- メンバー
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- 概要
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「誰一人取り残さない」あるいは「誰一人取り残されない」(Leave no one behind)は、SDGsの根幹をなす理念の一つです。仙台防災枠組においても、災害リスクに対して、より広範で、より人間を中心にした予防的アプローチがなければならない、とされています。
インクルーシブ防災とは、障がい者や高齢者、医療的ケア児・者、妊婦、子ども、外国人等を含む、あらゆる人を取り残さない防災という考え方です。こうした考え方を実践に落とし込んでいくことの必要性は、東日本大震災などの教訓から示されています。残念ながら、東日本大震災における障がい者の死亡率は一般的な死亡率の約2~4倍との報告があり、避難生活等の身体的・精神的負担による疾病等、災害に関連した原因で亡くなる災害関連死をみても、東日本大震災の災害関連死における障がい者の割合は約25%との報告があります。このように配慮が必要であった方々に被害が多くみられるのはなぜなのか、これを防ぐ手立てはないのかを検討し課題解決していくことが本分野の使命です。
この使命達成のため、当事者の方々から直接お話を伺うことや、保健と医療を融合させ、医療的な側面も十分に考慮したインクルーシブ防災を実現すること、あるいは個別避難計画立案のためのアプリケーション開発など、多方面からのアプローチが必要です。2015年仙台市で開催された国連防災世界会議で「障害と防災」が取り上げられるまでは、障害者が実際に意見を述べる機会が限られていました。Nothing about us without us(私たち抜きに私たちのことを決めないで)との認識が広がり、実際に支援を必要とする方々の声を十分に聴き、個別避難計画を立案していくことの重要性が叫ばれています。また、支援を必要とする方は、医学的な課題のある方が多く、インクルーシブ防災には保健・医療関係者の関与を欠かすことはできません。さらに、個別避難計画を立案し、これを身体や環境の変化に応じて速やかに更新していくため、アプリケーション化は必須事項のひとつとなっています。
本分野では、上記のような背景を踏まえ、誰一人取り残さない防災の実現に向け、この難題解決に立ち向かっていこうとしています。
令和5年6月19日「医療的ケア児・者と災害」セミナーの様子
(写真提供の承諾済)