研究・実践

布田川断層帯に正断層も確認:地下深部では斜めずれ,地表では横ずれ断層と正断層が並走

公開開始:2016/4/25 13:00

遠田晋次・岡田真介(災害科学国際研究所 災害理学研究部門) ・ 石村大輔(首都大学東京) ・ 吉田春香(福岡県立八女高校)

4月24日に実施した現地調査で,西原村の俵山の西麓に約2km以上にわたって連続する正断層*を確認しました(図1,写真1〜3).

正断層による縦ずれは最大約1.5mで,北西側が落ちる動きを示します.この正断層は,国土地理院によって空中写真から判読されていたクラック群の1つです.これらは地すべりの滑落崖ではなく**,地震を起こした震源断層から連続する正断層と推定されます.

一方で,西原村では右横ずれ断層が大切畑ダム堤体を横切っており,約1.5mの右横ずれを起こしています(写真4・5).したがって,ともに東北東ー西南西方向に延びる右横ずれ断層と正断層が約2km離れて並走していることになります(図2).

熊本地震(M7.3)では,震源断層面が北に60°前後で傾斜するとともに,顕著な正断層成分を伴って斜めずれしていることが地震・測地解析から指摘されています.このことから,地下から地表に向かって断層が分岐し,地下での斜めすべりを地表では横ずれと縦ずれに分担して解消していることが推定されます.これを専門用語でスリップパーティショニング(slip partitioning)といいます(図2).海外の地震では報告例が複数ありましたが,国内ではおそらく初めてです.布田川断層が正断層成分を持つことは,同断層が別府-島原地溝帯の南縁付近に位置することと整合的です.

(注)
* 正断層とは地盤が引っ張られたときに縦にずれ動く断層.
** 地すべりの滑落崖ではない理由
・都市圏活断層図の活断層線のトレンドにほぼ一致
・滑落崖にしては直線的できわめて長い.これが地すべりならば超巨大
・地すべりブロックだとすると地すべりブロック先端部が見つからない
・共役の南東落ちの副次的な正断層(antithetic fault, 図2)が逆向き崖沿いに確認された *** 調査地点は小森牧場内です.調査での立ち入りには予め許可をお取りください.

  • 図1

  • 写真1

  • 写真2

  • 写真3

  • 写真4

  • 写真5

  • 図2

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