研究・実践

平成28年熊本地震(M6.5, M7.3)による推定応力変化と広域余震活動について

最終更新日時:2016/4/21 14:30 (公開開始:2016/4/21 10:30)

東北大学災害科学国際研究所 災害理学研究部門 遠田晋次

4月16日以降に余震が広範囲で発生しているメカニズムを探る目的で,M6.5, M7.3地震による周辺地域・周辺断層への応力変化(地震前と後での歪の変化)を計算しました. その結果,M7.3地震以降に別府ー由布,阿蘇山北東部で活発化した地震活動は,震源となった布田川断層の運動による急激な応力変化(周辺地域の力のバランスが崩れたこと)で説明できることがわかりました. 「阿蘇でも大分でも起こっていて,次々に震源が北東へ移動しているのではないか,今度は四国の中央構造線か」とか,「気象庁もお手上げの前代未聞の異常なことが起こっているのではないか」と不安になるところですが, 科学的には,今の所それほど特別なことが発生しているようには見えません.ただし,M6.5, M7.3震源域から断層が連続する日奈久断層は今後も要警戒で, 強い揺れに備えることが必要です.日奈久断層が動いた場合の震度予測図や, 防災科学技術研究所のJ-SHIS地震ハザードステーションで地盤の揺れやすさ等を把握しておくことも重要です.
以下は具体的な図の説明です.

地震規模,震央周辺の余震分布,地表地震断層などをもとに,3つの震源断層(表1)を設定し,周辺に分布する代表的な正断層 (図1)と右横ずれ断層(図2)への応力変化を計算しました.暖色系が断層活動を促進,寒色系が断層活動を抑制です.カラーパターンは影響を受ける断層に よって変わります.また,分かり易さを優先して応力値を±0.5bar (0.05MPa)で飽和させていますので,赤・青の内部は実際は数bar以上となる地域もあります.ご注意ください.活断層は「新編日本の活断層」に地 震調査研究推進本部の情報を一部加えたものです.

図1:別府ー万年山断層群の東部へは応力増加,西 部へは応力減少です.水縄断層帯へも応力減少,佐賀平野北縁断層帯,雲仙断層帯はわずかに増加です.これまでの研究から,クーロン応力(CFF)が 0.1bar以上増減すると地震活動に何らかの影響が生じる例が多数報告されています.したがって,別府・大分で発生している地震活動(緑楕円の地域) は,M7.3本震の応力伝播で説明可能です.別府ー万年山断層群は多数の断層から構成されており,通常から地震が起こりやすい地域です.ここに新たに応力 が加わり,地震活動が促進されたことになります.科学的には特に異常なことではありません.ただし,その他の要因(地下流体への影響,地震波による励起な ど)も考えられ,今後慎重に検討しなければなりません.また,小・中規模の地震が増えると,大地震も発生しやすくなります.今後,別府ー万年山断層群にお ける大きめの地震も心配されます.


図2:阿蘇北東部では,M7.3本震と同じ横ずれ 断層解の地震が発生しています(緑楕円).ΔCFFも正となり活発化と整合的です.緑川断層では応力減少です.最も危惧されるのは,日奈久断層の未だ活動 していない区間(日奈久区間)です.M6.5, M7.3の二段階で著しく高い応力が加わったと考えられます.M7.3以降に地震活動が活発化しており,19日には八代市で震度5強を観測するM5.5の 地震が発生しました.

これらは,あくまでも単純な震源断層モデルを用いた応力変化の推定値です.暫定的な結果と考察であることにご注意ください.今後随時アップデートする予定です.

表1 震源断層パラメータ

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