概要

【研究成果】東日本大震災後に宮城県で認定された災害関連死において 死亡診断書での災害関連性の記載は10パーセント

2025.03.06 00:00
【研究者情報】
東北大学災害科学国際研究所 災害医療国際協力学分野
教授 江川新一
 
【詳細】
 

【発表のポイント】

  1. 東北大学災害科学国際研究所と国内の災害医学研究者、弁護士が連携し、東日本大震災後に宮城県で災害関連死と認定された方々の申請書類を調査したところ、認定された755名中、死亡診断書に災害との関連を示す文言が記載されていたのはわずか10%であったことが判明しました。
  2. 死亡診断書以外では、医師の記載する生命保険用書類などに関連性が記載されていたケースが20%、残りの70%は亡くなるまでの経過を遺族が記載した申請書類に基づいて認定されていました。
  3. 今後は、死亡診断書に災害との関連性を記載するための制度変更や、災害との関連性を判断する基準、災害関連死申請方法の平易化・標準化について社会にコンセンサスを形成していくことで、災害による間接的な死亡の実態を明らかにしていく必要があります。

【概要】

 災害による死亡は、直接的な死亡(溺死・圧死・焼死など)のほかに、間接的な死亡(災害後に自宅や避難先で具合が悪くなり病院などで死亡したもの)があります。間接的な理由で亡くなる方を減らすには、医療的な文書に基づく正確な統計が不可欠です。しかし、日本では、災害による間接的な死亡の定義や報告のされ方の基準が整っていないため、正確な統計がありません。
 東北大学災害科学国際研究所の坪井基浩大学院生(さいたま赤十字病院医師)と江川新一教授のグループは、宮城県内で認定された災害関連死に関する匿名化資料を行政開示請求により入手し、解析可能であった755人について、発災後の死亡時期、死因、年齢、性別、死亡診断書などへの災害関連性の記載について解析しました。死亡診断書に災害との関連を示す文言が記載されていたのはわずか10%であったことがわかりました。
 本研究成果は2025年2月12日、学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。
 
 
図1.発災からの経過期間と死亡診断書への災害関連性の記載
  Group A:死亡診断書に記載があるもの
  Group B:生命保険診断書などに記載があるもの
  Group C:遺族による経過記載のみのもの

【論文情報】
タイトル:Medical perspective on the systemic challenges involving indirect disaster-related deaths in Japan
著者: Motohiro Tsuboi, Hiroyuki Sasaki, Hyejeong Park, Masaharu Tsubokura,
Toyoaki Sawano, Nahoko Harada, Fumiyasu Zaima, Akihiro Uto, Tadashi Okamoto, Toshihiko Watanabe, Manabu Hibiya, Shinsaku Ueda, Noboru Sakamoto, Koichi Yasaka, Shigemasa Taguchi, Kazuya Kiyota & Shinichi Egawa
*責任著者:東北大学災害科学国際研究所 坪井基浩(大学院生、さいたま赤十字病院医師)
      東北大学災害科学国際研究所 教授 江川新一
掲載誌:Scientific Reports
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-025-89349-7