってよい。そこで本研究では、この複雑な力学問題をコンピュータ上の仮想数値実験によって解析し、その最適構造を発見するための手法を開発する。

B-30小型飛行体による打音検査法に関する研究(新規)

研究代表者

田所 諭(地域・都市再生研究部門・災害対応ロボティクス研究分野)

所内共同研究者

竹内 栄二朗

所外共同研究者

大野 和則(東北大学未来科学技術共同研究センター)

研究の概要

本申請では、ビルの壁面やトンネル壁面、橋梁等の老朽化を、小型の飛行体を用いて打音により検査する手法について研究を行う。災害時にインフラや建物などの建造物が機能を失わないよう予防することは、復旧や救助活動、生活の維持の面からも極めて重用である。現在、高度成長期に建設された多くの建造物の耐用年数が越えようとしており、多くの災害においてこのような老朽箇所を中心に事故が多発している。このような老朽化対策は防災の要であり、対策が必須である。しかしながら全ての建築物を再建することは困難であり、補修の必要性を判断する点検作業もまた足場の設置や安全のための交通整理等、多くの費用と時間を要する。近年マルチコプタ等の小型の飛行体の研究開発が進み、自律飛行技術やこれを利用したインフラ点検技術等が報告されている。これにより画像や形状の収集が可能であり、足場を必要としない検査法として期待されている。現在の検査プロセスにおいては、最終的に修繕を必要とするかの判断には打音による検査が必要である。現在小型の飛行体による打音検査の実現例はなく、小型飛行体での打音検査の実現により、足場や吊具等を必要としない迅速な検査を実現できる。小型飛行体は飛行するために姿勢制御を必要とするため、打音検査を行う場合壁面との接触は制御系への外乱となる。本研究では、打音検査における飛行体制御への外乱特性を明らかにするとともに、これらを解決する機構や制御法について研究を行う。またボルト等狭隘部にある検査対象に対して打音検査を行うための、狭隘部に侵入し検査するための方法論について研究を行う。

B-31地物表面放射線源分布推定のための線量計の計測軌跡計画(新規)

研究代表者

竹内 栄二朗(地域・都市再生研究部門・災害対応ロボティクス研究分野)

所内共同研究者

田所 諭

所外共同研究者

大野 和則(東北大学未来科学技術共同研究センター)

研究の概要

福島第一原発事故により東日本に広がった放射性物質は風雨により移動・集約され局所的に線量が高いマイクロホットスポットを形成している。これら地物表面の放射性物質の分布を知ることは、現在避難している住民の帰還や、生活している住民の安心や、農業等を行う上で非常に重用である。マイクロホットスポットには十数センチ程度の領域に周囲に比べ数十倍の放射能を有するものもあり、離れた場所では線量が低くとも、直接作用した場合影響が大きい。反面、その場所がわかれば除染を効率化することができる。しかしながら、これら線量の計測には、その対象となる領域の広さから、全域を検査することは容易ではなく、時間が経ってから高線量のマイクロホットスポットが発見されることも多々あるのが現状である。申請者は、一般的な感度(数百cpm/μSv程度)の空間線量計を用いて、地物表面の放射線源分布を推定する研究に取り組んできた。本手法では、線量計を移動させつつ空間線量を計測し、その位置と地面形状から放射線の減衰特性と放射性物質の崩壊の確率モデルから、逆問題解析により地物表面の線源分布を求める。ガンマカメラ等に比較し安価かつ軽量であることから普及による広域の調査やロボットでの計測に応用が期待できる。提案手法では、計測に時間を要することと、計測する経路によりその推定精度が異なる問題があった。本申請では、短時間で正確な線源分布を推定するための線量計の最適な計測軌跡を、地形および計測状態から事前に計画する方法について研究を行う。

B-32津波避難計画を考慮した住民主体のまちづくり支援(新規)

研究代表者

村尾 修(地域・都市再生研究部門・国際防災戦略研究分野)

所内共同研究者

越村 俊一、マス・エリック

所外共同研究者

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研究の概要

本研究の対象地である神奈川県藤沢市の片瀬海岸は、年間400 万人以上もの海水浴客が訪れる全国有数の海水浴場として知られており、昭和50 年代から同報無線の整備や津波避難ビルの指定など、津波対策に取り組んできた。それでも、津波来襲時の地形的要因による避難経路の判断の難しさ、避難場所の確保、津波避難ビル指定の交渉の難しさ、住民および観光客への避難方法の周知、指定された避難ビル住民の受入対応など、解消すべき課題が多く残されている。本研究は、東日本大震災の経験を踏まえるとともに、研究代表者による既往研究を発展させ、同地区の津波避難計画案を策定し、町内会住民とともにその現実的な活用方法を検討していく中で、津波被害軽減のための方策づくりを支援することを目的としている。また、本研究で得られた知見を活用すべく、南海トラフ地震による被害が懸念されている地域での防災まちづくり支援を行う。平成26 年度は、徳島県美波町での講演およびまちづくりワークショップを、地元の住民と共同で実施する。

B-33気象データの気候地域モデルによるダウンスケーリングの手法の習得し、大災害による地域においてのリスク分析に適用する(継続)

研究代表者

イ・ケリーン(地域・都市再生研究部門・国際防災戦略研究分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

Yonghee Shin(APEC Climate Center)

研究の概要

世界各地で起こる巨大水災害は、台風や集中豪雨、積雪もしくは海水面の上昇によるものになっているが、地球温暖化に深く関係しているとされている。 水関連災害には、洪水などの水害の他にも雪災害、干ばつや砂漠も含まれる。熱帯低気圧による台風は、海水温に大きく関連していて、特に最近のIPCC発表によると1971~2012年において、海洋の上部(0~700m)水温が上昇していて、さらには、1992~2005年において、3000m以深の海洋深層で水温が上昇していると確信している。2013年11月フィリピンを襲った台風ヘイアンは、海水温の上昇が台風の巨大化に大きく関連していると考えられている。またグリーンランド及び南極の氷床の質量は減少しており、北極の海氷面積や北半球の春季の積雪面積は、減少し続けている。人間活動が地球温暖化の主な要因である可能性は極めて高いとされている中、BRICKsのような新興国による開発は、かつて都市開発を進めてきた先進国の責任問題と共に、国境を越えた問題として政策の決定の議論をしなければならない。本研究は、気候変動のメカニズムをより理解し、的確なシミュレーションの分析を行うために、事前処理として気候変動データのダウンスケーリングの手法を学び、災害の事例を通して、気候モデルとダウンスケーリングを遂行することで、災害による被害地域においての災害リスク評価を行い、今後の研究を進める上で、基盤となるデータの科学的な加工・編集処理を的確に遂行することを目的とする。

B-34海底間音響測距観測による日本海溝の海溝軸付近の挙動の検出(新規)

研究代表者

木戸 元之(災害理学研究部門・海底地殻変動研究分野)

所内共同研究者

日野 亮太、飯沼 卓史

所外共同研究者

伊藤 喜宏(京都大学)、太田 雄策(東北大学大学院理学研究科)

研究の概要

本プロジェクトでは、既に開発・試験観測済みの海底間音響測距装置を、日本海溝の、モデリングに基づいて適切に選定する位置に設置し長期連続観測により、基線の変化を検出し、周囲の既存のGPS音響結合方式の海底地殻変動観測と併せて、地震時の最大被害想定と密接に関係する海溝軸付近の固着状態を把握する。

B-35東北地方太平洋沖地震以前のプレート間カップリングの再評価(新規)

研究代表者

飯沼 卓史(災害理学研究部門・海底地殻変動研究分野)

所内共同研究者

内田 直希

所外共同研究者

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研究の概要

2011年東北地方太平洋沖地震以前のプレート間の固着状態に関して、三角測量・水準測量・潮位観測・歪計・傾斜計などの、GPS出現以前の測地学的観測データを用いて再評価を行う。プレート収束方向に沿って仮定した帯状の領域における変位の空間勾配が、プレート間の固着を反映していることに基づき、過去の測地観測データから変位の空間勾配を推定することによって、プレート間の固着強度の空間変化についてある程度評価することができる。時間窓を変えてこの解析を行うことによって、空間変化のみならず時間変化をも知ることができる。GPSデータのない時期に関して得られた固着強度の時空間変化を、GPSデータのある時期の解析結果と比較することで、東北地方太平洋沖地震発生以前に東北日本沖のプレート境界における固着強度がどのように時間変化していたか、プレート境界で発生する小繰り返し地震の活動度の時間変化と合わせて考察するとともに、他の領域で同様の地震が発生する可能性の有無についての評価手法を提案する。

B-36東北日本沈み込み帯プレート境界における温度及び間隙水圧の3次元的分布の推定(新規)

研究代表者

和田 育子(災害理学研究部門・海底地殻変動研究分野)

所内共同研究者

日野 亮太、木戸 元之、飯沼 卓史、岡田 知己、内田 直希

所外共同研究者

Jiangheng He(Geological Survey of Canada)、Glenn Spinelli(New Mexico Institute of Mining and Technology)、中島淳一(東北大学大学院理学研究科)、伊藤喜宏(東北大学大学院理学研究科)

研究の概要

沈み込み帯プレート境界における、地震性・非地震性滑りイベントや低周波微動の発生および火山下のマグマ生成を規定する物理的条件の把握を目的とし、熱流量及び地殻変動に関する観測データ、地震学的知見(地震波速度構造・震源分布など)を制約条件に含めて数値計算を行い、北海道・東北日本沈み込み帯の3次元的な温度構造と水の分布を推定する。温度は断層の摩擦特性やマグマ生成を左右する。また、間隙水圧の増加は断層を滑りやすくし、火山下での水の流入はマントルの融点を低下させる。温度と水の分布を推定することにより、プレート境界面の滑り様式・滑り分布とマグマの生成場所の理解を深める。

B-37東北地方太平洋沖地震に伴う巨大津波の発生要因に関する研究(継続)

研究代表者

東 龍介(災害理学研究部門・海底地殻変動研究分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

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研究の概要

2011年東北地方太平洋沖地震では、プレート境界面の高速破壊に伴う陸側プレート先端部の堆積岩体(付加体)のオーバーシュートによって、巨大津波が生じた。その原因となった海溝軸近傍の地震時大すべりは宮城県沖に集中し、三陸沖・福島沖のすべり量に比べはるかに大きい。すべり量のこうした南北差の要因の一つとして、海溝陸側斜面下の地殻構造が海溝軸に沿って不均質である可能性が考えられる。本研究では、東北地方太平洋沖地震震源域の地震学的構造の抽出を試み、構造の観点から巨大津波の発生メカニズムの解明にアプローチする。

B-38大地震に伴う活断層・火山周辺の地震活動変化の詳細な検討とモデル化 -東北地方太平洋沖地震および国内外の大地震を対象にした比較研究(新規)

研究代表者

岡田 知己(災害理学研究部門・地震ハザード研究分野)

所内共同研究者

三浦 哲、遠田 晋次、日野 亮太、山本 希、内田 直希、市来 雅啓、和田 育子

所外共同研究者

飯尾 能久(京都大学)、長橋 良隆(福島大学)、山本 英和(岩手大学)、松本 聡(九州大学)、Rick Sibson(オタゴ大学名誉教授)、松澤 暢、矢部 康男、中島 淳一(東北大学大学院理学研究科)、長谷川 昭(東北大学名誉教授)

研究の概要

東北地方において、活断層周辺や火山周辺における地震活動に対する東北地方太平洋沖地震の影響について検討を行う。東北大学により蓄積されている過去の地震観測記録を活用する。また、沈み込み帯として同種の背景を持つ中国地方・九州地方・ニュージーランドとの比較検討を通して、地震発生モデルの高度化ならびに関係機関との連携強化を行うとともに、内陸地震に関して得られる知見を災害軽減につなげる方策についても議論を行う。

B-39東北地方太平洋沖地震後の地震発生メカニズムの解明(新規)

研究代表者

内田 直希(災害理学研究部門・地震ハザード研究分野)

所内共同研究者

三浦 哲、岡田 知己

所外共同研究者

浅野 陽一(防災科学技術研究所)、中島 淳一、太田 雄策、長谷川 昭、豊国 源知、矢部 康男、松澤 暢(東北大学大学院理学研究科)

研究の概要

東北地方太平洋沖地震(東北沖地震)は、その周囲の地震発生様式を大きく変え、日本列島がこれまで経験したことがないような状況を生じさせた。例えば、地震時大すべり域では、プレート境界地震が静穏化し、代わりに周囲で地震数が増えた。また、陸側のプレート内と沈み込むプレートの海溝近傍では正断層型地震が増加した。また関東地方では、通常地震後にみられる地震数の減少が鈍く、房総沖スロースリップイベントの発生間隔の短縮化し、応力増加レートが上がっていることが指摘されている。以上のように、東北地方周囲の地震活動を理解する上でこれまでの常識がもはや通用しない状況にある。したがって新たな活動様式を明らかにし、その原因とそこから予想されるハザードを理解することが重要である。本研究では、小繰り返し地震を含む種々の地震、GPS等のデータを用いて、関東地方および東北地方で現在起きている地震活動の原因を調べる。また、岩石実験による素過程の研究、地震による地表のゆれをより高精度で見積もる手法の開発も行い、得られた地震活動の特徴をハザード評価につなげる。

B-40火山体変形モニタリングに基づく噴火ポテンシャル評価手法の開発(新規)

研究代表者

三浦 哲(災害理学研究部門・火山ハザード研究分野)

所内共同研究者

山本 希

所外共同研究者

太田 雄策(東北大学大学院理学研究科)、大園 真子(山形大学)

研究の概要

火山噴火に伴う主要な災害には、噴石、降灰、火砕流、溶岩流、土石流、融雪型火山泥流などがあるが、いずれの場合も噴火がどの場所で起こりうるかについて、ある程度事前に絞り込んでおくことができれば、火山災害の軽減にとって極めて有益な情報となる。本研究では、活発化した火山で観測される山体の変形等を高精度で把握することによって、噴火前のマグマの上昇・移動といった現象について可能な限り精確な推定を行い、噴火ポテンシャルの評価を行うための手法を開発する。

B-41噴火予測精度向上の為の全磁力繰り返し観測効率化の試み(新規)

研究代表者

市來 雅啓(災害理学研究部門・火山ハザード研究分野)

所内共同研究者

-

所外共同研究者

橋本 武志(北海道大学)

研究の概要

高精度・再現性の高い光ポンピング型全磁力計の携帯歩行観測が火山体繰り返し全磁力観測に適用可能か技術的評価を行う。 技術的に従来手法と遜色がない場合、 観測人数の削減・定点ベンチマーク保守が不必要となることで、 噴火予測の為の全磁力変動場の時間分解能と空間分解能の向上が期待できる。 従来の全磁力観測実績が豊富な吾妻山での定量的比較を中心に研究を行い、 有用性を確認出来次第、 東北太平洋沖地震後の噴火予測を睨みながら順次東北・北海道の主要な活火山での広域全磁力変動場の蓄積に取り組む。 より広域の全磁力変動場を高頻度でモニターすることで側噴火や地盤変動を伴わない想定外とされてきた噴火を予測し、 災害事前対策・災害発生予測と将来への備えに資することを最終目標とする。

B-42仙台平野南部の活断層と苦竹伏在断層との連続性について(新規)

研究代表者

岡田 真介(災害理学研究部門・地盤災害研究分野)

所内共同研究者

今泉 俊文

所外共同研究者

住田 達哉、牧野 雅彦(産業技術総合研究所)、池田 安隆(東京大学)

研究の概要

H24年度に実施した仙台平野南部における反射法地震探査の解析結果から、沖積平野下に伏在する活断層の存在が明らかになった。また、反射法地震探査測線上において約200 m間隔で実施した重力探査の結果、活断層に伴った基盤の変位・変形による急激な重力変化が観測された。これまでの研究によって明らかになってきた仙台平野南部の活断層は、既存の反射法地震探査データ(宮城県、 2004)によると岩沼市街地を抜け、愛島丘陵の東縁を通り、北へ延長すると予想される。しかし、名取川沿いには反射法地震探査は実施されておらず、苦竹伏在断層(長町-利府断層の前縁に存在する伏在断層)との関係は、明らかになっていない。そこで本研究では、精密な重力測定を複数測線にわたって実施し、活断層の連続性を空間的に追跡し、仙台平野南部の活断層と苦竹伏在断層との関係について明らかにする。

B-43災害科学への陸面過程モデルの利用に関する研究(継続)

研究代表者

山崎 剛(災害理学研究部門・気象・海洋災害研究分野)

所内共同研究者

岩崎 俊樹

所外共同研究者

-

研究の概要

陸面過程モデルは気象データから植物・積雪の状態をシミュレーションできることを用いて、植物の濡れが原因となる作物病害、降霜害、融雪洪水などの発生条件、気象要素依存性などを研究する。また、数値気象予報データを用い、これらの災害に関する予測の可能性について検討する。

B-44数値モデルと衛星観測の比較による夏期日本域の降水量の定量的評価(継続)

研究代表者

岩渕 弘信(災害理学研究部門・気象・海洋災害研究分野)

所内共同研究者

-

所外共同研究者

早坂 忠裕、吉岡 真由美(東北大学大学院理学研究科)

研究の概要

雲解像モデルによる数値シミュレーション結果を最新の衛星観測データと比較し、夏期の日本周辺域における降水量の再現性を定量的に明らかにする。台風や梅雨に伴う集中豪雨等の事例を対象として条件を変えて実験を行い、モデルの性能向上と降水量予測の改良を目指す。雲物理特性の時空間分布をモデルと衛星観測で比較し、雲微物理過程の表現が降水量予測精度にどのような影響を持っているか、および衛星観測データの活用によってどの程度の性能向上が見込まれるのかを明らかにする。

B-45国際宇宙天気研究におけるCOE活動(新規)

研究代表者

小原 隆博(災害理学研究部門・宙空災害研究分野)

所内共同研究者

土屋 史紀

所外共同研究者

吉川 顕正(九州大学)

研究の概要

宇宙空間における人工衛星故障および宇宙飛行士被曝は、宇宙環境の悪化によって発生する。こうした宇宙災害の未然防止や減災を実現すべく、世界的規模で宇宙天気予報の高精度が行われているのが現状である。本プロジェクトは、国連を中心とした、長期的宇宙活動持続ワーキンググループ活動を牽引することを目的に、高度な宇宙天気予報の実現に向けたベストプラクティスガイドラインを構築していく事を課題とする。

B-46広帯域太陽電波常時観測による太陽活動危険状態の研究(継続)

研究代表者

三澤 浩昭(災害理学研究部門・宙空災害研究分野)

所内共同研究者

小原 隆博、土屋 史紀

所外共同研究者

増田 智(名古屋大学)、岩井 一正(国立天文台)

研究の概要

太陽面から惑星間空間に拡がる太陽プラズマ大気では、フレアやコロナ質量放出(CME)といった大規模な太陽磁場とプラズマの相互変動過程の発現にともない、広い周波数帯に渡って太陽電波が放出される。本研究では、先ず、太陽面近傍~コロナ域を起源とし、地上から観測可能な20~500MHzの広帯域の太陽電波を観測可能な電波スペクトル観測装置を開発し、電波による太陽活動の常時モニターの確立を行う。次に、この装置による電波観測と、地上や科学衛星からの観測により得られるX線、紫外線~マイクロ波の多波長の太陽現象イメージと高エネルギープロトン現象(SEP)との比較・照合を通じて、地球や地球周辺の環境や人間活動に影響を及ぼす高エネルギー現象と電波現象との関連を精査し、電波観測による太陽活動危険状態監視の役割を明かにしてゆく。太陽面から惑星間空間に拡がる太陽プラズマ大気では、フレアやコロナ質量放出(CME)といった大規模な太陽磁場とプラズマの相互変動過程の発現にともない、広い周波数帯に渡って太陽電波が放出される。本研究では、先ず、太陽面近傍~コロナ域を起源とし、地上から観測可能な20~500MHzの広帯域の太陽電波を観測可能な電波スペクトル観測装置を開発し、電波による太陽活動の常時モニターの確立を行う。次に、この装置による電波観測と、地上や科学衛星からの観測により得られるX線、紫外線~マイクロ波の多波長の太陽現象イメージと高エネルギープロトン現象(SEP)との比較・照合を通じて、地球や地球周辺の環境や人間活動に影響を及ぼす高エネルギー現象と電波現象との関連を精査し、電波観測による太陽活動危険状態監視の役割を明かにしてゆく。

B-47落雷電流波形の導出を目的とした低周波電磁界伝搬特性の研究(新規)

研究代表者

土屋 史紀(災害理学研究部門・宙空災害研究分野)

所内共同研究者

小原 隆博、三澤 浩昭

所外共同研究者

佐藤 光輝(北海道大学)

研究の概要

雷放電は雷雲-地上間に雷撃電流が流れる現象であり、放電に伴い、広い周波数範囲に渡り強い電磁波が放射される。雷撃電流を知ることは、雷害の把握と対策を講じる上で必要であるが、落雷の発生は事前に予測ができない上、雷撃電流を直接計測する装置は大規模で高価である。一方、雷放電から放射される電磁波を遠隔地で測定し、これから雷撃電流の情報を取得できれば、広範囲で発生する雷撃電流の情報を容易にすることが可能になる。本研究では、観測点から離れた地点で生じた落雷の電流情報を導出するため、落雷地点から観測点への電磁伝搬過程を評価する事を目的とする。低周波の電磁波は、電離圏で反射する成分を考慮しなければならない事から、本研究では電離圏の効果を取り扱う。研究の遂行のため、次の3項目を実施する。(1)落雷の放電特性の把握のためのVLF/LF帯電波観測と、電離圏反射の影響を受けたELF帯電磁波の同時観測、(2)鉄塔への雷撃電流の直接観測、(3)電離圏反射・減衰の効果を含んだ電磁界計算による電磁波伝搬効果の評価と観測との比較。

B-48活断層端部の幾何形状と微小地震活動による地震ポテンシャル評価(新規)

研究代表者

遠田 晋次(災害理学研究部門・国際巨大災害研究分野)

所内共同研究者

石村 大輔

所外共同研究者

片尾 浩(京都大学)、Ross S. Stein(米国地質調査所)

研究の概要

内陸地殻内地震(内陸地震)は海溝型巨大地震よりも一回り規模が小さいが、被害は局所的に甚大となる。東北地方太平洋沖地震後には複数の内陸被害地震が誘発され、西南日本では次の南海トラフ沿いの巨大地震前に内陸地震活動の活発化が懸念されている。内陸地震による災害軽減のためには、活断層の地震切迫度と適確な規模予測が重要となる。特に甚大な被害が心配される長大活断層による連動型地震を予測するには、断層不連続区間や断層端部の応力・強度状態を適確に推定する必要がある。 そこで本研究では、1995年兵庫県南部地震を引き起こした六甲?淡路島断層系と、隣接する有馬?高槻断層系で事例研究を行う。特に、断層系末端部の断層幾何形状と微小地震の空間分布に着目し、断層端部での応力集中・分散の推定を行う。また、両断層系の活動履歴、2013年淡路島中部地震や丹波地方の微小地震のメカニズム解や兵庫県南部地震の余震減衰特性を明らかにすることより、断層末端部での地震応答の時系列を明らかにする。研究成果は、地震発生物理の基礎研究の進展に寄与し、内陸地震の長期評価向上に貢献する。

B-49東北地方太平洋岸における過去の巨大地震時の地殻変動検出の試み(新規)

研究代表者

石村 大輔(災害理学研究部門・国際巨大災害研究分野)

所内共同研究者

遠田 晋次、丹羽 雄一

所外共同研究者

宮内 崇裕(千葉大学)

研究の概要

M8-9規模の海溝型巨大地震が発生している世界のプレート収束帯(カスケード、アラスカ、スマトラなど)では、過去の地震時変動・余効変動・地震間変動の情報が地形・地質学的調査によって得られ、それらは海溝型巨大地震サイクルモデルの構築に重要な役割を果たしている。しかし、2011年東北地方太平洋沖地震(Mw9。0)が発生し大規模な地殻変動が観測された東北地方太平洋岸では、観測記録以前の地震・津波履歴情報が不足しているだけでなく、それらの地震の規模や破壊領域を知るために重要な地震時の地殻変動に関する情報は得られていない。本研究では、三陸海岸に分布する完新世段丘・低地を対象に地形・地質調査を実施し、過去の巨大地震時における地殻変動の推定および日本海溝周辺での海溝型巨大地震サイクルモデルの構築を目的とする。さらに過去の地震発生の証拠として、離水海岸地形と津波堆積物を指標として用いるため、東北地方太平洋岸での問題である長期間(数千?十万年)の地殻変動や古津波堆積物に関する情報も同時に得られると期待される。このような過去の巨大地震時における地殻変動に関する情報は、沿岸部の都市計画や防災計画に貢献することも期待される。

B-50日本の医療機関における受援計画に関する調査(新規)

研究代表者

佐々木 宏之(災害医学研究部門・災害医療国際協力学分野)

所内共同研究者

江川 新一

所外共同研究者

-

研究の概要

東日本大震災では、被災地医療機関は多数の傷病者の診療と同時に様々な支援に対応しなければならなかったが、病院自体が被災しており支援の受け入れに十分手が回らず、支援力を十分活用できなかった、等の課題が抽出された。どのように支援を受けるか「受援計画」を予め整備しておくことが必要不可欠と考えられた。当研究室では平成25年5月?7月に「医療機関における『受援計画』に関するアンケート調査」を実施し、東日本大震災被災地医療機関から受援計画として策定しておくべき事項について意見を集計し、「受援計画を含む災害対応チェックリスト(試案)」としてまとめHP上で公開した(アンケート集計結果は平成26年2月の第19回日本集団災害医学会総会・学術集会で優秀演題セッションに採択)。 本研究では、先の調査結果をもとに、研究対象を日本国内全体の医療機関に拡大する。南海・東南海トラフ地震で被災が予想されている西日本の各医療機関、自治体、医師会等と連携し、西日本医療機関での受援計画策定状況調査及び受援計画策定の支援活動を行う。また調査結果で得られた受援に纏わる知見を、海外での災害時医療支援に活用できるよう各国政府、国連関係機関、NPO等と情報を共有し、国内外被災地医療機関の受援力向上に貢献する。

B-51災害関連発熱疾患の早期発見のためのバイオ・マーカー研究(新規)

研究代表者

浩 日勒(災害医学研究部門・災害感染症学分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

Elizabeth Telan(STD AIDS Cooperative Central Laboratory)、Bachti Alisjahbana(パジャジャラン大学病院)、川瀬 三雄(東北大学大学院医学系研究科)、清元 秀泰(東北メディカルメガバンク機構)、仁木 敏郎(香川大学)、小泉 信夫(国立感染症センター)

研究の概要

災害に伴う感染症を定義づけするのは困難であるが、洪水の際のレプトスピローシス(環境水に存在するスピロヘーターを原因とする)やデング熱(蚊の媒介)は中規模災害後にも多発する疾患であり、その対応は重要である。特に前者は非特異的な症状が多く、早期診断が困難であるために初期対応の遅延は予後に直結する致死的イベントへと繋がる。そのため、尿検査や血液検査による腎機能検査の特徴を把握し、更に新たなバイオ・マーカーの発見が大きな課題である。一方、デングウイルスに関しては既にGalectin-9、 Osteopontinなどのマトリセルラー蛋白の上昇が認められている。これらの意義をさらに経時的に採取したサンプルで明らかにする。また、川崎病も主要六症状により比較的診断が簡単ではあるが、その病理学的成因については不明なところが多い。そこで、本研究では災害関連発熱疾患の各種検体を用いて、Galectin-9、 Osteopontinなどのタンパク測定に加え、Lumienxでの解析を行い、各疾患の発症成因に迫るものとする。

B-52災害医療時のX線撮影のための高電圧装置に関する基礎的検討(新規)

研究代表者

千田 浩一(災害医学研究部門・災害放射線医学分野)

所内共同研究者

稲葉 洋平

所外共同研究者

李 昌一(神奈川歯科大学)

研究の概要

災害医療等におけるX線撮影の重要性が高まっており、例えば災害医療現場での迅速かつ的確なトリアージの一助として、災害時X線撮影は大いに期待されている。厚生労働省の医政局からも、「災害時の救援所等におけるX線撮影は、トリアージの適正な実施、搬送先医療機関および搬送手段の適切な選定等に資する」と指導が発令されている(医政指発第0107003 号、平成21 年1 月7 日)。しかしながら災害時のX線撮影において、電源設備が損傷を受けた場合、X線装置に十分な電力を供給できずに、X線撮影が行えないことがあり、重大な課題となっている。そこで今回申請者らは、電源設備損傷に対応するために、新しく供給電源の多様化を試みる。つまり災害時X線写真撮影用の高電圧システムに関する基礎的検討を行う。すなわち、①バッテリまたは小型携帯発電機、②太陽光発電、などの多様化した電源を使用できる災害時X線撮影装置の高電圧装置の開発を目指す。

B-53低線量・低線量率放射線被ばくによる脳梗塞・心筋梗塞発症の原因解明のための基礎的研究(継続)

研究代表者

細井 義夫(災害医学研究部門・災害放射線医学分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

上原 芳彦(東北大学大学院医学系研究科)、村田 泰(東北大学大学院医学系研究科)

研究の概要

福島第一原子力発電所事故により土壌が汚染された地域に居住する住民は、今後長期間にわたり低線量・低線量率放射線に被ばくする。旧ソ連のウラル核惨事とテチャ川の核汚染により低線量率長期被ばくした住民では、発癌だけでなく心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが増加することが近年報告されている。放射線による発癌や遺伝的障害についての基礎的研究は進められてきたが、低線量率放射線による心筋梗塞や脳梗塞は発癌と比較して致死リスクが小さくないにもかかわらず、その発症機序に関してはあまり研究が行なわれていない。本研究では、低線量・低線量率被ばくにより心筋梗塞や脳梗塞など血栓が形成される機序を解明し、将来有効な予防法を開発するための道筋をつけることを目的とする。平成25年度の研究から、培養ヒト血管内皮細胞は被曝線量依存性に細胞接着因子の一つであるICAM-1が発現することを明らかにした。ICAM-1の発現増加は血栓の形成を促進し、心筋梗塞や脳梗塞の原因となりえる。さらに一部の解熱鎮痛剤が放射線によるICAM-1の発現を亢進させることを明らかにした。今年度は、さらに多くの解熱鎮痛剤について、放射線被曝によるICAM-1の発現亢進に及ぼす影響を検討する。福島や宮城県の一部など、低線量・低線量率放射線に被曝する地域の住民はこれらの解熱鎮痛座の服用を避けることにより放射線により誘発される心筋梗塞や脳梗塞のリスクの上昇を抑制することが可能となる。

B-54血液中フリーラジカル定量による低線量被曝スクリーニング法の開発(継続)

研究代表者

稲葉 洋平(災害医学研究部門・災害放射線医学分野)

所内共同研究者

千田 浩一

所外共同研究者

盛武 敬(筑波大学)、平山 暁(筑波技術大学)

研究の概要

原子力事故など、放射線が関与する事故や大規模な放射線災害、テロの発生時には、多くの公衆の中から直ちに治療措置が必要となる被曝者を選別(トリアージ)することが極めて重要である。このような有事に際しては、古典的なバイオドシメトリー法である染色体異常分析検査や小核アッセイなどは、解析に多大な労力と時間を要するため、大量の被曝スクリーニング法には適していない。また、低線量被曝による生物学的影響を直接的に観察すること自体容易なことではない。これらの問題点を克服するには、生体の防御機構の個体差を考慮しつつ、低線量の被曝でも影響を拾い出すことができる感度の高いアッセイ法が必要になる。そこで本研究では、電子スピン共鳴(ESR: Electron Spin Resonance)を利用し、血液サンプル中のラジカルを定量することで、簡便に被曝をスクリーニングする今までにない新手法の開発を試みる。前年度本研究は、人体で行う前にマウスで初期検討を行い、スクリーニングの可能性を見出した。今年度は、動物実験を継続するとともに人体での影響について検討していき、スクリーニング法の確立を目指す。

B-55免疫機能の活性化による災害ストレス関連精神疾患発症機構の研究(継続)

研究代表者

兪 志前(災害医学研究部門・災害精神医学分野)

所内共同研究者

富田 博秋、浩 日勒

所外共同研究者

喜田 聡、福島 穂高(東京農業大学)

研究の概要

心的外傷後ストレス障害(PTSD)は瀕死の出来事(地震や津波など)を体験することに伴っておこる精神疾患である。恐怖記憶の消去不全がPTSDの病態モデルと考えられる。また、中枢神経系における免疫担当細胞であるミクログリアは、急性ストレスに対する応答に重要な役割を果たすことが示唆されている。活性化したミクログリアは炎症誘導性M1フェノタイプと抗炎症性M2フェノタイプが存在し、M1は神経細胞に侵害作用があり、M2は神経組織の修復などを促す作用を持っている。昨年度までに、申請者はマウスPTSDモデルを用い、恐怖記憶消去に伴うM1ミクログリア活性化の抑制およびM2ミクログリアの活性化の誘導を確認している。また、M1ミクログリアの抑制剤であるミノサイクリンをマウスに投与することによって、恐怖記憶の消去を有意に誘導したことを見出し、ミクログリア分化の恐怖記憶の消去に及ぼす影響を明らかにした。 本申請研究はミクログリアによるPTSD の病態形成機序への関与に着目して、ミクログリアの活性化がPTSDの病態形成に及ぼす影響の分子遺伝学的なメカニズムを解明することを目的とする。

B-56災害ストレスによる精神神経疾患発症機序における内分泌機能解析(継続)

研究代表者

笠原 好之(災害医学研究部門・災害精神医学分野)

所内共同研究者

富田 博秋

所外共同研究者

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研究の概要

大規模災害によるストレスはうつ病や不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神神経疾患発症の引き金となり得る。ストレスは内分泌応答を惹起することから、この応答が精神神経疾患発症について大きな役割を果たすことが考えられる。申請者らはストレス時に下垂体後葉ホルモンの一つであるオキシトシン(OXT)が重要な役割を果たすことを明らかにしたが、このとき精神神経疾患発症に寄与する機序は不明であった。本研究ではマウスモデルを使用して、うつ病や不安障害、PTSD発症に関わるOXT機能を、成体期と胎児期のそれぞれの時期に着目して解明を進める。成体期においてはOXTが恐怖記憶の形成に関与することが示唆されているためPTSD発症におけるOXTの役割を評価する。一方で胎児期の強いストレスは胎児の将来の精神神経疾患の発症リスクを上昇させることが知られる。従って母体に対するストレスが引き起こす内分泌応答が胎児の将来の精神神経疾患の発症脆弱性に対して重要な役割を有すると考えられるが、詳細な機序は全く不明である。OXTは母子の関係に強く影響することが知られることから、胎児期におけるOXT機能が将来の精神神経疾患発症脆弱性に与える影響を検証する。

B-57災害ストレスによる婦人科疾患発症予測マーカーの確立(継続)

研究代表者

三木 康宏(災害医学研究部門・災害産婦人科学分野)

所内共同研究者

伊藤 潔

所外共同研究者

五十嵐 勝秀(国立医薬品食品衛生研究所)、種村 健太郎、鈴木 貴、高木 清司(東北大学大学院医学系研究科)

研究の概要

大災害後の様々なストレスは内分泌機能の障害を引き起こし、特に女性生殖機能に対する影響は必至かつ深刻である。しかし、災害によるストレスと婦人科疾患との関連を科学的に検証した報告はない。本研究では災害ストレス動物実験系を構築し、子宮におよぼす影響を検討する。動物実験で得られた結果に対し、実際のヒト子宮組織や血液を用いた検証を行い、災害ストレスによる婦人科疾患発症予測マーカーを確立する。以上の結果から、震災ストレスによる婦人科疾患発症予防に関する情報を、ここ被災地から国内外に発信することができる。

B-58被災地における国際標準化された災害時分娩取扱い教育プログラムの展開(新規)

研究代表者

斎藤 昌利(災害医学研究部門・災害産婦人科学分野)

所内共同研究者

伊藤 潔

所外共同研究者

菅原 準一(東北メディカル・メガバンク機構)

研究の概要

東日本大震災においては医療アクセスが途絶した結果、避難所や自宅といった病院外での分娩が平時の約3倍に増加し、妊産婦は極めて危険な状況下に置かれた。WHOを中心とした国際基準では、激甚災害時には、妊産婦をハイリスク災害弱者として特に支援すべきとしている。一方我が国においては、災害時に妊産婦をフォーカスした支援体制が確立されていない。明日への希望をもって、安心して分娩し子を育む安定したシステムを開発することは、従来より医療過疎が問題となっていた被災地域の復興・再生においても欠かせない視点である。そこで本研究では、世代を紡ぐ妊娠分娩を守るために、分娩に携わる可能性のある幅広い職種に対し、国際標準化された分娩取扱い教育プログラムを展開し、その教育効果を検証する。これらによって、被災地再生の礎となる妊娠分娩を庇護し、明るく希望に満ちた地域社会の復興を具現化する。

B-59仮設住宅に住む小児アトピー性皮膚炎増加の原因解明(新規)

研究代表者

栗山 進一(災害医学研究部門・災害公衆衛生学分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

菊谷 昌浩、石黒 真美(東北メディカル・メガバンク機構)

研究の概要

平成25年6月に被災地の子どもの健康に関するアンケート調査を行った(別予算)。その結果仮説住宅に居住する子どもでは、アトピー性皮膚炎である割合が32。3%と仮設住宅以外に居住する場合の21。3%と比較して有意に高く、そのオッズ比は、1。74 [1。02-2。97]であることが明らかとなった。本研究では仮設住宅でアトピー性皮膚炎が増加している原因を検討することを目的とする。その候補としては先行研究等から、①ダニの増加、②仮設住宅の窓の特性からくる結露によるカビ類の増加、③仮設住宅建設による有害化学物質、の3つを想定している。東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野の協力のもと、調査や結果の啓発活動を行い、被災地の子どもの健康QOLを向上させるものである。

B-60モバイル端末からの患者画像情報転送システムの開発(継続)

研究代表者

中山 雅晴(災害医学研究部門・災害医療情報学分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

井上 隆輔(東北大学病院)

研究の概要

災害時の医療情報として、創部の写真など患者さんの画像をモバイル端末から撮影し、医療従事者間で共有したいというニーズは高い。本研究では、必要な患者情報と画像の紐付けをセキュリティに配慮した上で行い、データ転送するアプリケーションを開発することを目的とする。医療従事者が簡便に操作できるように工夫し、トリアージ情報や基本的なプロファイル、検査所見なども共有できるように機能を拡張する。今年度は、評価として東北大学病院において実証実験を行う。さらに野外等通信網が確保されていないところにおいても本システムが有効に活用できるか検討を行う。機動力を発揮して、最低限必要な医療サポートを構成できるかが本研究の骨子である。

B-61「地域包括ケアシステム」による災害対応地域コミュニティの構築(新規)

研究代表者

小坂 健(災害医学研究部門・災害口腔科学分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

長 純一(石巻市包括ケアセンター)、植田 信策(石巻日赤病院)

研究の概要

これからの大規模自然災害や、核、生物、化学のいわゆるNBC災害においては、外部からの支援を待つのではなく、地域の資源を生かした自助、互助、共助を可能とする体制の構築が必要である。、厚労省は「地域包括ケアシステム」という新しい医療介護の姿を示しており、自分で歩いて行ける範囲で、住まい、病気の通院、介護、看取りにいたるまで、地域内で完結するシステムを目指している。今後の災害対応を考えた時、この地域包括ケアシステムを単位として、訪問診療や介護サービス提供者のハードやソフトを活用して、災害時に地域で必要な事、出来ることを実践して行くことの課題と対応策を検討するものである。DMATの組織化や大規模拠点施設等が検討されているが、それはあくまで後方支援であり、自分のコミュニティで可能な限り、災害対応をしていこうとするパラダイム変換を目指すものである。これにより地域ごとに要援護者をどこに避難させ、どの程度の医療や介護が行うのかといったことを明らかにできる。これまでの行政単位の防災対策に大きく影響を与えると共に、今後、全国の市町村で導入が進められるこのシステムに災害対応の要素が加えることができれば、我が国の災害対応に大きな良い影響を及ぼすことができる。

B-62災害の記憶・記録に関する拠点間の連携を通した災害アーカイブ学の探求(継続)

研究代表者

佐藤 翔輔(情報管理・社会連携部門・災害アーカイブ研究分野)

所内共同研究者

今村 文彦、柴山 明寛、マリ・エリザベス

所外共同研究者

平川 新(宮城学院女子大学)、阿部 恒之(東北大学大学院文学研究科)、林 勲男(国立民族学博物館)、阪本 真由美(名古屋大学)、宇田川 真之(人と防災未来センター)、渡邉 敬逸(人と防災未来センター)、山崎 麻里子(長岡震災アーカイブセンター)

研究の概要

東北大学災害科学国際研究所では、東日本大震災アーカイブの構築を精力的に行なっている。震災発生から現在までは、データや情報を収集し、保存・検索システムの構築や利活用を行なっているが、災害の記録・記憶やアーカイブを取り巻く「学問化」に関する検討には至っていない。本研究は、東日本大震災に限らず、これまで設立されてきた様々な災害に関する記憶・記録に関する拠点間(ミュージアム、資料館、アーカイブ等)における交流と連携によって、以上を取り巻く収集・保管・活用に関する調査および整理を行い、災害アーカイブ学の構築について探索することを目的とする。

B-63復興教育モデルの高度化と地域版復興情報共有プラットフォームの構築(新規)

研究代表者

佐藤 健(情報管理・社会連携部門・災害復興実践学分野)

所内共同研究者

藤岡 達也、柴山 明寛、桜井 愛子

所外共同研究者

村山 良之(山形大学)、小川 和久(東北工業大学)、長 幾朗(早稲田大学)

研究の概要

平成24年度~25年度にかけて実施された先行研究「学校の災害危機管理の高度化に関する総合的な調査研究(拠点研究)」では、津波被災を受けた石巻市立鹿妻小学校を中心とした災害復興教育モデルの開発と実践、教育効果の検証などに取り組み、研究成果を国内外に発信した。また、開発した教育モデルの普及や展開のために学習指導案や復興マップ作品集、活動DVDなども製作した。 本研究は、先行研究によって蓄積された地域に根差した復興情報を「地域版復興情報共有プラットフォーム」に実装し、復興教育支援システムを構築することを主目的とする。また、平成25年度までに開発された教育モデルの高度化を目指す。さらに、学校教育現場の防災主任等との連携に基づいた防災教育フォーラムの開催などを通して、研究者や実践者、協力者間での議論を深める。

B-64L1津波防御とまちづくりの調整に関する実践的調査(継続)

研究代表者

平野 勝也(情報管理・社会連携部門・災害復興実践学分野)

所内共同研究者

小林 徹平

所外共同研究者

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研究の概要

被災地の復興まちづくりにおいては、今回整備されるL1防潮堤が大きな問題の一つとなっている。防災面から必要なものが、まちづくり面では不要どころか阻害物になりかねない。こうした防潮堤整備に関し、岩手、宮城の各地では、実践的にどのような調整が行われたのか、調査・整理することを通じて、今後の津波に対する防災まちづくりに資する知見を得るものである。

B-65災害関連情報の視覚化表現によるコミュニケーションデザインの研究(新規)

研究代表者

本江 正茂(情報管理・社会連携部門・災害復興実践学分野)

所内共同研究者

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所外共同研究者

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研究の概要

本研究は、災害研究データの視覚化手法開発研究として実施してきた「災害のデータスケープ」プロジェクトを発展・継続し、災害教訓の継承および研究成果のアウトリーチに寄与する目的で、災害関連情報の視覚化手法の調査開発の研究活動を行うとともに、それを活用した実践的な表現形式による発信活動を、所内外の研究者・専門家等と連携しつつ行う。

B-66地域の記録・継承の研究及び実践活動(新規)

研究代表者

小林 徹平(情報管理・社会連携部門・災害復興実践学分野)

所内共同研究者

平野 勝也

所外共同研究者

土岐 文乃(東北大学大学院工学研究科)

研究の概要

東日本大震災で壊滅的な被害を受けた被災地では、住宅地の移転にともない、いかにして地域の記憶を継承するかが大きな課題となっている。本研究では、そうした地域において、「まちの記憶の継承」ー街区構成や街並要素を新たな住宅団地へ導入する方法ーと、「くらしの記憶の継承」ー地域独自の暮らし方や地域資源を新たな住宅団地に活かす方法ーの2つの側面から研究を行う。いくつかの被災地の比較研究から得られる知見と実践活動から得られる知見をまとめ、今後起こりうる災害の復興において、地域の記憶を継承する方法の一端を示すことを目的とする。

B-67地域社会における生業活動の変遷と災害からの復興(新規)

研究代表者

池田 菜穂(情報管理・社会連携部門・社会連携オフィス)

所内共同研究者

川島 秀一、小野 裕一

所外共同研究者

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研究の概要

東日本大震災により被災した東北地方の太平洋側沿岸部では、水産業の被害が大きく、震災前後で漁業者の生活が大きく変わったことが指摘されている。震災後に漁業の継続が著しく困難になった事例も多く報告されており、そのために漁業共同組合や漁業者のグループが、協業化による漁業の継続を、自己資金を用いたり、支援を受けておこなったりする事例も見られる。本研究では、被災地の漁業者の生業活動について、過去の歴史的変遷(震災前までの状況)と震災後の変化を調査し、その変遷・変化の過程においてターニングポイントとなった漁業者らの意思決定をもたらした社会的背景や自然資源の条件等の諸要因を分析する。その結果をもとに、漁業を中心とした地域社会の生業戦略に関する理解を深め、今後の復興支援のあり方を検討する際に有効な資料を提示することを目的とする。また、漁業や農牧林業など第一次産業を中心とした地域社会における生業活動の変遷と災害対策・復興過程について、国際的な事例の情報収集も行い、東北地方の事例との比較検討をおこなう。

B-68Fragility functions of the 2011 tsunami damage data using advanced statistical methods and their practical application(先進的な統計手法を用いた2011年東北津波の被害関数構築とその応用アプリケ―ションの作成)(新規)

研究代表者

サッパシー・アナワット(地震津波リスク評価(東京海上日動)寄附研究部門)

所内共同研究者

今村 文彦、福谷 陽、安倍 祥、保田 真理

所外共同研究者

Tiziana Rossetto、Ingrid Charvet(ロンドン大学)

研究の概要

本研究は東北地方太平洋沖地震津波における石巻市や気仙沼市等を始めとする各自治体の被災データに基づいて、最先端の統計学技術を利用する事によって、より高い精度の津波被害関数を構築する。被災データは建物毎にある津波浸水深、建物の構造、階数など又は漁船の構造、トン数等を使用する。更には、津波数値解析による津波流速、漂流物の影響、被災メカニズム等を考察する。被害関数を解析するには、今までの統計方法「Linear regression」より高い精度の統計方法「Ordinal regression」を適用する。得られた結果は一般の方が使いやすくする為にスマートフォンやタブレットのアプリケ―ションを作成する。

B-69地域特性と避難課題に対応した津波避難プログラムの構築と実践(新規)

研究代表者

安倍 祥(地震津波リスク評価(東京海上日動)寄附研究部門)

所内共同研究者

今村 文彦、サッパシー・アナワット、保田 真理、福谷 陽

所外共同研究者

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研究の概要

東日本大震災以降、全国各地で津波避難訓練や避難計画の検討など社会全体で津波からの避難に取り組み、各地域で避難できるための準備や仕組みづくりも進められている。しかし、ごく限られた時間における緊急的な避難行動に支援を必要とする災害時避難行動要支援者への対策や、地域の実情に応じた津波避難における自動車の利活用のあり方、多世代にわたる避難訓練等の防災活動への参加など、多くの個別課題も残されている。本研究プロジェクトでは、沿岸地域の地域特性や、多様な避難課題も踏まえながら、地域が目標を持って取り組める避難訓練や津波避難方法検討のプログラムを構築・提案しながら、各地でその実践と検証に取り組む。

B-70不確実性を考慮した確率論的津波リスク評価に関する研究(新規)

研究代表者

福谷 陽(地震津波リスク評価(東京海上日動)寄附研究部門)

所内共同研究者

今村 文彦、サッパシー・アナワット、安倍 祥

所外共同研究者

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研究の概要

本研究では、24年度、25年度で実施した、東北地方太平洋沖地震の知見を反映させた確率論的津波ハザードに関する研究成果を基礎に、東北地方太平洋沖地震の被害データを用いて評価された津波のフラジリティに関する研究成果を融合させることで、特定の地域を対象として、確率論的に津波リスクを評価することを目的とする。このような手法を用いることで、東北地方太平洋沖地震の知見を最大限に生かした確率論的な津波リスク評価が可能となる。また、津波ハザード評価および津波フラジリティ評価に包含される不確実性が、最終的な津波リスク評価に与える影響について定量的に評価する。さらに、抽出・定量化された津波リスク評価に含まれる不確実性を可視化することで、津波リスク評価の不確実性を視覚的に伝達する手段を提案する。

研究・実践