研究・実践

2022年3月16日の福島県沖の地震について

陸域地震学・火山学研究分野 遠田 晋次 教授
2022年3月17日  17:30
 
2022年3月16日の福島県沖の地震(マグニチュードM7.4)は,2021年2月13日の福島県沖の地震(M7.3)の余震の1つと考えています.
2022年の地震は,震源の位置と深さ(57km)から,沈み込んだ太平洋プレート上部で発生した,いわゆる「スラブ内地震」です.約1年前の2021年地震と同じタイプというだけではなく,震源位置もほぼ重なります.つまり,2022年の震源は2021年の余震活動域内にあり,2分前に発生したM6.1の地震も近傍にあります.
平成28年熊本地震でわかったように,前震,本震,余震はあくまでも結果的なものです.基本的に近傍で発生する地震には関係性があります.今回も結果的に2022年地震のマグニチュードが大きくなっただけで,基本的には2021年の余震(影響を受けた地震)の1つだと解釈しています.さらに2分前のM6.1がその後のM7.4を誘発したのではないかとも考えます(証明はきわめて難しいですが).
ただし,2021年地震の震源断層と2022年地震の震源断層は別のものです.震源とはあくまで断層のズレはじめの位置で,M7.3〜7.4だと断層自体は数10kmにわたって広がります.一般に本震後1日の余震分布域が震源断層の大きさにおおよそ相当するといわれます.昨夜の地震からまだ1日経過していませんが,2021年震源断層の北延長部が動いたとみて良いと思います(図1のピンクで囲んだ部分).
 
図1:2021年福島県沖の地震と2022年福島県沖の地震の本震後1日の余震と推定断層位置
 
 
この震源断層の位置の違いと規模の違い(2022年がモメントマグニチュードMw 7.3,2021年がMw7.1.約2倍の大きさ)で震度6弱以上の地域が広がるとともに,宮城県北部で2021年よりも顕著にゆれが大きくなったと考えます(図2).
 
図2:2021年福島県沖の地震と2022年福島県沖の地震の震度分布の比較(気象庁資料を使用)
 
 
なお,2022年福島県沖の地震は,2021年地震の直接の影響により発生したという解釈ですが,2011年東北地方太平洋沖地震の広義の余震活動は,このようなスラブ内地震と日本海溝外寄りのアウターライズの地震活動を活発化させています(図3).前者は陸に近く震源がやや深く津波を発生させないが強いゆれをもたらす.後者はゆれはそれほど大きくないが大津波を発生させます(例えば,1933年昭和三陸地震).今後この2つのタイプの地震に特に注意が必要と考えます(図3).
 
図3:東北沖地震の前5年と最近5年を比較した地震活動度の変化.
 

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