【研究者情報】
東北大学災害科学国際研究所 災害文化アーカイブ研究分野
准教授 蝦名裕一
【詳細】
【発表のポイント】
- 慶長十六年十月二十八日(西暦1611年12月2日)に発生した慶長奥州地震津波について、江戸でも震度4程度の揺れがあったと想定できることを示しました。
- 既往の研究では、慶長奥州地震の発生から津波が到達するまでの時間差を4時間とするものもありましたが、そのような時間差は史料上で認められないことを確認しました。
- 慶長奥州地震津波に関しては諸説が混在する状況が続いていますが、本研究により同地震津波の実相にまた一歩近づくことができました。
【概要】
これまで、慶長十六年十月二十八日(西暦1611年12月2日)に発生した慶長奥州地震津波に関しては、「昭和8(1933)年昭和三陸地震津波と同程度の被害」とみなす説、「地震動も大きくなかった」とする説がありました。本研究は、『言緒卿記』等の史料を精査し、江戸でも震度4程度の地震があったとするのが妥当であることを示しました。
また、従来、地震発生から津波到達まで4時間の時間差があるとする研究がありましたが、本研究は、この時間差は異なる史料の情報を十分な検討をしないまま混ぜたことからきており、同一史料内で地震発生から津波到達まで長時間あったことを示すものは見当たらないことを示しました。本研究は、地震から津波まで時間差がないことを示す史料の記述も確認しました。
本研究の結果、慶長奥州地震については、①東北地方から江戸までの広範囲で震度4以上の強い揺れがあった、②地震発生は「巳刻」(午前10時前後)であり、大きな時間差なく北海道から東北地方太平洋岸に至る広い地域に津波が襲来した、と考えることができます。
本論文は2025年7月25日、『歴史地震』に掲載されました。
図. 各史料における慶長奥州地震津波の地震発生と津波到達時刻の記述